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48:メンタル不調の休職者をゼロにする! 一次予防×ラインケア「ハラスメント研修」の7つのポイント①

ハラスメント研修の感想が「関係性を強化すること」だけではダメ

企業で研修の登壇をしている際に受講生に他の研修の感想を聞くことがあります。
「ハラスメント研修」の感想を聞くと、よく出てくるのが「もっと部下との関係を良くしていこうと思いました」という感想です。
「関係を良くする」ことは良いことであり、ハラスメント対策としても必要なことです。
ただ私自身は「関係を良くする」ことでハラスメントを防止できる、という考えには反対の意見を持っています。

ハラスメント研修で持ってほしい感想とは?

ではどのような感想を持っていると良いのでしょうか。
私がハラスメント研修を実施する際は下記のような感想を持ってもらいたいと思って登壇しています。

①ハラスメントの定義がわかった
②ブラックとグレーの違いがわかった
③どんな状況、原因でもブラックは絶対防止すると決めた
④グレーは対話と現実的な解決策の合意が大切だとわかった
⑤ハラスメントが発生したときには組織として対応することが大事だとわかった
⑥ハラスメントの訴えは軽くみない(本人にとっての重みをみる)
⑦ハラスメントは教育だけではなく仕組みで予防する

私は上記の7項目は少なくとも受講生が認識し、持ち帰ってほしいと思っています。

①ハラスメントの定義がわかった

ハラスメントにはパワハラ、セクハラ、マタハラなど各種ありますが、パワハラの定義を押さえておくと他のハラスメントに関してもわかってくると思います。下記は厚生労働省「あかるい職場応援団」に記載されているパワハラの定義です。

職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。

特に「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」という定義をしっかりと押さえてほしいです。
例えば工場で、従業員の1人が工具を置こうとしたとします。
そのときに工場長が置こうとした手を「バシっ!」と叩いて工具を叩き落としました。
これはハラスメントでしょうか。

※もちろんハラスメントは継続性などの要素もありますので、1回その行為が行われただけでハラスメントとして認定されるわけではありませんが

例えば
「その工具を置いてしまうと事故につながる、怪我につながる」などの状況であれば「業務上必要かつ相当な範囲」との判断になる可能性が高いです。
一方
「その工具を置いたからといって事故につながるわけではない」のに手を叩くまで行うことはどうなのか?
ということであればハラスメントに分類されるかもしれません。

このようにハラスメントに関して「範囲」という考えを理解していくと、「これをしたらハラスメントと言われるかも」「ミスを指摘したらハラスメントと訴えられるかもしれないから怖くてできない」といったことはなくなります。
ハラスメントは「範囲内」「範囲外」で考えましょう。

ここでちょっとわかりづらいのが、
じゃあ範囲内ならなんでも良いの?というところです。
ここで登場するのが「ブラック」と「グレー」の考え方です。

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
がブラックと考えることをお勧めします。
ハラスメントは「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」であっても「労働者の就業環境が害されるもの」でなければハラスメントとはなりません。
例えば管理職がある部下を怒鳴りまくっているとします。

「お前はなんでそんなこともできないんだ!」「人として終わっているよ!」という言葉があります。このように「人として」のような発言はアウトです。業務範囲に「人格を否定される」は入っていないからです。
しかし言われている部下が「はい!ありがとうございます!」と答えて、しかも明らかにモチベーションが上がって元気になっている、また本人に聞いても「あればあの人なりの元気づけなんで!気にしてないです!」と答える。
この場合は「労働者の就業環境が害されるもの」とはならないですよね。
この説明が「関係が良ければハラスメントにならない」と解釈をされてしまう箇所ではないかと思います。

しかしながらこれは危険です。
理由は二つあります。
一つは「関係性」という流動性の高い要素を元にハラスメント防止を考えるのは危険なこと。
関係性はあるときには良いけど、なんらかのきっかけで悪化するということや、逆もまた起きるものです。
そのようなことを基準にするのは危ないと思わないでしょうか。

もう一つは「その人が良くても周りは嫌がる」ことです。
上記の管理職と部下の間では成立していても、それを近くで聞いている他の方にとっては「怒鳴り声が響く社内」という環境が発生します。自分がターゲットではなくでも「労働者の就業環境が害されるもの」になります。

上記のように考えると「労働者の就業環境が害されるもの」ではなく「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」にならないようにする!ということが大事なのです。

またここで私が一番最初に書いた「もっと部下との関係を良くしていこうと思いました」があまり良いとは言えない感想ではないかと思う理由なのです。

補足として付け加えます。
この「範囲」という考え方を持つことによって「意図」を切り離して考えることが重要です。
「良い意図があって」があっても「範囲」を超えるとハラスメントになるんだ、ということが大事です。
元気付けようと思って「頑張れ!」と言いながら背中を叩いた。
この「元気付けようと思って」という意図や行為の目的があれば良い、といった解釈をせず「範囲内」か「範囲外」かで考えることをお勧めします。

まとめ

本当は7つの項目全てをこのコラムで書こうと思っていたのですが、
①ハラスメントの定義がわかった
だけで結構文字数がいってしまいました。
今回はここまでにします。

次回は②ブラックとグレーの違いがわかったに触れていきます。

この記事を読んで「メンタル不調による休職をゼロにするために何かしたい!」と思った方がいましたらお声がけください。
一緒に考えていきましょう。
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