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化合物の語源まとめ(最終更新2021.12.14)

かごたんこと、化合物語源たんよ。
定期ツイートに入りきらなかった情報なんかもここには載せておいたわ。
引用として表記されている所は要検証部分よ。
化合物以外も色々入ってるから暇つぶしに見てね。

(あ、関係ないけど上の画像は仮面ライダーセイバーのEDでもお馴染みの東洋文庫ミュージアムで撮影したものよ!)

指摘等はこちら↓ 

参考文献については一部表記を省略してるから最後から2番目の項目を見てね。(参考文献について)


アスコルビン酸[ascorbic acid]

ビタミンCのことよ。語源はa-(否定の意)+「壊血病の」scorbuticね。否定のaがついている言葉といえば、アスタチンastatine(στατός=立っている)やアキラルachiral(χείρ=手)があるわね。
ビタミンvitaminはラテン語の「生命」vīta+amineね。

Cってのは「脂溶性A」、「水溶性B」に次ぐビタミンだからついたアルファベットね。eが無いのは、ビタミンCがアミンamineじゃなかったかららしいわ。

scorbuticの方は中世ドイツ語で「お腹が裂ける病気」を表していたschorenに由来するって説があるわ。

ascorbic ,schorbut,chiral,astasia,vitamin,ビタミン(wiki)


アスパラギン酸[aspartic acid]

誘導元の「アスパラギン」asparagineが由来ね。こっちは想像通り「アスパラガス」asparagusからなんだけど、asparagusはギリシャ語のἀσπάραγασから来てて、これはἀ(強調) +「引き裂く」σπάρασσωや「音を立てて裂ける」σφαραγέομαιが由来みたいね。仮葉が細かく裂けているからとか、茎に鋭いとげがあるからとか言われているわ。

aspartic,asparagine,「生薬単」p.35


アデニン[adenine]

ドイツの医学博士アルブレヒト・コッセルが1885年に膵液から発見した物質で、ギリシャ語「線、リンパ腺」ἀδήν(aden)から命名したわ。
彼は1910年に蛋白質や核酸の研究でノーベル生理学賞を受賞しているのよ。

adenine


アドレナリン[adrenaline]

1901年に高峰譲吉とその助手、上中啓三が牛の副腎から精製した物質で、副腎adrenalから命名したわ。


1897年アメリカ人が羊の副腎から得た粗抽出物をエピネフリン(上επι(epi)+腎臓νεϕρος(nefros))と命名したため、アメリカでは今もそう読んでいるみたいね。

高峰(高峰譲吉博士研究会),アドレナリン(ニッポニカ),epinephrine


アニオン,カチオン[anion,cation]

anionはギリシャ語で「上がる」を意味するἀνιόν(anion)から、cationは「下がる」を意味するκατιόν(kation)からよ。

上がるとか下がるは、電気分解で電流が上がる方(アノード)、下がる方(カソード)って解釈から来ているわ。ちゃんとアノード(陽極)にアニオン、カソード(陰極)にカチオンが集まるでしょ?

余談だけどカテーテルcatheterも元は「下に送る」みたいな意味よ。

anion,cation,catheter


アニリン[aniline]

インディゴの加熱により得られたため、原料である植物の「アニル」anilから命名したわ。anilはサンスクリット語「黒青」नीला (nīlā)にアラビア語の定冠詞al(英語のthe)がついて今の形になっていったわ。
「アサガオ」は学名でPharbitis nilよ。

定冠詞alだけど、イスラム教の唯一神アッラーاللّٰه‎ (allāh)のal部分はここから来ているそうよ。
「神」を意味する部分はإِلَ‎ ‎(’ilah‎)(‎あるいはإِلٰه (’ilāh))よ。

アフロ・アジア語族の他の言語とも似ていて、例えばヘブライ語では「エル」というわ。ガブリエルやサキエル等、エルがつく天使は多いわね。

aniline,anil,Allah「生薬単」 p.191


アマルガム[amalgam]

水銀が含まれる合金ね。ギリシャ語の「柔かい」μάλαγμα(malagma)が語源よ。アラビア語の「合体」al-jamʿ って説もあるわ。  
奈良の大仏はこれを使って金色に塗られたって話は有名ね。


語頭のaはアラビア語の冠詞ね。

amalgam


アメシスト、紫水晶[amethyst]

酔いを防ぐ効果があるとされていて、ギリシャ語の「酔わない」ἀμέθυστοςが由来よ。メタンと同じくワインμέθυ遡れるわ。ギリシャ神話には白い石に変えられた処女アメシストが、酒神バッカスにワインをかけられ紫色になったという話があるわ。

amethyst,松原 聰「学研の図鑑 美しい鉱物」学研(2013)p.38


アラニン[alanine]

アミノ酸の一種でアセトアルデヒドacetaldehydeから合成されたことに由来するわ。シアン化水素、アンモニアと反応することでアラニンになるのよ。ストレッカー反応っていうみたいね。

alanine


アリール基[aryl]

ギリシャ語の芳香ἄρωμα(arōma)に遡れるわ。
芳香族の置換基だから、結構そのままね。アリル基とはちがうから注意!

aryl,aroma


アリル基[allyl]

ラテン語の「にんにく、たまねぎ」alliumが由来よ。
ペペロンチーノの正式名称、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノはイタリア語で「ニンニク、アブラ、トウガラシ」よ。次郎みたいね。
アリール基arylとはちがうわよ。

allyl


アルカリ[alkali]

元はアラビア語でのal-qaly,al-qaliが由来よ。これはalはアラビア語の定冠詞(alcoholやalchemyなんかもそう)が炭酸カリウムや炭酸ナトリウムを意味するqali,qaly(qilyの口語表現)についた語よ。「焼く」を意味するqalāから来ているわ。
アルカロイドalkaroidは「のようなもの」を意味するoidがついた形ね。

alkali,alkaroid


アルコール[alcohol]

元は中世ラテン語で粉末状のアンチモンを指して、これはアラビア語の al-kuḥl (al-は英語でいう所の the、kuḥlはアイシャドーやアイブロウを指す)から来ているそうよ。

アラビア語のkaḥalaとかヘブライ語kāḥalと関係が深くて、これらは「染める」って意味があるわ。「ベニバナ属」Carthamusの語源もこのあたりの言葉って言われているわ。ベニバナの色素は古代より使われていたことがわかってて、エジプトのミイラからも発見されているそうよ。

錬金術師パラケルススが揮発性の液体を指す言葉としても使い始め、更に後世の人によって現在の意味になったみたい。

alcohol 「生薬単」 p.55


アルデヒド[aldehyde]

