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2020.04.06 淡々東京ぐらし#7 日の光、人の名残り
朝、無音で黙々とラジオ体操第一をやっている。私は真剣である。
***
リモートワークの昼休み、郵便物をポストに投函しに行きがてら、少しだけ近所を散歩した。空はよく晴れて、日差しが歩道を惜しみなく温めていた。数は少ないけれど桜の木も植わっている。満開だ。眺めている人はいない。
通りに面した、間口の狭い寿司屋が、休業の貼り紙を出している。カラオケ喫茶も、「コロナの影響でカラオケお休みします」と、ホワイトボードに書いている。
──いやあ、そうなのよ、ついこないだ、世界が変わっちゃってさ、一人で散歩に出かけるでしょ、日なたがあったかくてさ、背中がやけにまんべんなく温まって、ああ、背中って自分じゃ温められないや、日光を浴びに出るか、人に抱きしめてもらうかしか、やりようがないやって……
***
郵便物ポストに投函した封筒が、宛先に必ず届くという確信はどこからきているんだろうと、ふと不安がよぎる。きょうも誰かがピリピリとした空気の中で出勤して、誰かの確信を裏切らないために働いている。
背中を温めた日の光が、人の体温の名残りのようで、やけに寂しい。
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