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【読書感想文】幸せは自分で生み出せる『自分を勇気づけるアドラー心理学7つの知恵』

アドラー心理学、というものをご存じでしょうか。

以前、アドラー心理学にまつわる『嫌われる勇気』という本を読んだことがあるのですが、これがめちゃくちゃ痛快で、人によってはグッサリ心に刺さります。悪い意味で。

アドラー心理学で「人はいつだって幸せになれる」と考える哲人と、「そんなわけあるか!」とそれに真っ向から噛みつく青年の対話形式の内容なのですが、とにかくずっと2人がケンカしてるんです。

例えば青年が、
「カフェで店員がコーヒーを溢したら、ついカッとなって怒鳴ってしまった。こんなことがあれば、感情的になるのは仕方ない」と哲人に言うと、哲人はこう答えるのです。

「感情はコントロールできるもの。怒鳴るという行為は、あなたがそれが手っ取り早いと選んだ手段にすぎない」と。

どう思われますか?これ。
世の中には色々と、腹の立つこともあるじゃないですか。お母さんが、子供が言うこと聞かないとき、イライラしてつい怒鳴ったり。あるいは同じミスを繰り返した部下に、上司がきつめのお説教をしたり。怒りたくなくてもカッとなる場面なんて、よくあると思います。
けれど、どんな状況でもアドラーは「感情が原因でつい」なんてことはあり得ない、と言います。

「だってもし、子供を怒鳴っている最中に学校の先生から電話がかかってきたら、お母さんは怒りのまま不機嫌な声で応対するでしょうか?部下にお説教中の上司だって、取引先の社長さんから電話がきたら、「いつもお世話になっております~」と、機嫌の良さそうな声になるでしょう?」

私、この例え話がすごく好きで(笑)。
確かにお母さんはちょっと高めの作った声で電話に出るだろうし、終わった瞬間またキッと怒った顔を作って、子供に再び怒り始めるかもしれない。あるいは電話のおかげで気が紛れて、話はあっさり終わるかもしれない。

つまり、怒りは出し入れできる道具で、あなたがそれを選んだにすぎないのだ。と、アドラーは言うのです。

……とはいえ、イラッとしてしまうのは事実だし、それをコントロールするなんて無理に決まってる、そんな余裕があればやってる、と思う人も多いでしょう。

『嫌われる勇気』では大抵、青年に対し「それは全部お前の思い込みだぞ」と言わんばかりにぶった切られてしまいます(青年は毎回言い負かされ、ぐぬぬ、と悔しそうにします)。これでは、人によっては言葉が強くて、受け付けないものもあることでしょう。

しかし、この本ではそんなバッサリしたアドラー心理学を、あなたの心に寄り添うように伝えてくれます。

『自分を勇気づけるアドラー心理学7つの知恵』

著者は岩井俊憲。
上手くいかない、と考えるその思い込みをゆっくりとほどき、考え方の切り替えを受け入れやすくした上で、具体的にはどうすればいいのかまで紹介してくれているのです。「わかる・できる・実戦する」まで導いてくれるこの本は、あとはあなたが自分を、幸福にするかしないかを選択するまでの、そのスタートラインまで連れて行ってくれることでしょう。

「誰でも幸せになれます!」なんて言い方ではうさんくさいですが「勇気があれば、自分の人生はどうとでも変えていける」とこの本は伝えます。そして、その勇気を手にする手段も「こんな簡単でいいの?」と思うくらい手軽に実践できるものを、たくさん用意してくれているのです。

悩みの多い人ほど、この本で肩の荷を軽くしていただけるのではないでしょうか。
せっかくなので、読めば誰でも思考の力を知るこの本から、紹介したいポイントをいくつかお話していきたいと思います。


1.アドラー心理学における重要なキーワード「勇気」

アドラー心理学では、自分を変えるのは意思の力であり、その力を持っているのは「勇気」である、とあります。

人は、変化することに恐れるものです。
例えば、転職を考えているものの「転職先で上手くいくだろうか」、「今のままの方がいいんじゃないか」と、挑戦せずに諦めてしまう場面は容易に想像できます。

