瀬戸 夏樹

小説家を目指しています。現在、『才能と財産』を主題にしたファンタジー小説『塔の魔導師』…

瀬戸 夏樹

小説家を目指しています。現在、『才能と財産』を主題にしたファンタジー小説『塔の魔導師』を連載中です。才能と財産の関係について興味があれば読んでみてください。 『塔の魔導師』書籍化決定しました!

マガジン

  • 参考文献

  • 塔の魔導師 free

    「君には魔導師の才能がある。」 奴隷階級の少年リンは、旅の魔導師ユインからそう告げられる。 その日からリンの魔導師を目指す旅が始まった。リンはユインに連れられて魔導師の街グィンガルドを訪れ、塔の学院に入学する。 主題は才能と財産。 このマガジンでは『塔の魔導師』最新話以外の無料で閲覧できる分を掲載していきます。 最新話はマガジン『塔の魔導師』にて有料で読むことができます。 第1話→https://note.mu/chiakirei/n/n8b6fa763a643?magazine_key=mcb59dddcc50f 各話リスト→https://note.mu/chiakirei/n/n529b8256b933 この小説は「小説家になろう」、「カクヨム」にて重複投稿しております。 書籍化決定!

  • 一言の美しさを求めて

最近の記事

第151話「卒業」

前回、第150話「ヴァネッサの反攻」 各話リスト  太陽石の光が最も弱まり、木枯らし吹きすさぶ冬の季節も過ぎて、今年も学院都市には卒業シーズンが訪れた。  今、リン達学院卒業生の前には祝福ムードが広がっていた。  卒業生達は、学院卒業の証としてスイートピーの花を胸に差していた。  その花には、水を与えなくても枯れないように魔法が施されており、魔導師個人を識別する手の甲の焼印が押されている。  この花を魔導師協会に持っていけば、学院魔導師の証である真紅のローブとメイ

    • 150話「ヴァネッサの反攻」

      前回、第149話「スウィンリルの深層」 各話リスト 「そろそろ頃合いだな」  ドリアスはエルフの娘、フレジアを使ってリヴァイアサン(海神)の暴走を止めた。  下階層に降りる準備をする。 「大丈夫ですかね。今降りて。僕達袋叩きにされるんじゃ……」 「大丈夫さ。下の連中は災害でそれどころじゃないだろうし。それに……」 「?」 「おそらくヴァネッサが上手いことやってるだろ」  リンとドリアスはタイミングを見計らって、下階層に降りる。  下層に降りる時は上がる時と

      • 第149話「スウィンリルの深層」

        前回、第148話「星屑」 各話リスト 「うっ、ゴホッ」  ティドロは水を吐きながら守備隊の船の上で目を覚ました。 「目を覚ましたぞ」 「大丈夫か?」  守備隊の格好をした人々が、ティドロに声をかける。 「う、ここは……。僕はどうして……」  ティドロは周りを見回して、自分がなぜ守備隊の船の上で、気絶しているのか思い出そうとする。 (そうだ。僕はドリアスと戦って……)  ティドロは急いで起き上がろうとして、頭痛と目眩に襲われた。 「ぐっ」 「無理をするな

        • 第148話「星屑」

          前回、第147話「崩れゆく水の街」 各話リスト  ヴァネッサは自宅で庭に流れる水路の水位を測っていた。 (やはり、おかしい)  彼女は水位計の目盛りを不審げに見つめる。 (アルバネロ公のせいで、協会の管理が杜撰になっているとはいえ、この水位の変化は異常過ぎる) 「ヴァネッサ様」  彼女の腹心の部下が背後から話しかけてくる(彼はヴァネッサが長官職を辞した後も協会の内情について彼女に報告し続けていた)。 「どうした?」 「270階層、新港湾の付近でとてつもない嵐

        第151話「卒業」

        マガジン

        • 参考文献
          3本
        • 塔の魔導師 free
          154本
        • 一言の美しさを求めて
          8本

