中部一月(イツキ)

時には小説、時には遠距離恋愛の想いを綴ります。 趣味で小説書いています。ここでは短編小…

中部一月(イツキ)

時には小説、時には遠距離恋愛の想いを綴ります。 趣味で小説書いています。ここでは短編小説投稿。 エブリスタ▶︎ https://estar.jp/novels/26045151

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  • レオンファミリー

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    共同マガジン|レオンファミリーの誕生日は2024年5月19日。 参加者は200名以上。 目的は愛を届けること。この一点。 トップの表示の文言やタイトル画面は変更しないでほしい。 変更された場合、予告なくマガジンから追放することがあるから注意。 詳しくはこちらから。 https://note.com/leon0812/n/ne50160a3b856?magazine_key=mfb3685bde725

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短編小説『青』

『今日、会社行きたくない』 今朝、電車の中で急に体が拒んだ。 人間関係は悪くないけど、時々しんどくなる。 ふと余裕がなくなる時がある。 上司には一言送って携帯を鞄に放り込む。 罪悪感はあったけど、 仕事するために生きてないから、今日は自分にとってのリフレッシュ休暇だと言い聞かす。 会社の最寄りで降りずに、 そのまま電車で過ごす。 30分もすれば海の見える駅に辿り着く。 今日は雲ひとつない青空だなと窓越しに眺めていたら、空よりも濃い青が見えてきた。 『海だ』

    • 短編小説『水無月』③(完)

      もっちりとして弾力があって、簡単にはフォークでは切れなかった。 少し力を加えると小豆と白色のういろうがフォークに乗った。 『ん、これおいしいね』 先に味わったのは母だった。 私も口に運ぶと、つぶつぶの小豆とういろうが絡み合って甘さがちょうどよかった。 餡子みたいに甘いものかと思ったけど、さっぱりとしていて小豆もほんのりとした甘さだった。 小豆とういろうの甘さが強調されていない分、食べていても飽きがこないし、食感そのものを堪能できた。 「甘すぎなくて美味しいね」 そ

      • 短編小説『水無月』②

        半年間の汚れを落とす…か。 そんな由来がある和菓子とは見た目からして到底思えない。 考えが頭の中でぐるぐる巡る中で店員さんはさらに続けた。 『この形も意味がありまして、三角形なのは氷を表しています』 「氷…ですか?」 『そうです。氷は平安時代ではとっても貴重なものでした。その時代だと一般市民に氷なんて手に届くはずがありません。ですので、ういろうを氷に似せて作ったのです。』 氷なんて今や水を入れて冷凍庫に一晩寝かせておけば出来てしまうのに。 昔の方が今よりも遥かに

        • 若さが取り柄の年齢が終わりに近づいてきたから、品性を蓄えたい。

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          奥にある引っ掛かりを語るだけ

          こんばんはの時間帯かな。 自己紹介でもないけど、 なんとね結婚歴ありました。子供はいません。

          有料
          100

          奥にある引っ掛かりを語るだけ

          短編小説『水無月』①

          今日が実家で過ごす最終日。 母との二人暮らしも最後を迎える。 父親のいない、しかも誰が父親かも分からない。 母は10代の頃から色んな男と遊んで、もちろん体の関係を持っていた。 しかも知らないうちに私を身篭ったと。 きっと父親だろうと思う男に母は迫り、無理矢理籍を入れさせたけど色々と合わず一年も経たずに離婚。 それでも母は懲りることがなく、夜遅くに男を呼んで酒を飲んで笑ったり、時には男に向かって泣き喚いていた。 高校生の時に頻繁に家に転がり込んできていた男から学費を払っ

          短編小説『水無月』①

          短編小説『ミルクキャンディ』

          いつもの時間にアラームが鳴る。 今日、仕事に行けば明日は休みだ。 それなのに、起き上がると気分が悪い。 今日は生理2日目。 今週ずっと多忙で、休む間がなかった。 その疲れがどっと溜まっている。 準備しないといけないのに、体が動かない。 有給はまだあるけれど1日使うのがもったいない。 とりあえず歯磨きを済ませて顔を洗う。 歯ブラシを持っていない片手でスマートフォンを持ち『生理 休み』と検索。 ヒットした記事には、『世の女性は生理でも薬を飲んでやり過ごしている』とか、『生理

          短編小説『ミルクキャンディ』

          note頻繁に投稿するようになってから毎日が楽しい。小さいことでもこんなお話書きたいな〜って思う

          note頻繁に投稿するようになってから毎日が楽しい。小さいことでもこんなお話書きたいな〜って思う

          短編小説『思い出のハンバーグと出発のクレープ』③(完)

