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焼酎蔵でグレーンウイスキーづくりをはじめました! 『ニッカ・ザ・グレーン』②

■引き続き、限定品「ニッカ・ザ・グレーン」について解説!

ニッカ・ディスカバリー・シリーズ 『ニッカ・ザ・グレーン』①|チャーリー / ウイスキー日記|note

・ニッカウイスキーがチャレンジングな商品を限定発売する、ニッカ・ディスカバリー・シリーズの第3弾で、2023年3月、「ニッカ・ザ・グレーン」が発売された。

・これは複数のグレーン蒸溜所の原酒をブレンドした「ブレンディッド・グレーンウイスキー」であり、非常に珍しいスペック。

今回はこの構成原酒についてご紹介します!


■4つのグレーン蒸溜所の原酒をブレンド!

ニッカ・ザ・グレーンは、4つの蒸溜所のグレーンウイスキーをブレンドしています。
その蒸溜所は以下の通りです。

◇ニッカウイスキー グレーンウイスキー蒸溜所

①    ニッカ・宮城峡蒸溜所

②    旧・ニッカ 西宮蒸溜所(1999年に宮城峡へカフェスチルを移設)

③    さつま司蒸溜蔵(もともと本格焼酎をつくる蔵)

④    ニッカウイスキー門司工場(もともと甲類焼酎・乙類焼酎・甲乙混和焼酎をつくる工場)

宮城峡蒸溜所と旧・西宮蒸溜所は、ウイスキーに詳しい方ならグレーン蒸溜所としてご存じの方も多いと思います。

しかし、焼酎蔵である「さつま司」「門司工場」で、「グレーンウイスキー」をつくっていることを知っていた方は、なかなかいらっしゃらないのではないでしょうか?

私も今回のこの商品が発売されるまで、知りませんでした。


■焼酎蔵とウイスキーづくり

「ウイスキー」と「焼酎」は、同じ蒸溜酒なので、かなり製法が似ています。

麦焼酎とウイスキーの違いは?|チャーリー / ウイスキー日記|note

・ウイスキーでは、蒸溜器の素材にを使う(場合が多い)。

・蒸溜よりずっと前の糖化工程で、「ウイスキーは麦芽酵素を使う」、「焼酎は麹菌を使う」。

このような違いはあれど、基本的な製法は似ているので、焼酎をつくっている焼酎工場が「ウイスキー製造免許」を取得さえできれば、(仕上がるウイスキーのクオリティは置いておいて)グレーンウイスキーの製造へは、比較的参入しやすいと言えます。

そのため、最近では、焼酎をつくっていた蔵元が、ウイスキー製造免許を取得して、ウイスキーづくりに新規参入するケースが多いです。

焼酎の本場は九州なので、特に焼酎蔵の多い九州で「ウイスキーづくりへの参入」が続いています!


■九州の焼酎蔵のウイスキーづくりへの参入

ジャパニーズウイスキー・イヤーブック2023で、「九州の焼酎蔵」の「ウイスキーづくりへの参入」を確認してみると、代表的なもので以下のケースがあります。

(鹿児島県)小正醸造 → 嘉之助蒸溜所
(鹿児島県)西酒造  → 御岳蒸溜所
(鹿児島県)天星酒造 → 菱田蒸溜所
(宮崎県) 黒木本店 → 尾鈴山蒸溜所

ジャパニーズウイスキー・イヤーブック2023 
発行:ウイスキー文化研究所

また、直近では薩摩酒造が、鹿児島県枕崎市に九州最南端の「火の神蒸溜所」の解説を発表しました。

薩󠄀摩酒造『火の神蒸溜所』がモルトウイスキーを製造開始|薩摩酒造株式会社のプレスリリース (prtimes.jp)

この『焼酎蔵→ウイスキーづくり参入」の流れは、まだまだ続きそうですね!


■焼酎蔵・さつま司蒸溜蔵のウイスキー製造免許の取得

実は、国税局のHPで、「ウイスキーの製造免許の取得企業」を確認できます。

そして、この国税庁のHPを確認すると、「ニッカ・ザ・グレーン」にブレンドされる「グレーンウイスキー」をつくった、さつま司蒸溜蔵の製造免許取得年は、2018年です。

◇さつま司蒸溜蔵(平成30年=2018年 ウイスキー製造免許取得)
酒類等製造免許の新規取得者名等一覧(平成30年分)(ウイスキー) | 酒類の免許|国税庁 (nta.go.jp)

同じ2018年には焼酎メーカーだけでなく、メジャーな日本酒メーカーも、ウイスキー製造免許を取得し、生産を開始しています。

◇2018年 ウイスキー製造免許取得
・金龍(日本酒メーカー) → 遊佐蒸溜所
・黄桜(日本酒メーカー) → 丹波蒸溜所

どちらもすでに3年以上熟成のシングルモルト「遊佐」「丹波」を発売していて、人気となっています!


■なかなか面白い国税庁HP

「すぐには製造を開始しないけど、事前に免許を申請しておく」「試験蒸溜」などというケースもありますが、この国税局のHPを見ると、どの企業が、どこでウイスキーづくりを計画しているのかがわかるので、なかなか興味深いです!

全国分 | 酒類の免許|国税庁 (nta.go.jp)

ちなみに、平成28年=2016年頃から、ウイスキー製造免許の取得企業数が、一気に増えています。

◇2016年 ウイスキー製造免許取得
・本坊酒造  津貫蒸溜所
・ガイヤフロー 静岡蒸溜所
・堅展実業 厚岸蒸溜所
・長濱浪漫ビール 長濱蒸溜所

今の日本のクラフトウイスキー業界を牽引している名前ばかりですね!
ここから、現在の「クラフトウイスキー蒸溜所の開設ブーム」に繋がるわけです。

ちなみに2016年には、こんなところもウイスキー免許を取得しています。

◇2016年 ウイスキー製造免許取得
・サントリー 大隅酒造

これはさつま司と同様に、本格焼酎蔵がウイスキー製造免許を取った事例です。

鹿児島県の焼酎蔵・大隅酒造は、2014年にサントリーのグループ会社となっていて、現在は本格芋焼酎「大隅」、本格麦焼酎「大隅」を中心に、様々な焼酎やスピリッツ製品を製造しています。

大隅酒造株式会社|サントリー (suntory.co.jp)

グレーンウイスキーも試験的に製造しているようで、以前にエッセンス・オブ・サントリー・シリーズで、ライス・ウイスキーが発売された時には、その原酒を大隅酒造が生産していました。

THE ESSENCE of SUNTORY WHISKY サントリー

サントリーHPより


■最後に

今回は、「焼酎蔵でも製造免許を取得して、ウイスキーづくりに参入しているよ」という話から、どんどん脇道へ逸れてしまいました。

次回は、今一度、ニッカ・ザ・グレーンに使われている4工場の原酒について、ご紹介したいと思います!

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