変化が必ずしも良い結果をもたらすかはわからない、だから人は恐れてしまう。
良くも悪くも変化をもたらすには、勇気が必要なのです。

では、勇気づけとはなんでしょうか。
よく励ますときなんかに「大丈夫、いけるいける!」と声をかけるイメージがありますね。けれど言われた側からすれば「あなたに何がわかるの!?」と感じたりしませんか。

言う側だって、何か根拠があって言ってるワケではないことが多いです。もちろん、悪意があるわけではないですが、こんな風に無責任に人を追い立てる言葉をかけることが「勇気づけ」ではありません。

勇気づけとは「変化をもたらす勇気を、意思の力で身につける」という技術を指します。
勉強だって、自分からやろうと意思を持つことで飛躍的に身につくように、勇気もこの意思の力で身につけることができるのです。考え方を変えることで勇気は持てるし、先ほどの怒りなど感情のコントロールをするテクニックだって、この本には書かれています。

勇気づけの例:思い込みから脱出するテクニック「目的論」

例えば、学校や職場で悪口を言われたことで、落ちこんでしまった人がいるとしましょう。

悪口を言われた→だから落ちこんでいるのだ、という考え方は「原因論」と言われます。当然のことのように見えますが、これが本当に真実であれば悪口を言われた人は全員、すべからく落ちこまなければなりません。でなければ、理に適っていませんから。

しかし実際には、悪口に対して腹を立てる人もいれば、全く気にしていない人もいます。悪口にユーモアで返せてしまう人だっているでしょう。このように、悪口に対し色んな結果が生まれるのは、その人の「思考のクセ」に他ならないのです。

アドラー心理学では「目的論」でこれを説明しています。
つまり、“(無意識に)あなたが落ちこむという選択をして、その理由として悪口を言われたことを挙げているだけにすぎないのだ”とアドラーは言うのです。

イヤイヤ、繊細なんだから仕方ないでしょ!と思いたくなりますが、どうでしょう。
アドラーを信じて勇気を持ち「変えられるのなら変えたい」と意識して変わる努力をする人と、「絶対無理!」と諦めてしまう人であれば、どちらが幸せになれる考え方だと思いますか。

思考のクセ、と気づくことで(クセなので直すには時間がかかりますが)そのことを理解した上で、意図的かつ建設的に考え方を変えれば、変化させることができます。そして、このことに気づかせてくれるのが、この本にある「勇気づけ」なのです。

※間違っても「落ちこまなくて良いんだよ」とか「落ちこむな!思い込みだ!」と他者が理解もせず声をかけることが、勇気づけではありません!
あくまでも、自分の意思で変えようとする勇気が変化をもたらす、その勇気を持つための気づきを与えることこそ勇気づけ、というお話です。念のため。

2.楽観とは「いいことが起こるだろう」ではない

さて、勇気が変化をもたらす力を持っている、という話をしました。
そうはいっても変化の先に、良い結果が待っていればいいものの、悪い結果だって起こるかもしれない。その不安に対して、どう考えていけば良いのか。これは勇気を持つ上で大事なポイントです。

結論から言えば、楽観主義でいることです。

楽観とは「ものごとの成りゆきをすべてよいほうに考えて心配しないこと。将来に明るい見通しをもつこと。」と辞書には書かれています。こう見ると、悪い事なんて起こるはずがないよ~、とぽやぽやしている人がイメージできますが、そうではありません。

楽観主義は、良い結果も悪い結果も、総じて起こり得るものと考えます。
ただ、悪い結果が起きても、悲観的にならないこと。ここが大事なポイントなのです。

先ほどの、転職について悩む人について考えてみましょう。

職場の人間関係が合わなくて転職したが、転職先が今度はハイレベル過ぎて合わなかった、としたら、どうしましょうか。
ここで「ああ、やっぱり上手くいかなかった。転職なんてするんじゃなかった」と考えるのが、悲観的。「レベルが合わないなら、自分のスキルアップのチャンスではないか」と考えるのが、楽観的です。

転職先が何一つ悩みのない、パーフェクトな職場であることが良い結果だとしたら、その可能性は限りなく低く、転職という勇気を持つことは難しいでしょう。

しかし、良い結果でなかったとして、それを「悪い結果だ」と落ちこむではなく、次を考えられる人であれば?