1835年ドイツ人化学者ユストゥス・フォン・リービッヒが、ラテン語「脱水素化アルコール」alcohol dehydrogenatum」からal+dehyd+eと命名したわ。

de(離れる)はdeprive(剥奪する)やdepart(出発する)にも使われているわね。

aldehyde


アルブミン[albumin]

「卵白」albumenに含まれるたんぱく質ね。albumenはラテン語の「白」albusを語源としていて、「アルバム」album(元は白い石板って意味)や「アルビノ」albino、「アルベド」albedo(柑橘類の白い部分)も同じよ。
印欧祖語の白*albho-に辿れるわ。

albumin,albumen,albino,album 「Dictionary of PIE」p.3 「生薬単」 p.73


安息香酸[benzoic acid]

安息香って香料から得られることが直接的な語源ではあるわ。ただもっと遡ろうとすると、なかなかいろんな説があるわ。

1.アルサケス朝パルティア(漢語で安息)でよく使われてた香りと似ていた(wiki情報)。この王朝の始祖がArsakって人だそうで、ここから来ているみたいですね。日本国語辞典でも、ペルシア語のarsakが語源としています。
(日本国語辞典の大元の情報は荒川惣兵衛の外来語辞典からって書いてあるけどまだ調べられてない。。。)

2.邪を安息する効能があると考えられていた(「本草綱目」って中国の本に書かれているらしいです)(wiki情報。資料は残ってるし、明の時代の中国語が読めるなら、確認できるかも)

3.蚊取り線香のように虫を寄せ付けなくて安眠できた。(エレキたんが前に本で見たそうです。エレキたん、呟きがなかなか活発で面白いのでお勧めです)

英名→ベンゼン参照


アントシアニン[anthocyanin]

植物によく含まれている色素ね。antho-はギリシャ語の「花」ἀνθο-(antho-)が由来で、cyaninの方はギリシャ語の「暗い青」κύανος(kyanos)ね。(シアン化物も参照)
アンソロジーanthologyはギリシャ語の花集めが語源なのよ。

anthocyanin,antho-,cyano,anthology


アントラセン[anthracene]

ギリシャ語「炭」ἄνθραξ(anthrax)からね。コールタールから「フェナントレン」phenanthrene(ϕαινο-(phaino-)=光,anthreneは同じ)とともに得られるわ。

anthracene,phenanthrene,pheno


アンモニア[ammonia]

アンモニウム塩が古代エジプトのアメン神殿(the shrine of Jupiter Ammon)近くから産出されたことによるわ。

Ammonはヘブライ語のעַמּוֹן‎(amon)由来よ。元は「名を隠す者」って意味を持つ説があるわ。

アメン神殿が祀っている太陽神アメンは羊の角を持っているとされ、その形に似ていることからアンモナイトの語源ともなっているわ。

ammoniaammonnites(ニッポニカ)ammoniac,ammon,amen(新英和大辞典)


イソ-[iso-]

慣用名でよく見る接頭辞ね。ギリシャ語で「等しい」を意味する「ἴσος(isos)」からよ。同位体isotopeも同じね。(topos=場所 topologyやtopicとかにも)

iso,isotope


ε-カプロラクタム[ε-caprolactam]

「ε-」はケトン基とアミノ基の間にある炭素の数(αならシクロプロパンっぽい形)から、「カプロ」はカプロン酸(C₅H₁₁COOH)(ラテン語のヤギcaperから。ヤギの毛の油から得られたことに由来。)から、ラクタムはラクトン+アミドからね。
caperは印欧祖語の*kap-ro-に遡れるわ。

caproic,lactam,「Dictionary of PIE」p.38


ウルツ[wurtzite](tweet未収録)

組成ZnSの鉱物ね。フランスの化学者C. A. Wurtzに因むわ。

wurtzite,下林典正,石橋隆「史上最強カラー図解プロが教える鉱物・宝石のすべてがわかる本」株式会社ナツメ社(2014)p.85


ウラシル[uracil]

1885年にR.ベーレントが発見したんだけど詳しくわかってなくて、恐らく「尿素」ureaが語源だと言われているわ。ureaはギリシャ語「尿」οὖρον(ouron)が語源ね。印欧祖語の「水、液体、ミルク」*wē-r-に遡れるわ。

uracil,「Dictionary of PIE」p.103


エーテル[ether]

元はアリストテレスの第五元素に当てられていた名前で、天界を構成する元素よ。揮発性の高さによって「本来地上にあるべきではないものが天に帰ろうとしている」と考えられて名付けられたそうよ。

エタンはエーテルから名付けられたらしいわ。

エーテル(古代),エーテル(ニッポニカ)ethane


エステル[ester]

ドイツ人科学者レオポルト・グメリンによる造語で、「酢酸エチル(酢のエーテル)」Essigätherの略だと考えられているわ。(「酢」Essig +「エーテル」Äther)

Essigはラテン語の酢acetumが音位転換してできた語だそうよ。

ケトンの命名も彼の功績ね。彼はシャルルの法則で有名なゲイ=リュサックの教え子よ。

ester,グメリン(関東化学)


エタン[ethane]

→エーテル


エマルション[emulsion]

ラテン語の「搾り取る」ēmulgēreが由来ね。印欧祖語の「搾乳する、すり減らす」*melg-に遡れるわ。milkやgalactoseやlactoseもそうね。

emulsion,「Dictionary of PIE」p.55


エンタルピー[enthalpy]

オランダの物理学者マリン・オンネスがギリシャ語のἐν-(en-)と、加熱を意味するθάλπειν(thalpein)から命名したわ。ἐν-はenrichなんかでも見られるわね。θάλπεινはPre-Greek由来らしいわ。

彼は低温における物性の研究(特に液体ヘリウムの生成)で1913年にノーベル物理学賞を受賞したことで有名よ。

enthalpy,θάλπειν(wiki)


エントロピー[entropy]

ドイツの物理学者ルドルフ・クラウジウスがギリシャ語のἐν-(en-)と、変換とか転換なんかを意味するτροπή(tropī)から命名したわ。ἐν-はenjoy、τροπήはtropicalでも見られるわね。

entropy,


オゾン[ozone]

1840年、ドイツとスイスの化学者クリスチアン・シェーンバインが酸素からなる事を示し、特有の匂いを放つことからギリシャ語の「匂う」ὄζειν (ozein)から命名したわ。
これは印欧祖語の*od-に遡れて、同じ語源を持つものにodorとかオスミウムなんかがあるわね。デオドラント「deodorant」de(離れる)+odor(匂い)+ant(名詞化) という英単語は日本でもよく見るわね。

ozone,「Dictionary of PIE」p.61


オパール[opal]

