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●近江ガチャコンの旅(その3:学校建築の最高傑作・豊郷小学校旧校舎を訪ねて~GWプチ旅②)

近江鉄道に乗って楽しんだGW期間中のプチ旅。JR草津線貴生川駅から、1時間毎に走る電車に乗り、水口町、日野町で降りて1時間のプチ散策を楽しみました。次の1時間散策で向かった場所は、豊郷町です。
(前回の記事はこちら)

■豊郷町とは・・

近江鉄道日野駅から約40分電車に揺られて、北東に走ったところにあります。近江鉄道は、五箇荘あたりから中山道に沿って走ります。愛知川宿と高宮宿の間にある町です。

今昔マップで見た、大正時代と今の豊郷町。中山道沿いにある街村が続く風景は
今とあまり変わっていないかもしれません。

とはいいつつ、この街は実はとてもすごいものがある町です。プチ旅で訪れるのには楽しすぎるスポット、紹介したいと思います。

豊郷駅に到着。新幹線に沿った駅です。
豊郷駅舎は、コミュニティハウスを併設しています。
江州音頭の提灯と踊る人、ツツジがデザインされたマンホール。
駅前を少し歩くと、何だかとても立派な石碑がありました。
くれなゐ園と書かれた立派な石碑のある場所、何でしょうか?
伊藤忠兵衛さんの顕彰碑だそうです。

伊藤忠兵衛さんは、幕末から明治にかけて活躍した商人で、今の伊藤忠商事と丸紅を創業した人です。2つの大手商社は、実は同じルーツで、この豊郷町出身なのですね。このすぐ隣に記念館もあるようです。

旧中山道を少し歩きます。町の花、ツツジがきれいでした。

旧中山道を10分くらい彦根方面に歩くと、現れるのが、今回の目的地。

■豊郷小学校旧校舎へ

「豊郷小学校」と書かれた、とても立派な門柱が現れて・・
そこに現われたのは、とてもおしゃれな古い小学校の建物。

豊郷小学校の旧校舎です。この建物は、学校建築の最高傑作とも呼ばれており、丸紅の専務であった、古川鉄治郎さんが寄進して作られた校舎です。建物の設計者は、近江兄弟社の創始者で教会や学校の建築を多数手がけた、ウィリアム・メレル・ヴォーリズです。

【定礎 紀元2597年】とあります。昭和12年(1937年)の完成です。
この定礎銘が秀逸なので、転記します。

国運の進展は普通教育の振興に候つ所頗る大なり。是を以て教育の義務制は8箇年に延長せられんとす。然れども農村の現状それに応ずる設備の完きを期すること甚だ困難なるを覚ゆ。予年少にして郷を出て耳順に垂として縄に其の心を得たり。乃ち茲に父半六の意を招き、狭隘且つ腐朽に近き母校を村中央に移築して之を整備し、以て郷村教育の振興に資し、且つ八郷黨百年の和平を図らんとす。予か微枕幸いに郷人の容るる所となり、去歳3月9日之が工事を起こし、本日定礎式を終わるを得たり。願わくは此の礎上より許多有為の人材輩出し、国運の進展に寄与する所あらんことを。
               昭和12年2月11日 古川鉄治郎誌す

巨額の私財を投じて作られた地域の教育振興のための学校。故郷の繁栄を祈っての寄附でした。

旧校舎の一角は、観光案内所になっていました。

この旧校舎は、今では校舎としての機能は隣接して建てられた新校舎に譲り、今では町民施設となり、自由に見学できます。そんな施設内で何やらイベントをしているようでした。

そんな中で見つけた、豊郷町のカラーマンホール。
校舎の模型が展示されていましたが・・、
学校名は、「桜が丘女子高等学校」となっています・・。

この校舎、実はアニメ「けいおん!」の聖地と呼ばれる場所のようで、当日はファンミーティングのようなものが開催されていて、沢山のアニメ好きの方やコスプレイヤーが集まっていました。私はアニメには疎いのですが・・、皆さんとても熱かったです(笑)。

アニメ好きにはたまらない展示たち。
私はどちらかというと、凝った階段の手すりに目が行っています(笑)。
聖地巡礼、というような感じですね。(私は見たことがないのですが・・)
階下のフロアも、オタ活を楽しまれている方で賑わっていました。
いろんな有名人のサインもありました。
今度は校舎には行ってみます。
子育て支援センターとして、現役で活躍中です。
子どもを連れてくるのが楽しくなりそうな施設です。
古い「コンケロルポンプ」と言う名のポンプ。貴重なもののようです。
学校内に展示されています。
残されている黒板もとても素晴らしい。
それで、これが有名な階段手すりにある、うさぎとかめのレリーフ。
よーい、どん!
あ、途中でうさぎが就寝・・。
そんな物語がいつも繰り広げられる階段。
そして、最後にはかめが勝つ!

これは、ヴォーリズさんなりの、子供たちに向けたメッセージのような気がします。そして戦前にこんな素晴らしい建築物を子供たちのために残した古川鉄治郎さんの思いも感じられる気がします。

電話もレトロなものが保存されています。
展示室に掲げられた、工事記録。
「ペンキ塗り残して完成」とか、かなり克明に記録されています。
古川鉄治郎さんのことを記した書物。
伊藤忠商事に丁稚奉公で働き始めて、専務まで上り詰めた生涯が書かれています。
ボイラー室は、建築設備遺産に認定されているのですね。
こういうものも貴重だと思います。
古い図面のレリーフが展示されていました。
【本校舎設計圖 V.M.VORIES & CO. ARCHITECTS, OMI HACHIMAN, JAPAN】
小学生が作ったのでしょうか。こちらは伊藤忠兵衛さんを紹介しています。
こちらの写真は、丸紅の新入社員研修での訪問風景のようです。
創業の地に建つ、過去の偉人が建てた立派な校舎は、
社員の皆さんにとっても誇らしい場所に思えるでしょう。
いやー、味わい深い廊下です。
今も現役で町立図書館として使われている部分。
こういう使われ方をしているのが、とても嬉しいです。
平成3年度卒業生の卒業制作。学校って感じがして好きです。
こちらは、古川鉄治郎さんの銅像。
駅に戻る途中にも、うさぎとかめが。
豊郷町はうさぎとかめの町と言っても良いでしょう。
豊郷駅に戻りました。実はここにも、うさぎとかめが。

■終わりに

豊郷町は、伊藤忠商事と丸紅の創業の地。その故郷を大事にする古き経営者が、私費で地域の子どもたちのために贈った素晴らしすぎる旧校舎。その校舎を創り上げた、ヴォーリズさんの名建築。一時解体される危機がありましたが、地域の皆さんがこの校舎を守りたいという思いにより、今もこの素敵な校舎が公共施設として生き続けています。こんな場所だからこそ、色々な作品の舞台となり、またそれがこの街の魅力を高めることになっている。そんな場所を訪ねるプチ旅、とても楽しかったです。

次回は、彦根に近い、高宮駅と、そこから支線が伸びる、多賀大社前駅の近くを散策しましたので、そちらもお楽しみに!



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