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パイナップル・ブランデー蒸溜所見学

引き続き、名護パイナップルパーク内にできたパイナップル・ブランデーの蒸溜所=ラ・ピーニャ・ディスティラリーの見学報告です!

前回からの記事の続きとなります。
パイナップル・ウォッカ!? お酒の「熟成」と「キャッシュ」の関係|チャーリー / ウイスキー日記|note


■ラ・ピーニャ・ディスティラリーに突入です!

入園してからの遊園地的なナゴパイナップルパークの雰囲気とは一変。シックで、超お洒落な蒸溜所が、パイナップルパークの最後に現れます!

シックな感じなので、入口はちょっと地味と言えば地味。
頭の中が「♪パッパパ パッパパ パイナーップルゥ♪」のチビっ子や、ファミリー層は、通り過ぎてしまうかも知れません。

中に入ると、お洒落なショップ(お酒・スイーツなど)や、貯蔵樽が見えるようになっていて、奥側には蒸溜器=スチルが鎮座しています!
 
 

■ピカピカのポットスチル!

恰好良いですねー!
ぱっと見のスチルの形状からは「なんかバーボンのスチルに似ているなー」という感じです。

スチルの素材はステンレスだそうで、すべての蒸溜を終えるとAcl.97%にも達するとのこと。その高アルコールの原液で、パイナップル・ウォッカをつくったりするわけですね。
また、現状としては、ミドルカットをしていないようで、蒸溜に回した発酵液(=パイナップル・ワイン)の全量を回収しているとのことでした。
 
ウイスキー製造と比べると、
・銅はどこかで使わないの?
・Alc.95%を超えちゃって大丈夫?
・ミドルカットしないの?
とか思ったりしますが、あくまでここは、パイナップル・ブランデー蒸溜所! 
余計な口は挟まずに、スタッフさんの丁寧な説明に耳を傾けます。

 私のしつこい質問にお付き合いいただいたスタッフさんは、正確かつ丁寧な受け答えで、製造スタッフさんかな?と思いましたが、蒸溜所内の販売の責任者の方でした!

この蒸溜所の説明係に任命されたのは、まずか1ケ月前の7月からだそうです。
すでに、那覇市のバーテンダーの方などの来場があり、そこで色々な質問を受け、「わからないことは必死に工場長に聞いて勉強している」とのことでした。
ただ、とても1ケ月とは思えない知識と受け答え。素晴らしかったです!

ちなみに、こちらの蒸溜所の工場長は、パイナップル・ワイン醸造所の工場長が兼任して務めているそうです。


■仕込みのサイズ感

1回の蒸溜に投入する発酵液は400Lとのこと。
これはウイスキーの蒸溜と比べると、とても少ない仕込み量です。
 
スコットランドのウイスキー蒸溜所では、慣例的にスチルのサイズは最低で2,000Lと決まっていました。
(2013年以降は、クラフト蒸溜所向けに2,000L以下のサイズも認められるようになってきています。)
日本のクラフト蒸溜所の先駆けである、ベンチャーウイスキー・秩父蒸溜所が、2008年に蒸溜を開始した際に使いはじめたポットスチルのサイズも、2,000Lです。
 
この2,000Lというのは一つの根拠があって、ウイスキーの場合、発酵液2,000Lを蒸溜に回すと、蒸溜後に熟成用にとれる蒸溜液は、約200Lとなります。(投入量の1/10)
200Lは、通常のバーボン樽の容量そのものですので、1回の蒸溜で、1樽分のウイスキー原酒がとれる計算となります。

ラ・ピーニャ・ディスティラリーの場合、400Lの投入量なので、ウイスキーで考えれば、40Lの蒸溜液の回収となります。そのため、何回分かの蒸溜液を足し合わせてから、樽詰めしていると思われます。
(ただ、先ほど述べましたが、ミドルカットなしの全量回収なので、1回の蒸溜で、40L以上は蒸溜液を回収できるとは思います。)
 
「仕込み量が少ない=希少=貴重」ということになりますね! 熟成後が楽しみです。


■そして、木樽熟成!