ラテン語のopalus、もっと遡るとサンスクリット語の「石」upalaにたどり着くわ。オパールはインドからヨーロッパに伝わったそうよ。真珠pearlは語源が違ってラテン語「二枚貝」 pernaとか「梨」pearから来ているって説があるわ。

opal,pearl,pearl(etymonline)


オルト[ortho]

1位と2位に置換基がついているものね。ギリシャ語で「正規の」ὀρθός(orthos)が語源よ。

「歯列矯正」orthodonticsや「オーソドックス」orthodoxにも使われているわね。

オルト(大辞林),ortho


オレイン酸[oleic acid]

和名はドイツ語のOleinsäureから、これ自体は古典ラテン語の「油」oleumに遡れるわね。oilも同じよ。さらにギリシャ語のἔλαιονに遡れて、関連語のἐλαίαからはoliveやpetroleumが派生したわ。

「化学語源辞典」p.44,oleic,oleum,oil,olive,「Dictionary of PIE」p.23


ガーネット、柘榴石[garnet]

ザクロの果肉に似ていることから、ラテン語の「ザクロ」grānātumにちなんで名づけられたみたいね。印欧祖語の「粒」gr̥e-no-に遡れて、同じ語源を持つものとしてgrainやcornなんかがあるわ。

garnet,「Dictionary of PIE」p.34


核[nucleus]

ピーナッツのナッツの語源でもある、印欧祖語の*kneu-に遡ることができるわ。ラテン語「クルミ、堅果」nuxはラテン語「ハス」nuciferaの語源でもあるわ。地球の核はnucleusじゃなくてcoreが使われるわね。こっちの語源はあんまりよくわかってないんだけど、果実の真ん中にあるからラテン語の「心」corから来ているんじゃないかって説があるわ。関連語のギリシャ語の「心臓」κάρδαμονは心臓の薬になると考えられていた「カルダモン」cardamomの語源って説もあるわ。

core 「Dictionary of PIE」p.44 「生薬単」 p.105,139,167


ガス[gas]

現ベルギー生まれの錬金術師ヤン・ファン・ヘルモントがギリシャ語の Χάος(khaos)から命名したわ。でもこれ、今の混沌(chaos)とは意味合いが違ってて、物質が生まれる前の虚無を表していたそうよ。印欧祖語の*ghēu-に遡れるわ。

「Dictionary of PIE」p.32 アン・ルーニー,八木元央「元素から見た化学と人類の歴史」原書房(2019)p.73


カチオン

→アニオン、カチオン


カフェイン[caffeine]

coffeeから得られたためよ。coffeeはアラビア語で「コーヒー」qahwa(カフワ)から来ていて、元はワインを意味していたみたい。「食欲がない」qahiyaの派生語だと思われているわ。
珈琲の当て字は宇田川榕菴が与えたといわれているわ。酸化や塩素も彼の言葉ね

caffeine,coffee


カプサイシン[capsaicin]

トウガラシ属の属名Capsicumから来ているわ。これは実が袋状になっているのでラテン語の「容器」capsaから名付けられたとされているわ。caseやcapsuleもここから来ているみたいよ。

capsaicin,capsicum,case,capsule,


ガラクトース,脳糖[galactose]

ギリシャ語「牛乳」γαλα(gala)から来ているわ。galaは「銀河、天の川」galaxyという単語にもみられるけど、なんでかわかるかしら?
そう、天の川は英語でMilky wayだもんね。

galaはlacと同系語よ。語幹のgalakt-の形のほうがわかりやすいかもね。

galacto,galaxy


カラット[carat(ct)]

宝石の質量を表す単位よ(1 ct = 200 mg)。マメ科の植物デイゴの種子(アラビア語でquirrat)が重さを測るのに使われていたことに由来しているわ。これもギリシャ語の「イナゴマメ」κεράτιονが由来だそうよ。

星野直彦「Unit Girls 単位キャラクター事典」オーム社(2020)p.167,carat,カラット(wiki)


カルビノール[carbinol]

メタノールの別名で、ヘルマン・コルベが命名したわ。コルベ・シュミット反応で有名ね
語源は炭素carbonね。
ラテン語の木炭carbo、更に印欧祖語の熱、火*ker-に遡れるわ(ceramicなんかも)
美味しいカルビは、モンゴル語の「下腹」qarbingが由来よ

carbinol,「元素の名前辞典」p.12


β-カロテン[β-carotene]

人参などの緑黄色野菜によく含まれる赤橙の色素で、ラテン語の人参carotaが語源で、印欧祖語の「角、頭」*ker- に遡れるわ。reindeerやunicorn、hornも同じよ。
カロテンの中でも両端の構造がどっちもβ環のものをβ-カロテンと呼ぶみたいね。
炭素と水素以外の元素を含むとキサントフィルと呼ばれるようになるわ。

carotene


カンデラ[candela(cd)]

明るさを表す単位ね。ラテン語の「ろうそく」candēla(candella)が語源よ。
「候補者」candidate(選挙の候補者は純白のトーガを着た)や「カンジダ」Candidaもcandēlaと同語源よ。

candela,candle,candid,candidate,Candida


蟻酸(ギ酸)[formic acid]

イギリスの博物学者ジョン・レイが蟻を蒸留して得たため、ラテン語で蟻を意味する「formīca」より命名。
印欧祖語の*morwi-から来ているみたい。

蟻は身を守るためにこの酸を分泌するが、カラスやムクドリは自分の羽でそれらを拭き取ってから食べるみたい(蟻浴)

ギ酸(ケムステ),「Dictionary of PIE」p.58


キシレン[xylene]

最初は木タールから見つかったため、ギリシャ語の木材(ξύλον)xylonから来ているわ。キシリトールxylitolや木琴の一つ、シロフォンxylophoneなどでも見られるわね。

xylene,xylophone,xylitol


キニーネ[quinine]

キニーネは1820年にキナノキquinquinaから単離されたことに由来するわ。
ストリキニーネと日本語は似てるのに全然違うから注意ね!

quinine,quinquina,


グアニン[guanine]

1844年に「鳥の糞」guano(グアノ)から発見されたことに由来するわ。guanoはケチュア語のhuanuまでさかのぼることができるわ。核酸のプリン塩基として含まれていることはその約40年後にわかったみたい。

guanine,guano,グアニン(ニッポニカ)


クエン酸[citric acid]