スキルアップや、次の転職を考える材料にするなど、建設的な思考をすれば、良い結果というハードルはそもそも低くなり、勇気はずっと持ちやすくなるのではないでしょうか。

間違った選択肢だと感じたとき、別の選択肢で補えばいい、と考えられる人ならば。
考え方一つで結果の善し悪しは変えられる、とも言えます。

つまり端的に言えば、楽観主義とは「なんとかなる」と考えるのではなく「なんとかする」と考えること、と言えるでしょう。

3.良くも悪くも思い込みは力を持っている

ここまで勇気の持つ力の話をしてきましたが、うすぼんやりとでも伝わっていたら嬉しいです。勇気が持てたら人生イージーモードになるぜ!と語りたいだけ語って、じゃあ具体的にどうすれば良いんだよ、を話さないのも具合が悪いので、こちらについても紹介していきます。

具体的には
①勇気づけの方法
②不安を解消する方法
③前向きになるテクニック
④心を安らげるテクニック
⑤目標へのプロセスで勇気づける
⑥感情のコントロール法
⑦みじめさの克服法
⑧勇気づけをスムーズに始めるために
などなど……。

この本には勇気づけの具体的な手法が、これでもかというほど事細かに載っています。全部は紹介しきれないので、⑤の「目標へのプロセスで勇気づける」という項目についてじっくりお話します。

先ほど、楽観主義の話をしました。良いことも悪いことも受け入れ、その結果に対し自分はどうしたいか・どうするかを考えることだ、という話です。ここでは悪い結果に対し、悲観的にならないようにするための「勇気くじき」への気づきを紹介します。

「勇気くじき」とは

ポジティブに考えられれば勇気は持ちやすいものの、人は変化を恐れるために、勇気を持たない選択肢の方が得意なものです。そのため、勇気をくじくような考え方は簡単で手に取りやすく、思考のクセに落とし込みやすい。これが「勇気くじき」です。

もうちょっと簡潔にいきましょう。
勇気づけの手段を超ざっくりとまとめると
①理想を口に出す
②理想をより具体的にイメージする
③理想になりきる
となるのですが、大体の人がこれに対し「でも……」とちょっと抵抗を見せます。
ハイ!それが!勇気くじきの考え!

20年かけ、成功者500人について徹底的に研究された内容が、まとめられた本があります。本の中でも紹介されていますが、『思考は現実化する』という本です。それによれば「人は思考した人間になる」とのこと。

理想を思い浮かべ、その解像度を高めながら思考すると、その通りに振る舞えるようになるとのこと。つまり、反対に「できないできない」と思いながら生きていると、その通りできない人になってしまうのでしょう。これは、飛べないノミの話にも似ています。

変化したい、と願いながら、すぐには叶わずとも繰り返し続けることで、人は変化します。そのポジティブな思考のクセがつけば、良い方向にもう変わってしまえるのですから。というわけで、勇気くじきを引き起こす「3大禁句」をまとめます。

勇気をくじく3大禁句
①もうダメだ(決めつけ)
②いっつもこう(誇張)
③もういい(諦め)

……こうしてみると、勉強が苦手な生徒の口癖あるあるに見えてきますね。
俺勉強できないから!とか、いっつもこれくらいしか点数とれないし、とか。まずは、これらの思考を辞めるところから始めましょう。

もうダメだ、は散々書いてきたとおり思い込みです。自分がやらない、という選択をした後で、できないからという理由を後付けしただけに過ぎません。決めつけてしまった原因を探しましょう。いつもこうだ、という誇張も、事実を正しく認識すればそうではないとわかるはず。自分や、周りの環境を見直すことで、自分の意思を押さえつけている理由に気づくことが、勇気の第一歩となります。

最後に

とにかく優しい言葉で、たくさんの気づきと勇気づけのテクニックを与えてくれるこの本。面白いところが多すぎて文章がまとまらず、とんでもない長さになってしまいました。ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

しかしこれだけの感想文を述べても、この本のあなたへのエールが1/10も届けられた気がしないのが歯痒い。
人間関係に悩んだり、自分のことが好きになれないなど、さまざまな悩みを抱える人が、少しでも興味を持ってこの本を読んでくださることを願うばかりです。

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