        記事

          第147話「崩れゆく水の街」

          前回、第146話「ヴァネッサの失脚」 各話リスト  スウィンリルは今日も活気に満ちていた。  運河には大小沢山の船が行き来して、人々は活発に商品を取引している。 「ん?」  舳先に立って船を操る魔導師が、運河の水面に目を落とす。 「どうした?」  看板に寝転んでいた魔導師が話しかけてくる。 「水位が上がっている」 「あれ? 本当だ」 「水の流れも上手く操れないな」 「見ろ! 海の方が荒れてる」  誰かが声を上げた。  舳先に立つ魔導師が、近海の方を見

          第147話「崩れゆく水の街」

          第146話「ヴァネッサの失脚」

          前回、第145話「ティドロの暗躍」 各話リスト  ドリアスを見かけたティドロは、一旦長官に報告することにした。  ティドロが長官の部屋から出て来ると、仲間達が駆け寄ってくる。 「どうだった?長官殿はなんて言っていた?」 「ダメだ。やはりドリアスがいる確かな証拠がなければ人は出せない、とのことだ」 「チッ。悠長なこと言いやがって」 「確かにこの目で見た。あいつはこの階層にいたんだ!」  仲間達が口々に不平を言い合うのをディドロは難しい顔で見ていた。 (協会の援

          第146話「ヴァネッサの失脚」

          第145話「ティドロの暗躍」

          前回、第144話「優雅な朝食」 各話リスト  ティドロは刑吏部の他の人間達に見えないようにルフの羽を懐にしまう。 「ったく、あのヤロウ。ようやく立ち上がりやがったか」  刑吏部の一人が文句を言うように言った。 「新人のくせに生意気な奴だな」 「まあまあ。そうイライラしなさんなって。相手は一応貴族の子弟だぜ」 「なおさらムカつくぜ」 「何を目的に刑吏部のインターンなんかに参加しているのか知らんが、触らぬ神に祟りなしだ」 「実際、優秀な奴だ。時々何を考えているの

          第145話「ティドロの暗躍」

          第144話「優雅な朝食」

          前回、第143話「支配者への道」 各話リスト  250階層の外装に位置する部屋。  そこは貴族が愛人を呼び寄せるためにこしらえた別荘だった。  そこには塔の外を眺めることができる窓がついていた。  窓から外を眺めることで、その高さを実感し、自分の身分を実感して、あるいは誇示するというわけだった。  その部屋のことを知っていたドリアスは、窓をぶち破って部屋に侵入した。  ドリアスと一緒に内部に侵入したリンは、そこがとても静かなことに気が付いた。 「静かですね」

          第144話「優雅な朝食」

          第143話「支配者への道」

          前回、第142話「王宮のルール」 各話リスト  一人の若者の悪巧みは、暮れ行く森の夜陰に乗じてひっそりと行われた。  ドリアスが鉄製の檻を怪鳥(ルフ)の足にくくりつける間、リンは聳え立つ塔の方に再度目を向けてみた。  怪鳥(ルフ)は確かに大きかった。  その嘴は像の子供を丸呑みしてしまうだろうし、その翼は広大な海に浮かぶ巨大な帆船を包み込んで、地平線から隠してしまうだろう。  しかし塔の大きさに比べれば、怪鳥(ルフ)も小人に過ぎなかった。  その翼で一体どれだけ

          第143話「支配者への道」

          第142話「王宮のルール」

          前回、第141話「悪の誘い」 各話リスト  フローラの処刑が終わって数日後、リンは逮捕された。  容疑は民衆扇動の罪だった。  件くだんのエディアネル公の屋敷襲撃事件において、捕まった多くの者が平民派の集会に所属する者達だったので、そのリーダーであるリンが首謀者と目されたのであった。  リンは大人しく訪れた警察の取り調べに応じ、連行され事情聴取を受けた後、拘禁された。  こうしてリンが当局に囚われている頃と時を同じくして、ヘルドはイリーウィアの私邸に呼ばれていた。

