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▼北陸への旅▼②:富山・富岩運河を行く



年度末の北陸への旅。富山・黒部川流域でのミッションを終え、週末に北陸新幹線を西に向かうルートで道草しながら帰京する旅が始まりました。(前回の記事はこちら)

今回は、富山市内で街歩きをした模様をお伝えします。

■富山市内へ

黒部宇奈月温泉駅を後にして、富山駅に向かいます。

一駅の新幹線の旅。北陸新幹線も、こういう利用形態が
意外と使えたりするのですね。
ライトレールが走る町、富山。
旧・富山港線が路面電車化された区間です。

■富岩運河へ

この川が運河?と思いましたが、これは、「いたち川」と呼ばれる
運河に平行して流れる川です。
そして、これが、富岩運河環水公園と、天門橋です。

富岩運河環水公園は、富山と岩瀬浜を結ぶ、富岩運河の終点である、元々船溜まりだった場所に作られた公園です。

ちなみに、富岩運河と、いたち川は、どんな関係にあるかというと、ざっくりこんな感じです。

①かつて、神通川が蛇行し、富山市街地を分断していました。
②明治時代に、デレーケさんが洪水対策のために、富山市街西部をまっすぐ新しい川を通しました。(馳越線)
③昔の神通川は廃川になり、市街地に荒地ができてしまいました。
④そこに、運河を海から開削し、出た土で廃川の跡を埋め、公共用地にしました。
⑤廃川といっても、いたち川や松川という小さな川は残り、舟運などにも利用されました。
⑥ということで、昔の川の跡地にいろんな公共施設が建ち、舟運も栄え、富山の町の繁栄のきっかけになりました。

ということで、富岩運河の船溜まりの跡地、環水公園をご紹介します。

環水公園にあるスタバ。都市公園にできたカフェのさきがけ的存在です。
「世界一美しいスタバ」と呼ばれたこともあるようです。
確かに絵になる風景。芝生に座りながら、
スタバのコーヒーを楽しむ人も多いです。
天門橋。展望台の機能を兼ね備えた、環水公園のシンボル的な橋です。

富岩運河は、昭和初期から昭和30年代頃までは、沿線に工場も立地し、舟運で栄えましたが、次第に舟運が衰退し、埋め立てて道路等の用地にするとの構想が出ましたが、その後水辺空間を活かした公園整備計画が持ち上がり、今の美しい環水公園が残ったという経緯があります。

展望台の上から海側を見たところ。
昔の蛇行した神通川と、馳越線の関係をわかりやすく解説したボードがあります。
橋の図面も展示されています。
土木屋さんには、なかなか楽しい展示でした。

■運河クルーズに乗船

さて、この地に来たのは、実は運河を遊覧するクルーズ船に乗船するためでした。

なかなか素敵なクルーズ船が運航されています。

この船の、「中島閘門」を通り、閘門施設を見学して戻ってくるコースの最終便のチケットをゲットできたので、それを楽しむことにしたのです。

船内の様子。ボランティアガイドさんの案内を聴きながら、
ゆっくり船は進んでいきます。

途中、ガイドさんに、「閘門(こうもん)」の仕組みを聞いた一般のお客さんは、最初は、その言葉の響きに、お尻のことだ、とか言いながらガヤガヤ反応されていたのですが、いざ実際の閘門が稼働する所を見ると、その機能に興味津々な反応に変わってきたのが素晴らしかったです。

中島閘門に到着。ゲートが閉まり、環水公園側と海側の水位差分だけ、
水位が下がり、船の高さが低くなっていく様子を体験。
一般のお客様も、土木施設の機能に興味津々です。

■中島閘門を見学

下船して、中島閘門の施設の説明をされる、
ボランティアガイドさん。
パナマ運河と同じ方式の水門が、今も稼働しています。
中島閘門の全景。国指定重要文化財に登録されています。
こちら、水門の操作室です。
かつて使われた大きな操作盤の説明。
現役の操作盤は、後ろにある小さな制御盤。時代の進歩を表しています。
閘門の番人が使えるよう、浴室まで付いていました。
当時は24時間稼働させていたようです。
こちら、閘門の少し脇を渡る、中島橋という橋梁。
昭和九年との刻印があります。
運河開通時からある橋のようです。
乗船者限定で、カードをゲット。ラッキー。
スタバを舟の上から。なかなか楽しいクルーズでした。
環水公園には、もう一つ閘門があります。
こちらは、富岩運河といたち川を結ぶ、牛島閘門。

牛島閘門は、富岩運河から、さらにいたち川に船がかつて乗り入れるために設置された閘門です。こちらは水位差約60cmくらいで、中島閘門よりも小規模なところを見ると、小舟が往来していたようですね。

■富山県美術館へ

環水公園、とても素敵な公園なのですが、もう1箇所素敵な場所を紹介します。環水公園に隣接して作られた、富山県美術館です。

こちらが、その美術館です。
この美術館、屋上にある、「オノマトペの屋上」がとっても素敵です。
子どもたちがゆったり遊ぶ開放的な屋上空間。
「あれあれ」といったような、オノマトペが散りばめられた遊びの空間。
後ろには、夕日の神通川が見えていました。
屋上から眺めた、環水公園と富山駅北口の風景。
立山連峰は・・、黄砂が飛んでいたようで、残念ながら霞んでいました。
屋内も、何だかとても素敵な空間でした。
閉館時間に近かったので、立ち寄りませんでしたが。
博物館の建物の建築図面が飾られていました。
きめ細やかな記載があるのが、やっぱり素晴らしいですね。
2019年のBCS賞受賞、内藤廣さんの設計、施工は清水建設JVのようです。

■神通川へ向かう

さあ、夕方なのでそろそろ歩くのをやめようか・・と思った矢先に、「神通川が見たい!」と思ってしまい、ついそちらに向かって歩き始めました。

美術館から見えた、神通川。
こちらは、いたち川の水が、河川改修で水位低下してしまったので、
環水公園に水を取り入れるための可動堰がある場所です。
いたち川は、ここで海側に流れる水路と、神通川に流れる水路に分流します。
恐らく、神通川に流れる水路は、洪水時に水を流すためのものでしょうね。
いたち川の水を神通川に通水する水門。
【いたち川水門 1986年 北陸地方整備局 富山工事事務所】
そして、神通川にたどり着きました。
ここからが、いわゆる「馳越線」を歩く道のりになります。

今回は、ここまで。次回は、夕暮れの神通川の「馳越線」を散策し、さらに神通川の旧河道を流れる「松川」「いたち川」を、夜と翌朝に歩いた模様をお伝えしたいと思いますので、お楽しみに!

■終わりに

富山市内は、かつての神通川の蛇行跡に、富岩運河を開削した時の発生土を使って新しい市街地を造成し、一石二鳥を目指した開発が、昭和初期にかけて行われました。そんな街に今も残る美しい水辺空間と、楽しい閘門をめぐるインフラツーリズムクルージング。とても楽しい経験ができる場所でした。

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