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給料がない?年末調整がない?起業してから気付くあれこれ。

会社員をやめて個人事業主として起業すると、実はいろいろなところで、これまでと変わることが出てきます。
でも、会社員が大多数の日本において、日常的にそれらの知識を見聞きすることは、ほとんどありません。

実際に起業し、何かに直面した時に初めて気付くというケースが多いように思います。
今回は、会社員にとってはあたり前だけど、個人事業主になると変わることについて、ちょっと説明してみたいなと思います。

①給料がない

「給料がないってどういうこと?」と思いますよね。
給料というのは、実は、会社などに雇用されている人だけが受け取れるものです。
個人事業主は雇用されていないので、給料を受け取ることはありません。
これは、固定的で安定した収入がないという意味ではなく、「給料」と呼ばれるものを受け取ることがないという意味です。

個人事業主が仕事をして、誰かからお金を受け取った場合は、「売上」になります。
商品やサービスを販売した時だけでなく、業務委託契約を結び、労働の対価としてお金を受け取った場合も売上です。
労働を提供しているという点で、一見、同じようなもののように思えますが、この場合は給料ではなく報酬と呼ばれ、売上として計上されることになります。

②年末調整がない

個人事業主になり、1年も終わりに近づく頃、ふと「そういえば年末調整ってどうしたらいいの?」と思ったりします。
「そもそも年末調整って何?」という人もいるかと思いますので、念のため説明しますと、年末調整所得税の納税のために行うものです。
お勤めをしていると、毎月の給料から源泉徴収という形で、税金が差し引かれます。
これは、「年間の所得はこれくらいになりそうだから、最終的にこのくらいの税金がかかるよね」という推測の元に、その税額を月々にならした金額が差し引かれているイメージです。

ただ、状況によって、当初の推測通りにいかないこともあるので、1年の終わりに正しい税額を計算し直して、これまでの差引額との間に差額が出れば、調整をすることになります。
これが年末調整です。

本来、所得税の納税のためには、確定申告をする必要があります。
ただ、お勤めをして給料を受け取っている人の場合は、会社などの事業主が、この年末調整を行って、本人の代わりに税額を計算し、納税まで完了してくれます。
そのため、お勤めをしている本人は、基本的に確定申告を行わなくて済みます。
このように、年末調整は、お勤めされている方限定の手続きなんです。
なので、個人事業主として起業した後は、年末調整を行う必要がありません。
その代わりに、確定申告を行うことになります。

③源泉徴収票がない

年末調整を行った後に発行されるのが源泉徴収票なので、年末調整を行わないということは、源泉徴収票もありません。
ただ、年の途中に起業し、それまでどこかにお勤めされていた場合には、源泉徴収票が発行されます。
会社によっては、お願いするまで発行してくれないこともありますが、その年の確定申告の時に絶対に必要な資料なので、後々気まずい感じでお願いするはめにならないよう、早めに受け取っておくのがおすすめです。

④雇用保険がない

お勤めをしている時は、日数や時間など、一定の勤務条件を満たせば、雇用保険に入ることができます。
しかし、個人事業主は雇用されていないので、雇用保険に入ることはできず、また、雇用保険の代わりになるようなものもありません。
ということは、失業手当や育児休業給付、教育訓練給付などの対象にはならないということです。
起業の決意をし、会社をやめてすぐに開業届を出して個人事業主になってしまうと、失業手当が受け取れなくなります。
ほとんど収入がないうちは、失業手当を受け取りながら、一応新しい就職先を探し、満額受け取った後に、いざ開業するのが手堅いです。

⑤社会保険がない

社会保険は狭義の社会保険と広義の社会保険があり、狭義の社会保険は、厚生年金保険健康保険のことを指します。
一方、広義の社会保険には、この2つの保険に加えて、雇用保険労災保険が含まれます。
社会保険というと、会社特有のものに思われますが、狭義の社会保険にあたるものは、会社員以外にもあります。
それが国民年金国民健康保険です。
個人事業の内容によっては、特定の健康保険組合に加入することもありますが、基本はこの2つに加入することになります。

ある会社を辞めて、すぐに別の会社に転職する場合、社会保険の手続きは会社が行ってくれますが、個人事業主になる場合は、自ら手続きをしないといけません。
手続きを忘れて放置した場合、その期間は免除とはならず、過去の分まで後からしっかり払わされるので、まとめた出費にならないよう、早めに手続きするのが安心です。

⑥住民税が給与天引きじゃない

会社などに勤めていると、所得税や社会保険料だけでなく、住民税も毎月の給料から天引きされます。
この住民税の納め方を特別徴収と言います。
しかし、個人事業主の場合は、毎月の給料から天引きということができないので、年4回にわけて、納付書などで支払うことになります。
この納め方を普通徴収と言います。

給料から天引きされていると、あまり気付かないのですが、普通徴収で改めて住民税の存在を知ると、なかなかの金額に驚いたりします。
住民税は所得税と異なり、前年の所得にかかる税金なので、お勤めしていた時の給料が大きかった場合、個人事業主になった直後に、住民税の支払いに苦労することがあります。
なので、あらかじめ、ある程度のたくわえが必要です。

⑦年収がない

年収を年間の収入ととらえれば、もちろん個人事業主にも年収はあるのですが、いわゆる会社員などの年収とは別ものであり、もはや比べることができません。
個人事業主の収入は事業収入ですが、これはつまり売上です。
会社員などの収入は給与収入ですが、年収は給料やボーナスの総支給額を指すことが一般的です。
詳しい説明はここではしませんが、事業の売上と個人の収入を同じものとして扱うのは、なんとなく違和感があると思います。

自動車のローンを組んだり、クレジットカードを作ったりする時に年収を書く欄がありますが、これは会社員などの年収を前提としたものです。
個人事業主は、会社員などの年収と同じ概念のものが存在しないので、この時に頭を悩ませることになります。
基本的には、所得などを記載することになりますが、事前に先方に確認するのが安心です。


このように、いつのまにかあたり前だと思い込んでいたものも、実は会社員を前提としたものだったということがあります。
日本の多くは会社員なので、少数派の個人事業主にとっては優しくない仕組みも存在します。

会社員の時は、会社がやってくれていたけど、個人事業主になったら自分でやらなくてはいけないというものもあるので、何も知らなくて焦ったということがないように、事前にちょっとだけ調べておくと安心です。


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