          第142話「王宮のルール」

          第141話「悪の誘い」

          前回、第140話「家族」 各話リスト  フローラの裁判が行われた。  彼女の裁判はアルフルド中で話題の的となり、貧民から富裕な者まで住民という住民が法廷に詰め掛けて彼女にどのような判決が下るのか確かめようとした。  アルフルドを恐怖のどん底に陥れたこの凶悪犯にどのような判決が下るのか。  あまりにも沢山の聴衆が訪れたため、裁判所の事務員は入場者を制限しなければならないほどであった。  入り切らなかった聴衆達は裁判所の周囲に陣取り、ある者は裁判所の周辺にある建物に陣

          第141話「悪の誘い」

          第140話「家族」

          前回、第139話「人形」 各話リスト  学院で爆破が起こった。  壁を構成するレンガは崩れ、建物の上部に取り付けられた時計はヒビ割れて、爆破付近はあちこち真っ黒になっている。  まさに学院に登校しようと、建物の前まで来ていたリンはその様を見て、呆然とした。  ずっと通っていた学院がこのように痛ましいことになるのは流石にショックだった。 (日常が……こんなに簡単に)  リンはフラリと後ろによろめく。 「何をしているんだ君。早く避難しなさい」  消防隊らしき人が

          第140話「家族」

          第139話「人形」

          前回、第138話「封鎖されるアルフルド」 各話リスト  ルシオラは部屋に入ってきた貴公子を見て喜色を浮かべる。  その物腰といい、立ち振る舞いといい、その辺りの貴族とは比べ物にならない。  それに顔立ちも彼女の好みだった。 「どうもお初お目にかかります。ウィンガルド上級貴族のヘルドと申します。以後お見知りおきを」  ヘルドは胸に手を当てて、恭しく挨拶した。 「あらあら。フォルタったら。こんなやんごとなき家柄のお坊ちゃんを捕まえてたなんて。どうしてもっと早く紹介し

          第139話「人形」

          第138話「封鎖されるアルフルド」

          前回、第137話「ファルサラスの派遣」 各話リスト 「スゲエ数のハーピー(鳥人間)だな」  アルマは学院の窓から外を見ながら言った。  おびただしい数のハーピー(鳥人間)は筆を持ってアルフルドの天井と壁に魔法陣を書き連ねていた。  いつもは青空と地平線がどこまでも続くように装飾されている天井と壁だが、今は黒々とした文字と記号に埋め尽くされていて、なんとも禍々しい風景になっていた。 「あれ全部ファルサラスっていうやつが操ってんの?」 「ああ、ファルサラスはアルフル

          第138話「封鎖されるアルフルド」

          『塔の魔導師』2巻について

          読者の皆様、いつもお世話になっております。 いよいよ『塔の魔導師』の2巻が発売されます。 遅くなってしまいましたが、詳細について報告させていただきます。 『塔の魔導師〜底辺魔導師から始める資本論〜』の2巻は明日6/9(土)発売です。 今回もTOブックスオンラインで購入していただいた方には特典としてSSが付いてきます。 2巻の表紙はイリーウィア様のピンです。 Garukuさんが素敵なイラストに仕上げて下さいました。 肌と衣装の質感が素晴らしいです。 書影をアップ

          『塔の魔導師』2巻について

          第137話「ファルサラスの派遣」

          前回、第136話「秘密の取引」 各話リスト  爆破事件によってアルフルドは騒然となった。  人々は突然起きたこの事件に様々な噂話をまくし立てる。  誰が犯人だとか、何が目的だとか。  誰もが自分に災いの種が降りかかるのではないかと恐れていた。  どうすれば爆破の犠牲から免れることができるのか知りたくて一杯一杯だった。  一方で魔導師協会には爆破犯からの声明が届いた。  声明には以下のような要求が書かれていた。  塔及び三大国によって行われている全ての戦争を直

          第137話「ファルサラスの派遣」