1782年ルイ=ベルナール・ギトン・ド・モルボーが柑橘類を意味するフランス語citriqueからacide citriqueと命名したわ。英名は借用語ね。
citrusは古代ギリシャ語のκέδρος由来って説があるみたい。

日本語名の枸櫞(くえん)はシトロンって植物のことを指しているんだけど、現在のフランス語ではレモンを指すらしいの、ややこしいわね。ちなみに「枸」の字は「枝が曲がること」を意味しているみたい。

漫画citrusに出てくる純情ギャルは藍原 柚子だし、黄色い水晶はシトリンcitrineとも言うわね。

citric ,citrus,「生薬単」p.153


クォーク [quark]

マレー・ゲルマンがジェイムズ・ジョイスの小説「フィネガンズ・ウェイク」に出てくる鳥の鳴き声quarkから命名したわ。彼が存在を提案したクォークは三種類(アップ、ダウン、ストレンジ)、鳥が鳴いた回数も3回よ。
理系といえども彼みたいな教養を身に着けたいわね。

quark


クメン[cumene]


ヒメウイキョウCuminum cyminumから得られたことが由来よ。スパイスのクミンもこれね。
高校でも出てくるクメンヒドロペルオキシドのペルperには「超えた、完全な」みたいな意味があるわ。過酸化物を表しているわけね。完全に(perfect)理解できた?

クメン(コトバンク),per


グラファイト[graphite]

ギリシャ語「書く」γράφειν ‎(graphein)と接尾辞-iteからよ。grapheinはcalligraphy(καλός(kalós)=美しい)やchromatographyにも使われているわね。

graphite,calli


グルコース,ブドウ糖[glucose]

ギリシャ語「最も甘いワイン」γλεῦκος (gleukos)から命名されたわ。語源のγλυκύς(glykys)は「甘い」を意味するギリシャ語で、グリセリンや江崎グリコ等の由来にもなっているみたい。印欧祖語の*dl̥k-u-に遡れて、「甘い」dolce(ドルチェ)も同様ね。「カンゾウ属」Glycyrrhizaはγλυκύς +「根」ῥίζαが由来で、フランス語を経由して英語に入るとlicoriceになったわ。棒状の分子モデルはlicorice modelともいうんだけど、これは似た形をしている「甘草入りのキャンディー」licorice candyに由来しているわ。
日本語名はドイツ語名の訳で、その名の通りブドウ等に多いのよ。

glucose,ブドウ糖(ニッポニカ) 「生薬単」p.137 「Dictionary of PIE」p.21


クロロフィル[chlorophyll]

フランス人のペルティエとカヴェントーがギリシャ語の黄緑χλωρός(chlōros)と葉 ϕύλλον (phyllon)から命名。塩素chlorineは含まれていないわ、色が同じだけね。
phyllonはflowerやblood、bloomと同じく印欧祖語の「繁栄する、咲く」*bhel-に遡れるみたいよ。

ちなみにクロマトグラフィーはこの物質を分離した時の色(ギリシャ語でχρῶμα ‎(chrōma))から名付けられたわ。

chromatography,chlorophyll,「Dictionary of PIE」p.10


ケトン[ketone]

ドイツ人化学者レオポルト・グメリンが「アセトン」Aketonから命名したそうよ。
acetoneは「酢酸」acetic acidから派生したみたい。
Alkoholとalcoholとか、他のゲルマン語ではkなのが英語でcになることはよくあるわ。

グメリン(関東化学),ketone(online etymology dictionary) ketone, acetone


ケラチン[keratin]

髪の毛やツメなんかを構成するたんぱく質ね。ギリシャ語の「角」κέρας(karas)が語源よ。
トリケラトプスtriceratopsは「3本の角」τρικέρατος(trikeratos)+「顏」ὤψ(ōps)よ。そのままね。

keratin,triceratops


ゲル[gel]

元はゼラチンgelatinよ。フランス語で魚で作った白いスープを指していたgélatineから来ているわ。
これはgelatinはラテン語の「凍結」gelāreがもとで、印欧祖語の「寒い、凍る」*gel-に遡れるわ。glacier,jelly,cool,chillなんかもそうね。ゼラチンの他にも-inとかで終わっている化合物が多いこともあって、化合物の語尾のスタンダードになっていったわ。

gel,gelatin,「Dictionary of PIE」p.26


コカイン[cocaine]

「コカノキ」Erythroxylum cocaから得られたためね。


cokaは南米の原住民の言語、アイマラ語で「木」kúkaから、
Erythroxylumは、ギリシャ語「赤い」erythrósと「木材」xýlonからよ。

coca,コカ(小学館ロベール仏和大辞典),


コラーゲン[collagen]

ギリシャ語の「糊」κόλλα(kolla)からよ。「コロイド」colloidなんかも同じ語源ね。
「コラージュ」collageはフランス語で糊付けよ。コラ画像は直訳するとノリ画像ね。

collagen,コラージュ(日本国語辞典),colloid


コレステロール[cholesterol]

ギリシャ語の胆汁χολή ‎(cholē)と固体στερεός (stereos)からコレステリンcholesterinと命名された後アルコールであることがわかって接尾辞-olがついたみたい。

stereosといえば立体化学stereochemistryなんかにも出てくるわね。

黒胆汁の過剰が憂鬱をもたらすとされたため、ギリシャ語の黒いmelan(メラニン等)とcholiを合わせてmelancholyとなったそうよ。

cholesterin,melancholy


コロイド[colloid]

→コラーゲン


酢酸[acetic acid]

ラテン語「酢」acetumからね。acetumは「酸っぱい、鋭い」acereからよ。
さらにこのacは印欧祖語で「鋭い、高い」*ak-から。「酸」acidも同じね。

acetic, acetumacid, 「Dictionary of PIE」p.2


サリチル酸[salicylic acid]

ラテン語「柳」salixから「サリシン」salicinが命名され、サリシンから分解されたため命名されたみたい。

柳の解熱作用自体はネアンデルタール人も利用していたという学説もあるくらい古くから人類がお世話になっている物質ね。

salicylic acidネアンデルタール人(ナショジオ)


サリン[sarin]

開発メンバーのシュラーダーSchrader、アンブローズAmbros、リッターRitter、リンデLindeの名前から命名したわ。

頭文字をとって命名したものをacronymってよぶんだけど、acropolisなんかを見ても分かるようにacro-には最も高いって意味があるわ。印欧祖語で鋭い、高い等を意味する語根「*ak-」から。acidやacrobat,oxygeneも同じね。

acro(etymo),「Dictionary of PIE」p.2


シアン化物[cyanide]