          広がった香りにまた少しだけ空腹になる。 私のお腹はデザートは別腹らしい。 『お待たせいたしました。』と、木製のクレープスタンドにクリームブリュレクレープが刺さっていた。 目の前に置かれてまじまじと見る。 キャラメリゼされた表面から甘い香りがした。 店員さんにお礼を伝えて、記念に写真を撮る。 どう撮ればいいか探りながら満足いく1枚を残す。 クレープをそっと手で持って、表面を備え付けのスプーンで軽く突く。 コンコンとノックしているような音だった。 少し強めに表面を突いて

          短編小説『思い出のハンバーグと出発のクレープ』③(完)

          短編小説『思い出のハンバーグと出発のクレープ』②

          『あっつ!』 『もう、冷まさないから火傷しちゃうよ』 あの人との何気ない光景。 私は前にもこのお店に恋人と来ていた。 その時に味わったハンバーグだった。 初めて訪れて、トマトが好きな彼は真っ先にこのトマトソースのチーズハンバーグにした。 私も同じのを頼んで、ここのお店の雰囲気良いよね、って話をした記憶がある。 忘れていたのに。 私はもう一口をナイフで切り分けて口に運ぶ。 うん、やっぱりあの時と同じ、この味だ。 一回しか食べていないはずなのに、味覚は鋭く覚えてしまって

          短編小説『思い出のハンバーグと出発のクレープ』②

          短編小説『思い出のハンバーグと出発のクレープ』①

          ゆらゆらと電車の中で読書をしていた。 今日は休日。朝目が覚めてクレープが食べたくなった。 そういえばまだあのクレープ屋さんあったかなと、ベッドの中で店名を検索する。 営業日が土曜、日曜、木曜だけのクレープ屋さん。 今日は土曜日だから開店している、はず。 服を選び化粧を施して家を出る。 友達は誘わず1人でぶらぶらする。 駅に着いてスマートフォンを開く。 前に行った時は数年前で、全く場所を覚えていなかった。 マップを開くと徒歩で10分程度。 夏が近づいてきた季節だから少

          短編小説『思い出のハンバーグと出発のクレープ』①

          自分の恋愛経験を元にストーリー考えても締め方が分からないから書けない。

          自分の恋愛経験を元にストーリー考えても締め方が分からないから書けない。

          短編小説『アプリコットのサクサクパン』(後編)

          私は一瞬固まった。 目の前の男の笑みがあまりにも柔らかくて綺麗で魅了されていた。 じっとするのもおかしいので、一瞬固まったのをバレないように手で探って小銭を出した。 何か答えなければいけないのかな、と、言葉を探すも見つからない。 「…じゃあ、気に入ったらまた買いにきます」とだけ呟いた。 『嬉しい、待ってますね。』 いつのまにかトレーの上にあったあんぱんとサクサクアプリコットが袋に入れられていた。 『僕だけしか働いていないので、いつでも来てください』 私はまた男を見

          短編小説『アプリコットのサクサクパン』(後編)

          短編小説『アプリコットのサクサクパン』(前編)

          『お疲れ様でしたー』 18時ちょうどに退勤。 いつも私が一番早くにパソコンを閉じて職場を出る。 周りの人はまだ残っている様子だけど、あと10分も経てば人は居なくなる。 定時で帰れて、割と繁華街の中にある職場だから有難い。 金曜日の夕方に予定があれば、そのまま居酒屋に入って友達と話すこともあるけど。 本音を言うと仕事の後に予定を作るのはあまり好きじゃない。 直帰する時もあるし、ぶらっと1人でお酒を飲むこともある。 今日は水曜日。 カレンダー通りの仕事だから今日が折

          短編小説『アプリコットのサクサクパン』(前編)

          短編小説『冷めた紅茶』

          『お待たせしました。ホットティーとアイスコーヒーです』 私の前に湯気が咲いているホットティーが置かれた。 目の前の男はこんな寒い季節でもアイスコーヒーを頼む。熱いのは飲めないと以前話していた。 優雅な休日のカフェ...ではなく、 今日は別れ話をしに来た。 人目のあるところの方が、お互い感情的にならずに済むだろう。 『別れたいってどうして?』 男は店員さんが去るとすぐに言葉を発した。 私は、どこを持っても熱いカップのハンドルを掴み、一口紅茶を啜ろうとしたけど思ったよ

          短編小説『冷めた紅茶』

          短編小説『ラブホテル』

          住宅街の中に佇んでいる安っぽい煉瓦調の建物の地下駐車場に車が入っていく。 『昼間でも多いな』と、左で運転している男がハザードを焚いて駐車を始める。 ギアを触っている手が妙に色っぽさを出して、この手が今から自分の体を触れる手なのかと思う。 『ついたよ』と言われ、私は無言で扉を開けようとすると、重く上手く開かなかった。 『ちょっと待ってて』 男が先に降りて、車の前を通過してこっちに来る。 『どうぞ』と、扉を開けてくれて促してくれる。 「ありがとう」 レストランからここに

          短編小説『ラブホテル』