【映画批評】デヴィッド・クローネンバーグの形而上学
デヴィッド・クローネンバーグほど、数年後のライフスタイルを予知した監督はいないだろう。
たとえば、ドン・デリーロの同名小説を映画化した『コズモポリス』では、若き投資家がリムジンバスに乗りながら外の世界の混沌を眺めている様子が描かれている作品である。人々は、株価などの数字に一喜一憂する。ロバート・パティンソン演じる投資で莫大な富を得た男はリムジンで床屋へ向かう途中に人民元の相場が変動し窮地に陥るも、どこか現実離れした状態によって痛みを感じなくなり、痛みを求めるかのように自