ギリシャ語の暗い青κύανος(kyanos)から命名されたわ。日本語だと青酸塩ともいうわね。

ヒッタイト語の「貴石、銅、青」を意味するkuwannan-に関係があって、kuwannan-はシュメール語のkù-anから来ているといわれているわ。


コナン君が良くなめてる青酸カリの匂いはアーモンド臭と表現されるけど、実際にビターアーモンドは青酸化合物のアミグダリンを含んでいるわ。

cyano


シトシン[cytosine]

1894年にA・コッセルとN・ノイマンが子ウシの胸腺の加水分解物から発見したわ。cytoは細胞を意味していて(エンドサイトーシスとか聞いたことないかしら?)、ギリシャ語で中空部や受け皿を意味するκύτος(kytos)に由来しているわ。これはhideやskyと同じく「覆う、隠す」みたいな意味がある印欧祖語の*(s)keu-に遡れるわ。

cytosine,cyto-,シトシン(ニッポニカ),「Dictionary of PIE」p.81


酒石酸[tartaric acid]

ワインの醸造で樽にできる「酒石」tartarが由来よ。

tartarはアラビア語由来だそうよ

光学不活性な酒石酸には「ラセミ酸」racemic acidという名前が与えられているわ。これはラテン語「ブドウの房」racemusによるものよ。ラセミ体という言葉にもなっているわね。

酒石酸(ケムステ) ボルハルトショアー現代有機化学上(第7版)234


ジュラルミン[duralumin]

アルミニウムに銅やマグネシウムを加えた合金ね。ラテン語「硬い」dūrusとaluminiumから来ているって言われてるけど、ドイツのDürenにある金属会社によって開発されたことが由来かもしれないわ。
aluminiumの方はラテン語「明礬」alumenからきてて、明礬の苦さから印欧祖語「苦い」*alu-に遡れるとする説もあるわ。

duralumin,「元素の名前辞典」p.32


スクロース[sucrose]

フランス語「砂糖」sucreより。これはアラビア語もsukkarに辿れて、

もっと辿ると砂糖と語源が同じって話もあるわ。

ショ糖のショは蔗とも書き、これはサトウキビを意味するわ。

sucrose,sugar


スチレン[styrene]

「セイヨウエゴノキ」Styrax officinalから採れる蘇合香(storax)から発見されたことが由来ね。styraxの語源στύραξは安息香を意味しているわ。ベンゼンの由来であるアンソクコウノキはStyrax benzoinよ。

「生薬単」 p.271


ストリキニーネ[strychnine]

ストリキニーネはタカラマメStrychnos ignatiaとマチンStrychnos nux vomieaから得られたことに由来するわ。キニーネとは違うから注意!

strychnine


ゼオライト、沸石[zeolite]

スウェーデンの鉱物学者A.F.Cronstedtがギリシャ語の「沸騰」ζεῖν(zein)から命名したわ。加熱すると水を脱離して沸騰しているように見えるそうよ。

zeolite


セラミックス[ceramics]

ギリシャ語の「陶器の」κεραμικός(keramikos)が語源よ。 印欧祖語の「熱、火」*ker-に遡れるわ。囲炉裏hearth(ハーズストーンのハーズ)とか、炭素carbon、カルボナーラcarbonara(胡椒がすすっぽい)も同じよ。

ceramics,「元素の名前辞典」p.12 「Dictionary of PIE」p.42


ソラニン[solanine]

ジャガイモの芽に含まれている成分として有名ね。ナス属Solanumが語源よ。Solanumについては詳しくわかってなくて、ラテン語の「鎮痛」solorや「太陽」solが由来って説があるわ。

「生薬単」 p.43


ターシャリー[tertiary]

ラテン語の「三番目の」tertiāriusが語源よ。ターシャリーブチル基は一つの炭素からメチル基が3生えているでしょ?

tertiary


ダイアモンド[diamond]

後期ラテン語のdiamasから。これはadamāsの変化形なんだけど、 ギリシャ語で否定を表すἀ-(a-)と「服従する」δαμνασθαι (damnasthai)から来ているみたい。「屈しない、服従しない」みたいな意味になるのね。δαμνασθαιは「飼う」tameと同じ印欧祖語までさかのぼるれるわ。

diamond,adamant


チオール[thiol]

-SHを持つ化合物ね。ギリシャ語の「硫黄」θεῖον(theion)+ -ol(アルコールとの類似性より)が由来みたい。アミノ酸のメチオニンも由来は「メチル」methylとtheionね。
SHは「メルカプト基」mercaptoと呼ばれることもあるわね。

thiol-,methionine「元素の名前辞典」p.40


チミン[thymine]

アデニンやシトシンのと同じく「胸腺」thymusの核酸から発見されたわ。thymusはギリシャ語「いぼ状の発疹」θύμος(thymos)から来ているみたい。香りづけとして有名な植物、タイムの芽がこぶ状なのが似ていることが関係しているそうよ。。

thymine,thymus,thymus(ONLINE ETYMOLOGY DICTIONARY)


テオブロミン[theobromine]

「カカオ属」Theobromaから来ているわ。これはギリシャ語の「神」θεός(theos)と「食べ物」βρῶμα(broma)が由来よ。
「神学」は英語でtheologyね。
カカオの学名はTheobroma cacaoで、
cacaoはメキシコの先住民がCacavaqualhitlと呼んでいたことに由来するみたいね

theobroma,カカオ(森永)「化学語源辞典」p212



テトロドトキシン[tetrodotoxin]

「フグ」Tetrodonの「毒」toxinね。Tetrodonは「4」τετρα-(tetra-)と「歯」ὀδούς(odous)から。フグの特徴をとらえているわね。

真正細菌に由来する毒素で、フグ以外も持っているわ。

tetrodon,tetrodotoxinロナルド・ジェンナー,イヴィンド・ウンドハイム「生命毒の科学」(2018)


テレフタル酸[terephthalic acid]

terebicと、異性体であるフタル酸(phthalic acidsから命名されたわ。terebicはテレビンノキterebinthから得られることから来ているそうよ。テレビンノキはピスタチオと同属で、旧約聖書にも出てくるみたい。
遠い(tere) とは違うから注意!

terephthalic,terebic,terebinth


トタン[galvanizing]

鉄に亜鉛をメッキしたものね。ポルトガル語の「亜鉛(?)」tutanagaが語源で、これも元はペルシャ語‎が語源よ。 英名は人名Galvaniからね。
あなたはきっと、これを見た途端(とたん)、ツイートに「いいね」をしてしまうでしょう、、。