「アメリカンホワイトオークのバレルサイズ(=約200L)の新樽のみを使用している」との説明でした。理由としては、「色がつきやすい=熟成が進みやすい」からとのこと。

ウイスキーと同様に、他のお酒で一回使用した樽での熟成も試したそうですが、熟成感がイマイチだったそうです。
(ちなみに、ウイスキーの場合、バーボン以外では、新樽を使うことはほとんどありません。木材のフレーバーがつきすぎるからです。そのため、バーボンやシェリーの熟成で使用した樽を、再活用するケースがほとんどです。)

ちなみに、こちらの蒸溜所で使用される樽は、「アメリカで作られた新樽」であるものの、一度ヨーロッパの樽会社へ販売され、それが未使用の新樽のまま日本の樽会社へと回って、最終的にこの蒸溜所へ納品されてくるとのことでした。
 
個人的には、熟成によっても南国感を出せられたら面白いと思うので、「ヤシの木」を焦がした木片を、ウッドチップとして熟成させる木樽の中に入れたら面白いのではないかなーと思いました。ジャストアイデアですが。。
(ウットチップ的な熟成方法は、スコッチウイスキーでは禁止されています。バーボンウイスキーではOK。もともと、ワインの熟成で用いられるようになった手法のようです。)


■丁寧なスタッフさんの説明によると

本来は、もうちょっと先(3年間の熟成を終えたパイナップル・ブランデーの発売日である1年半後くらい?)での蒸溜所見学の開始を予定していたが、「契約農家からパイナップル購入」は約束しちゃっているし、コロナでパイナップルパークへの来場者が減り、パイナップルの使用量が落ちれば、「パイナップルを余らせて腐らせてしまう可能性」もある。

蒸溜を推し進めることで、「農家さんにパイナップル代金を支払う」こともできるし、パイナップルを蒸溜すれば「長持ち&熟成」もできる、ということで、早めの蒸溜所の見学開始となったとのことでした。
 
また、ワインの醸造免許を取得する時は、本当に労力と時間がかかったが、それに比べると蒸溜免許は比較的すぐに取れたともおっしゃっていました。
これには、すでにパイナップル・ワインの製造・販売実績があったことも、蒸溜免許取得に際して大きかったと思います。

お酒の免許については、国税庁のHPに認可日の一覧が掲載されています。
このラ・ピーニャ・ディスティラリーを確認してみると、

・令和2年10月22日=ブランデー製造免許、スピリッツ製造免許

・令和3年7月7日=ウイスキー製造免許

を取得しています。
 
それにしても、ブームとしてのウイスキー発想からの蒸溜酒づくり参入でなく、あくまでパイナップル発想からのワインづくり、そしてパイナップル・ブランデーづくり(その前にパイナップル・ウォッカ)という、パイナップル愛が半端じゃないですね!
 
でも、その「パイナップル」ですが余らせるどころか、季節性がある上、フルーツとしての販売、ジュース・ワインとしての販売も人気で、社内で「果汁の取り扱い」となっているそうです!


■パイナップル・ウォッカの味わい

パイナップル・ブランデーは販売していない(3年経過していない)ため、パイナップル・ウォッカを購入。
沖縄の思い出に想いを馳せながら、自宅で味わってみました!

 ・色:無色透明(ウォッカだし当たり前か・・・)
・粘性:強くはない
・香り:強烈なアルコールの香り。うっすらとパイナップル!
・味:Alc.58%のパンチのあるインパクト。ほんのりと南国フルーツのフレーバー。
・余韻:アルコールの強い刺激が、長く残る

 正直、Alc.58%はパンチ力ありすぎ! 胸がカーっとなります。そのため、1対1になるように加水して、もう一度テイスティング。

すっきりとしているが(ウォッカだし当たり前か・・・)、そこまでパイナップルのフレーバーは感じず。
先ほどのストレートで、胸がカーっ!となっているので、フレーバーを感じ取れていない可能性ありますが。。

最後に、1対1に加水したものに、氷を入れて冷やし、濃いめの水割りにしてみます。

キリっとしまった味わいとなり、「すっきりとした南国のフレーバー」を、今までよりも感じとれる。

正直、Alc.58%はかなり強いため、水やソーダで「割る」のがオススメです!

そして、「パイナップルのフレーバー」を思いっきり楽しむには、パイナップル・ワインの方がわかりやすいと思います。

そもそもウォッカは、無味無臭に近いお酒のためカクテルベースに使われることも多いです。このパイナップル・ウォッカで、「スクリュードライバー」や「ブラディー・メアリー」を試してみれば、新しい発見があるかも知れませんね。
今度、試してみよ。

あと、個人的には、購入したウォッカのバッチNo.001が嬉しいですね!


■ラ・ピーニャ・ディスティラリーに行ってみて

「パイナップルソング♬が流れまくる」ナゴパイナップルパークと、シックでスタイリッシュなラ・ピーニャ・ディスティラリーとのギャップが半端じゃないです!

家族も楽しめ、お酒好きの大人も楽しめる、ナゴパイナップルパーク。

おすすめです!!

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