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駆け出しエンジニアを挫折させる方法 7(終)

前回のあらすじ。(1話目はこちら
駆け出しエンジニアは見事挫折しました。

挫折

メールを送った後、社長はすぐ電話をくれました。
細かいことは忘れましたが、Tさん達からチャットで言われたことのスクショを送り、とにかくもうあのオフィスに居ることが辛いということを言った記憶があります。
(前回のTさんらの発言は当時のスクショを見ながら書いてました)

その後、社長とTさん&Oさんで話し合った結果、一旦距離を置こうという話になりました。私は自社に戻り、できる範囲でTさんの業務を手伝うことになりました。内容はVBAでの簡単な業務用ツールの作成等でした。

自社オフィスで働くのはこの時が初めてで、
同様に自社の方々と一緒の空間で働くのも初めてでした。

その時気付いたのですが、私は同じ会社の人達に対しても恐怖心を持つようになっていたのです。
年齢もほぼ変わらず、皆気さくな方でした。それでも話すことが怖いと感じていたのです。それに気付いた時、「ああ…結構ヤバイ状態になってたんだな…」と実感しました。

仕事の方はさほど難しくなく、さくさく進んでたと思います。
ただ、確認や報告のメールを送っても、返ってくるのは3日後といったことが多く、Tさん&Oさんとの関係が段々と薄れていくのを感じていました。

それから2週間ほどしてからでしょうか。社長から
「Tさんの会社とは今月末で契約終了になります。」
と言われました。


なんとなくわかっていたので嬉しくも悲しくもありませんでした。

ああ、これで挑戦は終わりなんだなぁ。
挫折ってこういうことなんだなぁ。

ってただ他人事のように思っていました。


駆け出しエンジニアを挫折させる方法

私がされた育て方は、20年くらい前の日本では当たり前だったのかもしれないです。

人間性を否定して、「ダメだ」と言って、口では説明せずに「見て盗め、身体で覚えろ」という。この人達も、もしかしたらそうやってボコボコにされながら育てられてきたのかもしれないです。
自分達がそうやって育てられて、今うまくやれてるからその方法が正しいと信じ切ってるところがありました。

私がTさんの会社を去る直前、社長の思いつきで「Tさんと私の本音ぶちまけ会をやろう」と言われました。
私は渋ったのですが、社長に半ば強制的に参加させられました。一応Tさんに、これまでの対応・教え方について思うことをぶつけてはみたのですが

「お前もう28だろ? そのくらい必死にならなかったら追いつけねーよ。お前の年齢のエンジニア何やってると思ってるんだ? このくらいついてこれないんじゃダメ。」

の一点張りでした。
社長としては「俺も悪かった」的な言葉を引き出したかったようなのですが、Tさんからそういった反省の言葉は一言も出ませんでした。
(そして帰りがけに「なんかごめんね…」と社長に謝られる私)

正直な所、技術がわからないくらいじゃ挫折ってしないんです。
わからない時に、逃げ道や縋れるものを全て奪われた時に挫折するんだと思います。(エンジニアに限った話でもないのですが)

ただ、この人達は自分達がそういうことをしているということに気付いていないのでしょう。むしろ「そんな状態でも自分で道を作るくらいじゃないとダメだ」と思っているのかもしれないです。

その根性・能力は備えてあると良いのかもしれません。
ですが、数年経った今も私は全ての人に必要な能力ではないと思うのです。

大抵の場合エンジニアは同じ職場・プロジェクトで助け合って仕事をするのですから。困った時は助け合えばいいだけの話なんです。皆で相談すれば良くて、1人で解決する必要はないのです。

【補足】
ここまで書いて思ったんですが、元々「1人で何でも作れる人になってほしい」という社長の依頼でスタートした挑戦だったので、そういう意味では私は1人で解決するための根性が必要だったのかもしれないですね。結局無理でしたが(笑)

後日談

こうして私のエンジニアへの挑戦は白紙に戻りました。
契約が終わった後は自社待機で、社長への申し訳ない気持ちと、自己肯定感ゼロ、相変わらずの対人恐怖に悩まされていましたが、自社の人達のおかげで徐々に回復していきました。
(この頃、相談に乗ってくれて仲良くなったのが後の旦那なのですが、それはまた別の話…)

翌月には新しく案件が決まり、2ヶ月だけのテスト案件に入らせてもらいました。内容はエビデンス取得(スクショぺたぺた)の作業だったのですが、それでも今自分のできることをやろうと思い頑張りました。
プロジェクト終了時に「本当にありがとう!!今度はコード書く案件でお願いしたいです!」って言われた時、自分の中の無価値感がすっと消えていくのが感じられました。
この時仲良くなった女性リーダーさんとは案件が終わった後もプライベートで飲みに行く関係になりました。

その後もさまざまな案件に関わらせていただき、いろんな方と出会います。
皆さん素敵な方達で、誰も私のことを否定しないでいてくれて褒めてくださいました。中には結婚式に招待するくらいの仲になった方もいます。

そういった成功体験を少しずつ積み上げて、やっと今、駆け出しの苦い思い出と向き合えるようになりました。

後遺症

ただそれでもまだ、あの時の後遺症は残っています。

質問をするのが恐る恐るになってしまいます。
つい「初歩的な話で申し訳ないですが…」と言ってしまいます。

間に合わないかもしれない、期日の交渉といったことは、やむを得ない理由があったとしても胃が痛くなります。

文章が学生時代よりくどくなったように思います。

 Slack等で発言するまでに何度も何度も書いた文章を確認してしまいます。

意見を言った後「余計なことを言ってしまったかも…」と反省します。


一度でも心理的安全性の低い職場で働くとこのようになってしまうのです。

でも逆に、
人がどんなことに不安を持つかはわかります。
わからない時のつらさはわかります。
どういう風に教えてもらえたら嬉しいかはわかります。


挫折したからこそ、挫折させない方法がわかります。


わからない人の気持ちを忘れず、私は寄り添ってあげたいと思います。

そう考えると、悪いことばかりでもないのかな、と。



なーんて思うかよ。




「お前には3年目レベルの内容を叩き込んでる」と言っていたTさんに、
半分感謝、半分舌を出したい、3年経過したエンジニアです。


あとがき

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