トタン(世界大百科事典 第2版)(デジタル大辞泉),「元素の名前辞典」p.79,「化学語源辞典」p.225


トルエン[toluene]

「トルーバルサム(香りの強い分泌液を出す木)」tolu balsamの乾留物から発見されたことによるわ。

toluはコロンビアの先住民の名前よ。


「強い香り」balsamは、とある調味料の名前にもなっているわね。わかるかしら。

バルサミコ酢よ。

toluene,balsamic


ナイロン[nylon]

デュポン社の造語なんだけど、cottonやrayonの-on以外は特に意味がないみたい。まあ公式がそう言っていても色々憶測したくなるのが人間というもので、日本の絹に対抗して「Now you lousy old Nipponese !」からつけたとか、虚無nihilからつけたとか言われているわ。

nylon,ナイロン,


ナフタレン[naphthalene]

イギリスの科学者ジョン・キッドが「ナフサ」naphthaから得たため命名したわ。ナフサ自体は元々原油をあらわす言葉で、中期ペルシア語の「湿った、石油」naftから来たとされているみたい。
フタル酸はナフタレンから作られたことが由来よ。

ナフタレンの常圧で昇華する性質は防虫剤に使われているわね

naphthalene,naphtha 「生薬単」p.83


ニコチン[nicotine]

フランスにたばこを持ち帰ったとされるジャン・ニコJean Nicotの名前に由来するわ。

コチニン cotinineはこのアナグラムよ。


たばこが昆虫から食べられないように作っているんだけど、それが原因で人間に狙われているなんてかわいそうね。ちなみにトマトなどナス科の植物にも含まれているわ。

「ナイアシン(ビタミンB₃)」Niacinは「ニコチン酸ビタミン」nicotinic acid vitaminの略よ。

nicotian, 「生薬単」p.29


パラ[para]

ベンゼン環の1位と4位に置換基がついているものね。ギリシャ語「反対側に、越えて」παρα(para)からね。
paradox(doxa=意見)やparasite(sitos=食べ物)等でも見られるわ。

paradox,parasite,パラ(大辞林)


パルミチン酸[palmitic acid]

和名はドイツ語のPalmitinsäureから、これ自体は古典ラテン語の「ヤシ」palmaが語源ね。英語の「ヤシ」も「手のひら」もpalmなのは葉の形が手のひらに似ていることが由来よ。

日本化学会命名法専門委員会「化合物命名法 IUPAC勧告に準拠 (第2版)」東京化学同人(2016)p.3,palmitic,palm,パーム(デジタル大辞林)


ヒアルロン酸[hyaluronic acid]

水晶体と網膜の間を満たすガラス様液あるいは硝子体(ガラス体)から分離されたために「透明な,ガラス状の」hyaloid,そして「ウロン酸」uronic acidを多く含むことからこれらを合わせて命名されたそうよ.hyaloidは古典ギリシャ語「ガラス」ὕαλος(hyalos)に遡れて,glassの語源であるゲルマン祖語「ガラス」*glasąに似ていることが指摘されているわ.

hyaluronic, hyaloid,uronicὕαλος,硝子体液,キューピー


ビーカー[beaker]

恐らく、ラテン語のbicāriumに遡れるわ。これの別の形picariumはアングロ=ノルマン語経由で英語に入り「ピッチャー」pitcherになったわ。

beaker,pitcher,


ピクリン酸[picric acid]

「苦い、酸っぱい」πικρόσ(pikros)が語源ね。印欧祖語の「切る、(切り込みで)マークする」*peig-に遡れて、同根の単語にpicture,paint,pintなんかがあるわ。味が由来の化合物といえばグルコースもあるわね。余談だけど、「ピクルス」picklesはオランダ語「漬け汁」pekelが由来だそうよ。

「生薬単」 p.129 「Dictionary of PIE」p.65


ピペット[pipette]

パイプpipeに指小語尾の-etteよ。指小語尾ってのは小さいことを表す語尾よ。フランス語由来の語尾で、カセットcassette、パレットpalette、ルーレットrouletteでも見るわね。駒込ピペットは元駒込病院長の二木謙三によって作られたことが原因だそうよ。

pipette,(会津大学),駒込(東京都立駒込病院)


ピリジン[pyridine]

ギリシャ語の「火」πῦρ(pyr)からよ。可燃性からこの名前がついているのかしらね。πῦρは「熱分解」pyrolysis(lysis=分解)や「黄鉄鉱」pyrite(ハンマーでたたくと火花が出る)にも使われているわね。

pyridine,下林典正,石橋隆「史上最強カラー図解プロが教える鉱物・宝石のすべてがわかる本」株式会社ナツメ社(2014)


フェニルアラニン[phenylalanine]

phenylは「フェノール」phenolの語源でもあるベンゼンの別名pheneから。alanineは同名のアミノ酸から。(<アセトアルデヒドacetaldehyde)
アラニンにベンゼン環(phene)くっつけたって考えれば構造式も覚えやすいかしらね。

phenylalanine,phene,alanine


フェノール[phenol]

ベンゼンがコールタールで発見されていた為、ガス灯から連想してフランス語で「光をもたらす」を意味する「phainein」からpheneと呼んだわ。そこから派生したみたい。これも元はϕαίνειν(phainein)ってギリシャ語よ。

ギリシャ語の光から来ているものといえばリンphosphorusや光子photon、photoなんかもあるわね。

phene,「元素の名前辞典」 p.37


フタル酸[phthalic acid]

→ナフタレン


ブタン[butane]

→酪酸へ


フマル酸[fumaric acid]

ケシ科カラクサケマン属Fumariaから得られたことによるわ。fumariaは汁に煙(ラテン語でfūmus)のような催涙効果があることが関係しているわ。

フマル酸はトランス体で、シス体はマレイン酸ね。覚え方は「虎(トランス)に踏まれ(フマル酸)てまれ(マレイン酸)に死す(シス体)」

fumarin,fumitory,フマル酸(世界大百科事典 第2版),fumeterre(ロベール仏和辞典)


フラーレン[fullerene]

「リチャード・バックミンスター・フラー」Richard Buckminster Fullerによって考案された建築物、ジオデシック・ドームに似ていることから命名されたわ。

Fullerは縮充工や洗い張り屋さんを意味する職業姓ね。

fullerene, Patrick Hanks 「Dictionary of American Family Names」(2003) p.612 


フラン[furan]

furfuranの略語で、furfuranはラテン語「小麦の糠(ふすま)」furfurからよ。モンハンのフルフルなんかはおそらく悪魔のほうのFurfurからね。

furan,furfuran,furfurol,


ブリキ[tinplate]

