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塔の魔導師 free

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「君には魔導師の才能がある。」 奴隷階級の少年リンは、旅の魔導師ユインからそう告げられる。 その日からリンの魔導師を目指す旅が始まった。リンはユインに連れられて魔導師の街グィンガ…
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第12話「入学式」

第12話「入学式」

前回、第11話「薄笑いの少女」

各話リスト

「君は…ユヴェン」

「久しぶりねテオ」

 テオと階段の上にいる少女、ユヴェンがやりとりする。

 リンは二人のやり取りを聞いてようやく彼女が自分ではなくテオに対して話しかけていることに気づいた。

(テオの知り合いなのか)

「ユヴェン、まさか僕を待ち伏せしていたのか」

 テオは警戒するように少女を、ユヴェンをにらみつける。

「待ち伏せ?アッ

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第11話「薄笑いの少女」

第11話「薄笑いの少女」

前回、第10話「正しいお金の使い方」

各話リスト

 リンとテオはいつも通り仕事の休憩時間に安食堂に来ていた。レンリル最安値の食堂”キッチン・グモリエ”は今日も混んでいる。リンとテオは空いている席を探してみるがなかなか見つからない。完全にお昼の席取り競争に出遅れてしまったようだ。

「リン!テオ!こっちだ」

 リンとテオを呼ぶ声が食堂の片隅から聞こえる。そこには真紅のローブを着た3人組がいた。

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第10話「正しいお金の使い方」

第10話「正しいお金の使い方」

前回、第9話「賢い杖の選び方」

各話リスト

 レンリルの街には木枯らしが吹きすさび、道行く人々はコートを着て身を縮こまらせながら歩いている。太陽石には季節に合わせて気温を調節する効果もあるようだ。

 試験が近づくとレンリルの人々はみんな急にソワソワし始める。大丈夫、試験までまだ期間は十分にあるとタカを括っていた見習い魔導師たちも隙間時間に魔法語を暗記しようとポケットからメモを取り出し、ブツブ

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第9話「賢い杖の選び方」

第9話「賢い杖の選び方」

前回、第8話「魔法の工場」

各話リスト

 工場を後にしたリンとテオは商店街の中にある杖屋を目指した。平日の昼間だというのに商店街は大勢の人で賑わっている。リンとテオは商店街の奥にある杖やにたどり着くまで人ごみをかき分けるようにして進まなければならなかった。

 商店街は様々な種類の看板に彩られている。食料品店の看板、雑貨屋の看板、薬屋の看板、あるいは得体の知れない意味不明な看板もあった。

 

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第8話「魔法の工場」

第8話「魔法の工場」

前回、第7話「魔導師協会」

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 昼食の後、リンは再び協会の方に足を運んだ。

 師匠であるユインに挨拶に行くためだ。

 ユインの部屋は工場地区である10〜49階の上にある学院地区のそのまた上にあるエリアに位置しているそうだ。

 見習い魔導師である今のリンには立ち入ることが許されない場所だ。

 そのためリンがユインに会うためには、ユインの方からレインリルまで下りてきてもらう必要が

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第7話「魔導師協会」

第7話「魔導師協会」

前回、第6話「見習い魔導師の街」

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 リンとテオは魔導師協会の受付が開くまでの間、街の主要施設を見て回った。

 図書館、病院、銀行、鍛冶屋、雑貨屋、食料品店、各種商店、神殿、競技場などなど。

 いずれもリンからすれば立派な建物に見えた。特に広大な敷地を利用して建設された競技場は息をのむ壮麗さだった。ドーム状の観客席から魔導師達が技を競い合うのを観戦するのは想像しただけでもワクワク

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第1話「石像に祈る少女」

第1話「石像に祈る少女」

 魔導師の街、グィンガルドは今日も大勢の人で賑わっていた。

 港へと伸びる大通りには様々な職業や身分の人々が行き交い、その広い道路を溢れんばかりに埋め尽くしている。

 彼らは皆、魔導師達の作った珍しい品物を交易するために世界各国からグィンガルドに訪れているのだ。

 かくも賑やかなグィンガルドの大通りだが途中の脇道にぽっかりと人のいない一画があった。いたるところが渋滞にまみれている大通りとその

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