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□ドボクスキー 台湾を行く□④台湾土木遺産を巡る(前編:烏山頭・台南水道へ)

日本の土木学会と台湾をはじめとする海外の土木学会との交流を目的とする会合等に出席するために台湾を訪問しました。前回までで、台北市内を回り、行事関係などを無事に終えることができました。(前回の記事はこちら)

台湾訪問の後半戦は、自分の目で自ら土木遺産を回り、その魅力を伝えるというミッション。それを実現すべく、台湾各地を巡りましたので、その模様をお伝えしたいと思います。

■台北から嘉義に向かう

夜の移動となった、台湾高鉄の台北駅。
19:46発の新幹線で嘉義へ向かいます。
どことなく日本の新幹線によく似た車内。座席に書いてある内容も
結構似ている感じがしますね。
嘉義駅に到着。オレンジ色が基調の新幹線。

■阿里山森林鉄道の北門駅

その翌日、市内にある阿里山森林鉄道のかつての始発駅である、北門駅を訪れました。

宿泊していたホテルの近くに、こんな踏切が。森林鉄道と交差します。
今も森林鉄道の車両基地など、拠点がある場所です。
敷地内には、昔の車両を展示する公園が。
戦前に作られた森林鉄道なので、いろんなものが保存されているようです。
そして、北門駅。現役の観光鉄道と保存車両が同居する感じの場所。
北門駅の駅舎は文化財として現在修復工事中。
こちらは、阿里山森林鉄道と、日本の黒部峡谷鉄道の
姉妹提携を記念した石碑。同じトロッコ観光列車という感じですね。
北門駅のプラットホーム。こちらはしっかり現役です。
今の客車とプラットホーム。
今回はこの観光鉄道に乗りませんが、次回は絶対乗りたいものです。
車庫が鉄道公園として開放されています。
蒸気機関車。急勾配を走るためか、独特な構造をしています。
小さな転車台。
貨車と客車を混載している列車。
昔の林鉄時代を思い浮かべることができます。
こちらはディーゼル機関車。
戦後、1953年の新三菱重工業 三原車輛製作所 の刻印がありました。

■嘉義市内を行く

市内中心部にある、嘉義農業の野球選手の銅像。
ここから戦前、甲子園に出場したエピソードが有名です。
こちらは、台鉄の嘉義駅。戦前に建てられた駅舎が健在です。
駅舎のなかもなかなか素晴らしい佇まい。
今も現役の駅として使われているところも良いです。

■烏山頭ダムへ

嘉義市内から車を走らせ、烏山頭ダムへ。ここは戦前に活躍した日本の土木技師、八田與一さんが生涯を捧げた現場です。

烏山頭ダムの水を灌漑で使う部分の全体図。
中央にある入り組んだダム湖があるのが、烏山頭ダムです。
八田與一の銅像に向かう場所。
銅像は、ダムを眺めることのできる場所に建ちます。
銅像の後ろには、八田與一夫妻のお墓が。
作業用に活躍した機関車が保存されています。
烏山頭ダムの堤体。雄大で美しい場所です。
このダムができたことにより、下流側にある
嘉南平原が枯れた大地から豊かな場所に生まれ変わりました。
八田與一さんが建てた、犠牲者の慰霊碑。
日本人・台湾人など立場の関係なく、亡くなった順に記されています。
こちらは、今は現役でなくなった放水口。
八田與一さんの奥さんが夫を亡くした悲しみに身を投じた場所です。
こちらは、圧力配管の開閉バルブに使われていた金物。
水構造物は、一つ一つがとても大きいのも特徴かと。
こちらは、余水吐の水路の上に架かっていた吊り橋。
ダム完成当初から供用されていたようです。
余水吐の水路。こちらも結構巨大な水路です。
こちらは、八田與一さんの住居を再現したエリア。
あいにく八田邸は改装工事中でした。

■旧・台南水道を歩く

次に訪れたのは、旧・台南水道です。戦前の台湾の各都市の近代上水道を建設するのに尽力した土木技師、浜野弥四郎氏が活躍した土木施設です。

なかなか美しい博物館がある公園ができています。
こちらは、水道施設が軍事上重要なため、防護するための施設。
銃を構えた兵士がかつては睨みをきかせていました。
こちらが、浜野弥四郎氏の銅像。実は、像は復元品です。
戦時中に無くなり、しばらく台座しかありませんでした。
台座に記載された碑文は、大正時代のもの。
結構アツい碑文です。
こちらは、浜野弥四郎さんと、水道の父といわれる、バルトンさん。
と、わたし(笑)。
こちらは、急速濾過池ですが、戦後に増強された部分です。
今はもう使われていない施設ですが。
地下の濾過池につながる階段。降りることはできません。
ガラス越しに垣間見える施設。
続いて戦前からの急速濾過池へ。
館内に展示されている、バルトン、浜野弥四郎と
八田與一さん。八田さんは浜野さんの後輩に当たります。
浜野弥四郎さんの履歴書。
意外とこんな展示が多かったりする場所です。
ここは微生物を培養する部屋。
上水道関係の研究施設と言っても良い場所です。
こちらは浜野さんの像の台座から上を復元中の様子。
そして、こちらは急速濾過装置が並ぶエリア。
なかなか美しい光景です。
こちらは、苛性ソーダを混入する場所。
ARなどを駆使して当時の様子が見られる展示が。
こちらは、ポンプ室です。無骨なレンガ造り。
一部発電設備があり、右のレンガの部分に煙突が建っていました。
かつては煙突と建屋の間に煙を送るダクトがありました。
ポンプ室の中身。きれいに整備されています。
発電所があったところは、カフェに変身しています。
煙突に伸びるダクトの跡のレンガが印象的。
こちらは、浄水池エリア。ポンプでこちらの上に送水され、
貯められた水が、自然流下で台南市内に給水される仕組みでした。
給水池エリアへは、こんな急階段を登ります。
上った先に、こんなに素晴らしい構造物が。
この場所に水が貯められていました。

浜野弥四郎さんは、戦前の台湾各都市の近代上水道を整備することに尽力しました。やはりものすごい偉業を達成されたのだ、と現地に訪れて心動かされるものがありました。

■終わりに

嘉義市内や、烏山頭ダム、旧台南水道など、とても興味深い土木遺産を巡りました。どの施設にも、歴史的構造物があり、それを一部うまく保存・活用しようという動きがあることがわかりました。戦前にこれらの構造物が作られ、それらの一部が残っているのは、何とも言えず素晴らしいものだと思います。

次回は、台湾の南のほうの、高雄や屛東方面をご案内します。

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