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24:(カウンセリングの話)「キャリアコンサルタントはどこまでやるのか?」問題について

講座で出てきた質問

私は「組織セラピスト養成講座」という講座で、キャリアコンサルタントの方々にブリーフセラピーを中心とした心理療法を企業で使うための知見をお伝えしています。
そこで受講いただいた方から、タイトルにある質問を頂戴しました。せっかくなのでその質問内容をもう少し考え、まとめてみるためにnoteを書いてみます。

質問内容は「キャリアコンサルタントとしてどこまでやると良いのか?」という質問です。
もう少し真意を聞くと違う内容も含まれるかもしれませんので、質問者の方の求めることと少しずれる可能性はありますが、私は対象とするクライアントや問題のことだと判断し答えたと思っていただけると嬉しいです。
私が答えたのは
「あなたがやりたいと思うところまでではないですか?」です。
その時はあまり時間もなく、説明をする時間も取れなかったので、短い答えのみでしたが、このように答えたわけです。

その後、改めて考えてみました。
キャリアコンサルタントという資格は厚生労働省が主幹となっている国家資格です。厚生労働省のホームページで確認すると、

「キャリアコンサルティングとは、労働者の職業の選択、職業生活設計または職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、
助言及び指導を行うことをいいます」

「キャリアコンサルタントとは、キャリアコンサルティングを行う専門家で、企業、需給調整機関(ハローワーク等)、教育機関、若者自立支援機関など幅広い分野で活躍しています。」

と書いてあります。
この表現から考えると、キャリアコンサルタントはまさにキャリアに関する専門家ですので、キャリアに関することを扱う、逆に言えばキャリアのこと以外は扱わない、とも言えそうです。
しかしながらどうも実態では、そうスッキリいきません。
キャリアコンサルタントの資格を使って組織と関わって仕事をしている人の話を聞くと、心理の専門家として頼りにされている方も多いようです。

例えば・・・
組織課題に関しての相談、問題のある社員の相談、場合によってはストレスを抱えている方の面談役などなど。その内容は様々です。
またキャリアコンサルタントの資格を持っている方で産業カウンセラーの資格を持っていると、より様々な問題の対応を依頼されるのではないでしょうか。

また上記のような内容は扱わず、キャリア面談だけを行なっているという方でも、相談に来たクライアントの話を聞くうちに、家族の問題を話し始めたり、精神的な問題について語りはじめることもあります。そういった時にはどうするのか?となりますよね。
そうなるとキャリアコンサルタントで学んだことだけでは当然足りなくなるのは当たり前ですので、心理療法を学ぼう、精神疾患について学ぼうとなるのであろうと思います。その流れで、私の元にブリーフセラピーを学ぼうと来ていただけるわけですから、私は嬉しいのですが・・・

そこで冒頭の答えになりますが、私の答えは
「あなたがやりたいと思うところまでではないですか?」となります。
ただもうちょっと書き足すと
「あなたがやりたいと思うところまでであると同時に、あなたが(能力として)扱うことができるところまでではないですか」となります。
私たち専門家は自分ができることとできないことを把握し、できないことを引き受けてはいけないからです。できないことを引き受けることはクライアントに重大な影響を与えてしまうことがありますので守るべき項目です。

このこと「能力によって扱える内容を扱うこと」は専門家としての前提として話を進めてみます。これは「自分は何をする人なのか?」というキャリアコンサルタントに関わらず、仕事をする人であれば全ての人に必要な問いにもなります。

範囲と深さで考えてみる

自分がどこまで扱うかを決定するとき、私が提案したいのは範囲と深さで考えるのはいかがでしょうか、ということです。範囲としては自分はどこまでを扱っていくのか?という決定です。
また深さは決めた範囲の中でどこまで深く扱っていくか、という決定です。
まず範囲です。
枠組みを書き出してみますと、
「組織を扱う」「個人を扱う」でまずはざっくり。
組織を扱うなら、階層で区切る(経営レベル・事業所レベル・・・など)、問題で区切る(女性活躍・両立支援・人材育成・・・など)、部署や職種で区切る(営業・マーケティング・商品開発・人事・・・など)と区切り方によって考えることができそうです。他にも切り分け方はあるでしょうが、私が知っている範囲では問題や職種で区切ることが多いようです。