鉄にスズをメッキしたものね。日本語名はオランダ語「薄い鉄板」blikが語源だと言われているわ。英名は英語のスズ「tin」からね。「メッキ(滅金)」は水銀の中の金が「滅」してアマルガムとなることが由来みたい。

ブリキ(精選版 日本国語大辞典),https://www.jstage.jst.go.jp/article/denka/27/12/27_653/_pdf


プリン[purine]

痛風になる方のプリン。エミール・フィッシャーが尿酸の還元で得られるとの仮説をもとにラテン語「純粋」purumと「尿酸」uricumから命名したみたい。

purumは印欧祖語「*peuə-」に遡れるわ。「清教徒」Puritanなんかもそうね。
「尿」urineは水などの液体を表す*wē-r-までさかのぼれるわ。

purine,「Dictionary of PIE」p.103,69


フルクトース,果糖[fructose]

果物から発見されたのでラテン語「果物」fructusから。

果物を冷やすと甘く感じるのは、フルクトースが低温下でより甘い異性体へと変化するためよ。かといって冷やしすぎると味覚の受容体が鈍感になるから注意してね。

fructose


プロピオン酸[propionic acid]

1848年にジャン=バティスト・アンドレ・デュマがギリシャ語の前προ-(pro-)と脂肪πιον-(piōn-)から命名したわ。
最初の脂肪酸とみなされていたことによるらしいの。
プロパンがここから派生したわ。

牛などの反芻動物は初めの胃でセルロースや糖質をこれに変えてエネルギーを得ているそうよ。

propionic, プロピオン酸(ニッポニカ)


ブロンズ、青銅[bronze]

イタリア語の「真鍮、鐘の金属」bronzoから来ているとこまではわかってるけど、その由来はいくつかの説があるわ。
①青銅を生産していたイタリアの都市Brindisīから
②雷の音を出す真鍮製の楽器βροντείον(bronteîon)から(大元はギリシャ語の雷βροντή(brontē))(雷竜はブロントテリウムbrontotheriumよ。)
③ペルシア語の銅*piringから

bronze,bronze(ロベール)


ペニシリン[penicillin]

フレミングがアオカビPenicilliumから単離したことによるわ。筆状体penicillusと呼ばれる形をしていることからこの学名がついたみたい。筆がpenicillusなのはラテン語の尻尾penisから来ているそうよ。あっ、、(気づき)

penicillium,penicillus


ペプシン[pepsin]

胃液中で働き、タンパク質を分解している酵素よ。ギリシャ語の「消化」πέψις(pepsis)が語源ね。印欧祖語の「料理、円熟」*pekʷ-に遡れて、pumpkin,cook,cuisineも同様よ。ちなみにペプシコーラは元々ペプシンを含んでいたそうよ。消化不良の治療薬として作られていたんだって!

pepsin, 「Dictionary of PIE」p.65, https://www.pepsi.co.jp/history/


ヘモグロビン[hemoglobin]

hæmatoglobinの短縮形ね。ギリシャ語「血」αἷμα(haima)と単純たんぱく質であることを表すglobulinから命名されたわ。「赤鉄鉱」hematiteは赤色のものもあることからそう命名されたみたい。どちらの赤色も鉄が原因ね。

globulinは英語の「球、地球」を意味するglobeと同じ語根を持つわ。

hemoglobin,haematin,globulinは標準化学用語辞典(第二版),hematite


ペロブスカイト[perovskite](tweet未収録)

灰チタン石ね。ロシアの鉱物学者Lev Alekseevič Perovskijに因むわ。

perovskite,灰チタン石(wiki)


ベンゼン[benzene]

「アンソクコウノキ」Styrax benzoinの樹脂の主成分、「安息香酸」benzoic acidから誘導されたことによるわ。benzoinはアラビア語で「ジャワ島の乳香」لُبَان جَاوِيّ‎ ‎(lubān jāwī)からよ。定冠詞のalをつけてal-lubānになった後、定冠詞の部分をとるつもりでluの部分までとっちゃったみたい。lubānはセム語の語根「白い、白くなる」LBNが由来みたいね。レバノン(レバノン山が一年中白いことに由来)も同根よ。


benzoin,「生薬単」p.271


ボーキサイト[bauxite]


アルミニウムの原料ね。ベルチェ鉱で有名な地質学者ピエール・ベルチェが発見した岩石で、その名はフランスの産地Baux(Beaux)の名前から来ているわ。
日本語では鉄礬土とも言うわね。礬はミョウバンの礬で、アルミニウムを意味するわ。

bauxite,


ホスゲン[phosgene]

発見者のジョン・デービーが、「光」ϕῶς(phōs)と「産む」γεἰνομαι(geinomai)からつけたって書いているわ。塩素化の際に光を使うものね。
ϕῶςは「リン」phosphorus、γινομαιは「酸素」oxygenや「水素」hydrogenなんかの語源でもあるわね。

ちなみにジョンデービーはハンフリー・デービー(NaとかMgを発見した人)の弟よ。
phosgene, 「元素の名前辞典」p.2


ボツリヌストキシン[botulinum toxin]

ボツリヌス菌が生産する毒素で、ソーセージを食べると起こる食中毒の原因ね。名前はラテン語「ソーセージ」botulusから来ているわ。botulusは恐らくオスク語からの借用語よ。


ソーセージに使われる発色剤(硝酸塩)はボツリヌス菌の繁殖を抑える働きもあるのよ。

botulinumwiki(発色剤), botulism


ホルモン[hormone]

1905年にErnest Starlingがギリシャ語の「動かす」ὁρμᾶν(horman)から命名したわ。 元の形のὁρμή(hormē)は「興奮する」よ。
印欧祖語の「動く、動かす」*er-に遡れて、ariseやorigin、artなんかも同様だと考えられているわ。

hormone,「Dictionary of PIE」p.24


マレイン酸[maleic acid]

「リンゴ酸」malic acidを脱水すると得られることによるわ。リンゴ酸のほうはラテン語「リンゴ」malumが語源ね。

ギリシャ語でリンゴmêlonのドリス方言mâlonから来ているみたい。mêlonは後々メロンになるわ、、。ヒッタイト語のブドウmahlaやリンゴšam(a)lu-なんかとも関係があるみたい。
禁断の果実がリンゴなのは「悪い」malusと間違えたって説があるわ。

maleic,malic,


マルトース,麦芽糖[maltose]

麦芽maltから得られたことによるわ。プレモルのモルね。maltは古高ドイツ語でやわらかいことを意味するmalzに遡れるわ。meltの母音交替した語とも言われているわ。

maltose,malt,


メタ[meta]

