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麦焼酎とウイスキーの違いは?

■麦焼酎とウイスキーの違いとは?

前回の記事で、概念的には「麦焼酎を木樽熟成させるとウイスキーになる」と書きましたが、具体的には、この「麦焼酎」と「ウイスキー」には、どのような違いがあるのでしょうか?

ウイスキーは製造工程が、とっても長いお酒!|チャーリー / ウイスキー日記|note


■麦焼酎とウイスキーの最大の違いとは?

原材料が大麦で一緒な、麦焼酎とモルトウイスキー。その最大の違いは、、、
です。

「当たり前じゃないか!」とツッコミが聞こえてきそうですが、「焼酎は透明」「ウイスキーは琥珀色」。これが見た目からもわかる、一番の違いです。
そして、そのウイスキーの琥珀色は「木樽熟成させた際の木材の色」と、以前に記事で書きました。

ウイスキー 琥珀色の正体|チャーリー / ウイスキー日記|note

よって、「木樽熟成をさせているか、させていないか」=「色が茶色いか、茶色くないか?」が、麦焼酎とウイスキーとを区別する最大のポイントなのです。


■色以外の違いは?

麦焼酎とウイスキーとの「色」以外の大きな違いとしては、蒸溜機(形状・素材)、蒸溜方法(蒸溜回数・アルコール度数)、糖化酵素(麦芽の酵素か麹菌か)などがあります。
特に糖化酵素の違いは大きく、酒づくりにおいて「東洋は麹の文化」、「西洋は麦芽の文化」といわれる由縁です。(この糖化酵素のお話は、知れば知るほど面白いのですが、それはまた別途で記事にしたいと思います。)


■「茶色いか、茶色くないか?」がひとり歩き!

この「焼酎は木樽熟成させていないから透明」、「ウイスキーは木樽熟成させているから琥珀色」というのは、基本的には正しく、法律で「焼酎は透明」と定義されています。
具体的には『酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達』によって、焼酎の着色の度合いは「実際の透視度0.008%以内」とする規定が存在します。つまり、焼酎とウイスキーを区別するにあたり「色味」を、その判断基準とすることに法律で決まっているのです。

第48条 申告義務等の承継|国税庁 (nta.go.jp)
13 木製の容器に貯蔵した焼酎等を移出する場合の承認の取扱い
(1) 着色度             に記載があります。

ただ、この「焼酎は透明」は、過去には正しかったのですが、焼酎の作り方も多様化してくる中で、現状にはそぐわないケースが発生してきています。


■焼酎も木樽熟成させているケースは多い

日本でもウイスキーが定着し、「洋樽」が酒づくりに使われるようになると、焼酎でも「木樽熟成」させた商品が誕生するようになりました。
例えば、1957年発売、日本初の樽熟成焼酎である小正醸造の樫樽熟成・米焼酎「メローコヅル」や、樽熟成のプレミアム芋焼酎として有名な西酒造の「天使の誘惑」、広告でもよく見かける薩摩酒造の麦焼酎「神の河」などがあります。

ただ、先ほどの「焼酎の色に関する法規制」がありますので、木樽熟成により「色のつきすぎた焼酎」はNGです。では、色がつきすぎた場合は、どうするのでしょうか?

■木樽の琥珀色がついてしまった焼酎はどうするの?

答え①

「無色透明の焼酎原酒で薄めたり、ろ過して色を抜くという作業を行っている」そうです。
「え、せっかく熟成によってついた色を抜くの!?」という感じですよね。法律で決まっているからしょうがないみたいで、上記の「メローコヅル」「天使の誘惑」「神の河」といった『薄く茶色がかった焼酎』はこのタイプのようです。

答え②

「風味に影響のない食物繊維を少量加え、リキュールのカテゴリーで販売」しているそうです。
これも、色が濃すぎて法律上では「焼酎」としては販売できない上での苦肉の策です。そして、法律上の「焼酎」に固執せず、「木樽熟成させた美味しいお酒」を提供するという、過去にはあまりなかった最近のスタイルのようです。
有名なところでは、薩摩酒造の「スリーピーオウル」「スリーピーベア」があります。スリーピーオウルは、本格麦焼酎をホワイトオーク樽で12年熟成させたもの、スリーピーベアは本格芋焼酎をホワイトオーク樽で22年熟成させたものです。私が、初めてスリーピーオウルを飲んだ時には、ウイスキー的な熟成した味わいに驚きました。

SLEEPY OWL - 薩摩酒造株式会社 (satsuma.co.jp)
SLEEPY BEAR - 薩摩酒造株式会社 (satsuma.co.jp)

そもそも、木樽熟成させた焼酎が、海外で「ウイスキー」として販売されているケースもあるそうなので、「麦焼酎とウイスキーの違い」、そして「焼酎の色味」については、なかなか根深い問題があるみたいです。


■麦焼酎とウイスキーの違い 結論

麦焼酎とウイスキーの最大の違いは「色=木樽熟成」です。
しかし、第二次大戦後、焼酎づくりにも洋樽が使われるようになり、新しい味わいが生まれました。一方で、焼酎の法律上の色規制は、ずっと変わらないままです。
「色がつきすぎた焼酎」は、そのままでは販売できず、「薄めたり」「ろ過して色を抜いてみたり」「食物繊維を入れてみたり」しないといけないのが現状です。

せっかく、丹精込めて、しっかりと木樽熟成された超熟の本格焼酎。変に手を加えずに、そのまま飲めるようになれば嬉しいなと思います。

今回は、ウイスキー日記ではなく、焼酎日記になってしまいました・・・


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