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【映画批評】『ルックバック』を「落下、扉、運命」から論じる

藤本タツキが2021年にジャンプ+にて発表した読み切りマンガ「ルックバック」がアニメ映画として公開された。本作品は、終盤に京都アニメーション放火殺人事件を連想させる場面があり、SNS上で物議を醸し修正された。その後、単行本になる際に修正前に近い形で再度調整が行われた。

1.Web版
2.Web修正版
3.単行本版

のうち「3.単行本版」の内容で作られた。アニメ映画版『ルックバック』はこれ以外に公開前から賛否両論分かれている。それは、イベント上映(ODS)のスタイルを取っており、各種割引使用不可の一律1,700円となっていたことである。一般料金の観点から見れば、2,000円から数百円割引となりお得感があるのだが、映画の日を狙っていた人や学生料金で鑑賞する人からすれば割高となり、この上映スタイルが果たして良いのかが議論の焦点となった。

私は、公開日直前にアニメ映画に詳しいヒロくんさん(@atarashieiga)と議論し、

  1. 入場者特典が豪華である

  2. 原作のファン層ぐらいしか観ない

  3. 観客層を絞り込むこと下手な炎上を防ぐ

  4. 制作コストとの兼ね合いで割引鑑賞では元が取れない

といった点でイベント上映価格は妥当なのではと結論が出た。

さて、私は試写で観てブログ記事を書いたわけだが、もう少し本作における「落下、扉、運命」について分析できるような気がした。

フランスの名門映画大学La Fémisでは、一次試験として映画と3つのテーマを題材に論述していく課題が与えられる。例えば、実際に出題されたもの黒沢清の『贖罪』から「儀式、ツール、目に見えないもの」について論じる問題があった。『ルックバック』の場合、「落下、扉、運命」で書くのが妥当といえる。

また、同日公開されたホン・サンスの『WALK UPにおける時空間の歪みと絡めると面白い映画批評になりそうな気がした。ということで書いていく。

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