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人生最後にモルヒネを。

「もし世界が終わるとしたら、最後の晩餐には何が食べたい?」と母に聞かれた。心理テストらしい。
とりあえず、いつか食べてみたいと思っていた二郎系ラーメンと答えておいた。
だが本当はラーメンよりうどんの方が好きだし、やたらに味の濃いものよりも繊細で触感がいいものが好きだ。もやし炒めとか。
それに油っこいものは苦手だ。一蘭のアブラマシマシなんか、店を出たらすでにニキビができていた。さらに胃の働きが徹夜でゲームしてるひと並みに悪くなるのを感じるし、大腸でも処理しきらん雰囲気がある。
でも、パッと思いついたのは二郎だった。なぜなのか。食べたことがないのに。いや、これはむしろ食べたことがないからこそ食べてみたくなったのではないか。というかそれしかない。

自分は好奇心が強い方だという自覚がある。コンビニでは新商品ばかり買ってしまう。自転車に乗ってても落ちてたものを確認するためによくUターンしている。それが袋に入った飴なら食べてみる。動物の死骸なら棒でつつく。
怪しいものは食べてみる。知らないことはやってみる。好奇心に生きる。そんな軸とも呼べないような軸、あえてかっこよく言うなら本能、が今までの人生のテーマである。本当にただの後付けに過ぎないが。ていうかそもそものスケールが小さいのはご愛敬だ。

そんなさなかに冒頭の質問だ。なぜ二郎なのか。
ラーメン気になる。でも調子崩す。メリットとデメリットだ。
でもそんなときにでも、世界が終わるならリスクは帳消しだ。これはずるい。
これは、「経験則から食べないほうがいい」と「でも気になるし食べてみたい」を両立させるための裏技として、質問の意図をあえて外して利用した小賢しい回答といえるだろう。

質問に直感で答えた後でそんなことを考えていると、ふと思いついた。
リスク、もっとデカくてもいいんじゃない?
なんかあったっけ?
…...…モルヒネ?

ええやん。世界一キマるドラッグらしいし、その分副作用もでかい。ぴったりだ。
そこで伝えた。「やっぱ、二郎系やめて、モルヒネにするわ」
そしたら衝撃なことを言われた。
なんと、弟も同じことを答えたらしい。
似てるんだね、って言われた。二人で笑った。

心理テストにモルヒネの場合は書いてなかった。