「個人を扱う」場合で考えてみますと、キャリアコンサルタントが出会う可能性のある個人面談の相談の目的を範囲で考えてみますと・・・

①メンタル不全の相談(精神疾患レベル)
②メンタル不全の相談(落ち込みレベル)
③組織、人間関係などの問題
④キャリア相談
などはいかがでしょうか。

例えば私は①から④まで全て扱います。
ただ①のメンタル不全の問題(精神疾患レベル)では、例えばうつ病そのものの治療としては関わりませんが、その疾患があることで生じている問題や日常生活の問題、またそういった疾患に対して向き合っていくにはどうするか?といったこと、家族がうつ病でどう接したら良いかなどは相談をお受けします。ただ私自身は公認心理師、産業カウンセラー、ブリーフセラピストシニアといった資格やその学んだことを踏まえていますので、その上での範囲だと思っていただけると良いかと思います。

どうでしょうか。
こういった範囲によって自分が取り組むことを決めておくと良いのかと思います。例えばキャリアの相談のみ自分は受ける、それ以外はその専門家にリファーします、ということは明確で良いですね。

ちなみに「組織セラピスト養成講座」の範囲を書いておきますと、
・組織と個人双方を扱う
・組織は階層とか、職種で区切りませんが、あくまで「人の問題」に限定しています。
・個人は①から④まで扱うかどうかは受講生の選択に任せるが、講座は①から④まで扱えるように学ぶ
※精神疾患の扱い方は上記に記載した私の範囲になります。

問題は「深さ」

さて、実は範囲に関してはそれほど難しくないのです。決めれば良いだけ、あとは自分の能力、実力に応じてやっていけば良いからです。
難しいのは「深さ」ではないでしょうか。
相談自体は「キャリア」そのものです。
しかしながら、キャリアについて話していくとうまくいかない、相談が進まない、ということは結構あります。
そこには精神疾患が潜んでいたり、発達障害や人格障害、またキャリアコンサルタントで学んだことでは気づき得ない項目があるかもしれません。

例えば・・・
自分が転職相談の相談員をやっているとします。
そこに相談に来た30代半ばの方の話を聞くと
「うつ病で休職中だったのだが、休職中に色々考えることがあって転職を考えている・・・」という話が始まったらどうするのか?
私であればうつ病に関する知識とブリーフセラピーの考えをもとにしつつ「この方の転職をしようという行動そのものがうつ病の症状から来ていることはないのか?」「転職活動という解決しようという行動が悪循環となる偽解決行動ではないか?」などと考えます。
双極性障害であれば、うつ病とはまた違うアプローチが必要になります。転職活動が躁転によるものかもしれません。
会話の中から自閉スペクトラムの傾向が見えたのであれば、言葉の使い方を変えて、比喩を使わず具体的な会話をするなどと工夫します。

いかがでしょうか。
こういった知識や観察力、そしてその2つを踏まえたカウンセリングスキルが必要になります。
まず判断としては「それなら扱わない」も大事な判断だと思います。
私自身は目の前の相談をしていく過程の中で、幸運なことに自分の面談の足りない視点を指摘してもらえる環境があったことによって、精神疾患について勉強しないと、発達障害、人格障害、心理学、社会心理学、家族心理学などなど。
キリがない沼に入り込んでいる、とも言いますが(笑

最後に私自身の思いや願いを書いてみます。

クライエントにより良い支援を行う仲間として、この沼に入り込み、一緒にぐちゃぐちゃと進んでいきませんか?

最後までお読みいただきありがとうございました。
文章内で出てきました「組織セラピスト養成講座」は現在3期目を準備中です。10月以降に開始予定です。
ご興味のある方はお声がけください。
今後ともよろしくお願いします。

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