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「デカ女ブーム(≒高身長女子or巨女)」をフィクションから考察する

割引あり

 ここ数日、Xで「デカ女ブーム」がトレンドに入っている。どうやら高身長な女性に対して性的眼差しを向けるポストが発端のようだ。そして、「デカ女」には身長170~200cmの現実的なものから『シン・ウルトラマン』の長澤まさみのような特撮レベルの女性、さらには胸や尻が大きい女性と様々なニュアンスが含まれているらしく、あらゆる「デカ女」性癖を持つ方々がお気持ち表明や界隈布教のポストをした結果、一時期数万にもおよぶポストが行われた。

 ふと10年前、大学生時代に「ジェンダー論」の期末レポートで高身長の女性を扱った漫画に対する考察を書き、A+をもらったことを思い出した。  

 2010年代に、高身長の女性を扱った漫画がたくさん発刊された時期があった。「Stand Up!」「富士山さんは思春期」「ハル×キヨ」「見上げると君は」「羽柴くんは152センチ」「僕の心のヤバイやつ」と思いつくだけでもこれぐらい存在する。

 YouTubeでも高身長の女性が「高身長あるある」を投稿するのが流行った時期があった。SNSで誰しもが発信できる時代、「好きなことをして生きる」がYouTubeの広告とし流布され、自分のコンプレックスを武器としてさらけ出す時代だったのかもしれない。SNSで発信することで共感してもらえ、多様な生き方を認めてもらえる可能性があった時代特有の現象だったと考えている。

 実際に、2016年には自分の高身長コンプレックスを告白し、クラウドファンディングでお見合いをした人もいる。

 また、アイドルグループBerryz工房の熊井友理奈がアイドルにもかかわらず身長が181cmある異端の存在として活動しており、その影響でフィクションの領域でもアイドルマスター シンデレラガールズの諸星きらりのように身長182cmのキャラクターが生み出される状況が起きた。

 さて、今回は2010年代に大量発生した高身長女子を扱ったマンガをから社会を捉えてみたい。恐らく、現実社会での葛藤がそこに隠されているような気がしたからだ。また、『ふしぎの国のアリス』や『縮みゆく人間』などといった形而上的肉体の変化から人間心理を読み解く映画論を書いたことがあるわたしにとって興味深い発見があるように思える。

 これ以降は「デカ女」を「高身長女子」ないし「巨女」と分けて書く。理由としては2つある。ひとつ目は、この単語自体が差別的な意味を持っているからである。実際に「高身長女子」に関する動画を見ると、「デカい」と言われたくないと語っていることが少なくない。女性にとってその言葉は傷つくのである。

 ふたつ目は、先述のように「デカ女」には様々なニュアンスが含まれており、今回扱い領域を踏まえると一般的な名称である「高身長女子」を用いて話を進めた方が良い気がする。フィクションの観点では、どうやら「巨女」を用いるのが少なくても「デカ女」より適切だと思ったのでこちらを使用する。ということで早速考察していく。


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