1位と3位に置換基がついているものね。ギリシャ語「間に、変化して、後退して」μετά(meta)から。metamorphosisは英語で「変身」よ。

これも元々は「間」って意味のmidやmeso(メソポタミア=川の間)なんかと同じところから来ているって話もあるわ。

メタ(大辞林)


メタン[methane]

まずメチレンmethyleneがギリシャ語「ワイン」μέθυ (methy)と木材「ὕλη」 ‎(hylē)から命名され、そこから派生したみたいね。

hylēはアリストテレス哲学の質料(ヒュレー)と同じよ。

methyは印欧祖語の「蜂蜜酒」*medhu-から来てるんだけど、これは中国語で「蜜」になったわ。

methane


メッキ

→ブリキ


メルカプタン[mercaptan]

チオールthiolの別名ね。水銀と反応して沈殿を生じるわ。merは水銀mercury、captanは古典ラテン語の「捕まえる」captāns(captāreの現在分詞)から来ているのよ。
mercuryの名は錬金術師が水銀を水星mercuryと対応させていたことに由来するわ。

mercaptan,メルカプタン,「元素の名前辞典」p.185


モルヒネ[morphine]

阿片から単離して得られた物質で、その効能から「夢の神モルペウス」Morpheusにちなんで名付けられたわ。Morpheusはギリシャ語「形」μορφή(morphē)から来ているみたい。metamorphosisとかって言うでしょ?モルヒネから得られたヘロインheroinは古代ギリシャ語のヒーローἥρως(hērōs)からよ。

「阿片」は遡るとギリシャ語「阿片」ὄπιον(opion)にたどり着けるわ。

morphine,heroin,Morpheus 「生薬単」p.183,184


酪酸[butyric acid]

バターから得られたので、ラテン語「バター」butyrumが語源ね。
butyrumはギリシャ語「牛」būsと「チーズ」tyrosから来ているそうよ。
ちなみにbūsはcowやbeefと同様に「印欧祖語」*gwou-に遡れるみたい。
ブタンはここから派生したわ。

酪酸を靴の裏に着けて歩き回り強烈な匂いを学校中に広めた知人がいるわ。

butterbutyr , 「Dictionary of PIE」p.36


ラクトース,乳糖[lactose]

牛乳から得られた糖で、ジャン=バティスト・デュマがラテン語の乳lacから命名したわ。

カフェ・ラテのlatte(イタリア語)やカフェ・オ・レのlait(フランス語)もlacから派生したみたいよ。

「レタス」lettuceも語源は同じで、茎を切ると乳白色の液体が出ることが由来みたい。


乳固形分が3.0%以上だとラクトアイスよ。氷菓はこれ未満で、アイスクリームは15.0%以上、更に乳脂肪分8.0%以上と決められているわ。これ以上言うと千反田えるが泣くわね。

lactlactose,「生薬単」p.175 ラクト(グリコ)


リコピン[lycopene]

ラテン語のトマトlycopersiconが語源ね。元はギリシャ語の「狼」λύκος(lykos)と「桃」περσικός(peraikos)が元になっているみたい。 「味が悪い桃」って意味合いがあるみたいね。wolfと同様に印欧祖語のwl̥kʷo-に遡れるわ。

lycopene,学名,「Dictionary of PIE」p.104, 「生薬単」p.153


リットル[litre(L)]

1 dm³ね。フランス語のlitron、さらにギリシャ語のλίτρα(litra)に遡れるわ。λίτρα自体は重さを表していたみたいだけどね。
単位が大文字なのは基本的に人名由来なんだけど、これは例外ね。

クロード・リットル(Claude Émile Jean-Baptiste Litre)という人物が由来っていうジョークがあるんだけど、IUPACは事実として雑誌に載せてしまった黒歴史があるわ。

litre,クロード・リットル(wiki)


リノール酸[linoleic acid]

ラテン語の「亜麻」līnum + 「油」oleumから命名されたわ。亜麻仁油に多く含まれるわ。「リノレン酸」linolenic acidはリノール酸より二重結合が多いためlinol + en(二重結合)が由来ね。

linum,「化学語源辞典」p.332


リノレン酸[linolenic acid]

→リノール酸


ルクス[lux]

照度を表す単位で、ラテン語で光を意味するわ。ちなみに光束を表すlumen(lm)も同じで、二つとも印欧祖語の「光」*leuk-に遡れるわ。LunaやLucifer、illuminateも同様ね。

lux,lumen,「Dictionary of PIE」p.51


ルチル[rutile]

二酸化チタンの結晶の一つで、日本語では「金紅石」とも呼ばれるわ。ラテン語「赤」rutilusが語源みたい。印欧祖語の「赤」reudh-に遡れて、「ルビジウム」rubidiumや「赤血球」erythrocyte、少し遠いけどredも親戚ね。

rutile,「Dictionary of PIE」p.74,下林典正,石橋隆「史上最強カラー図解プロが教える鉱物・宝石のすべてがわかる本」株式会社ナツメ社(2014)p.110


ルーメン[lumen(lm)]

→ルクス


レーヨン[rayon]

その光沢から、「光線」ray+「綿」cottonでrayonよ。フランス語では「光るもの」を意味するみたい。rayは印欧祖語「枝、根」*wrād-に遡れて、radishやradioなんかもここから来てるわ。cottonはアラビア語のquṭnやquṭunに遡れるみたい。

rayon,レーヨン,cotton,「元素の名前辞典」p.202


ロンズデーライト[lonsdaleite](tweet未収録)

炭素の同位体ね。イギリスの結晶学者デイム・キャスリーン・ロンズデール(Dame Kathleen Lonsdale)が由来よ。

ロンズデーライト(wiki),キャスリーン・ロンズデール(wiki)


参考文献等について

括弧書のないリンク付き英単語はOEDの該当項目に飛びますが、会員登録制(基本有料)です。


頻出する書籍については以下の略を使用します。


「生薬単」:原島広至,北山隆,伊藤美千穂「生薬単」 エヌティーエス (2017)

「元素の名前辞典」:江頭和宏「元素の名前辞典」九州大学出版会(2017)

「Dictionary of PIE」:Calvert Watkins「The American Heritage Dictionary of Indo-European Roots, Third Edition」p.51

「化学語源辞典」:尾藤忠旦「化学語源辞典」三共出版株式会社(1977)


謝辞

noteを書くにあたり、内容の訂正や参考になる文献の紹介など多くの助言をくださった江頭和宏さんに厚く感謝申し上げます。


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