原材料を深掘り! 『ニッカ・ザ・グレーン』⑩
■「ニッカ・ザ・グレーン」について解説する10回目です。
「普通は最初にやるでしょ?」という話ですが、今回はニッカ・ザ・グレーンに使われているグレーンウイスキー原酒の原材料についてご紹介します。
■7つの原酒の原材料は?
カフェモルト・カフェグレーンについては、以前に解説しました。
カフェモルト / カフェグレーンを深掘り! 『ニッカ・ザ・グレーン』④|チャーリー / ウイスキー日記|note
残る、さつま司蒸溜蔵と門司工場でつくられている
「未発芽大麦グレーン」
「コーン&ライ・グレーン」
について、原材料の観点から解説します。
■コーン&ライ・グレーン
門司工場でつくられている「コーン&ライ・グレーン」ですが、簡単にいうと原材料的にはバーボンと一緒です。
※バーボンであるためには「コーンを51%以上使用」することが必須。
※ライ麦でなく、小麦などを使用する商品もありますが、2番目の原材料はライ麦であることがほとんど。(ライ麦=独特のスパイシーな味わい)
※六条大麦麦芽は、「糖化材」としての役割として使用。(麦芽を入れないとアルコールのもととなる糖分が生成されないからです。)
※このバーボンにおける原材料の配合比率をマッシュビルといいます。
正確なマッシュビルの書かれた記事を見つけられていませんが、「コーンとライの比率は一般的なバーボンとほぼ同じ※1」とのこと。
※1※2 ※3 ウイスキーガロアAPRIL2023 Vol.37 P45(ウイスキー文化研究所発行)
そして、バーボンは、基本的にはバーボン用の2種のスチル(ビアスチルとダブラー)をつかって蒸溜されます。
(ビアスチルに通してから、ダブラーに通します。形式は違いますが、どちらも連続指式蒸溜機です。)
ただ、バーボンでも、ウッドフォードリザーブなど、ポットスチルによる単式蒸溜を行っている蒸溜所もあります。
さつま司蒸溜蔵では、焼酎用の単式蒸溜器で蒸溜しているので、蒸溜された原酒はもはや「バーボンそのもの」ですね。
さらに熟成です。
バーボンは、「内面を焦がしたオークの新樽」の使用が義務づけられています。これによりバーボン独特のバニラ香が強くつきます。
さつま司蒸溜蔵のコーン&ライ・グレーンの熟成では「ホワイトオークの新樽も使う※2」とのこと。
原材料、蒸溜、熟成のどれをとっても、もはやバーボン。
バーボンと名乗れないには、「アメリカ国内で生産していないから」というレベルかと。
とても面白い原酒ですね。
(ちなみに、こういったバーボン風・ライウイスキー風のウイスキー原酒づくりは、実験的に日本国内の他の蒸溜所でも行われて来ましたし、新興のクラフト蒸溜所でもチャレンジしている事例があります。)
■未発芽大麦グレーン
さつま司蒸溜蔵・門司工場のどちらでもつくられているのが、「大麦グレーン原酒」です。
最初この「大麦グレーン原酒」という記事を目にした時に
と思い、少し混乱しました。
稲富博士のスコッチノート 第103章 バランタイン・ウイスキーの話―その4.ストラスクライド蒸溜所 (ballantines.ne.jp)
ただ、よく調べてみると「丸麦の状態※3」と書いてあり、よくよく調べてみると「未発芽大麦」を使用しているとのこと。
ここで重要なのは『麦芽』ではないということです。
麦「芽」は、麦を発「芽」させたものです。
お酒づくりにおいて、(発芽をさせていない)麦と、(発芽をさせた)麦芽は、明確に分けて考えます。
なぜなら、麦芽は発芽させることによって、糖化酵素を持った特別な存在となるからです。
果実(ブドウetc.)ではなく、穀物(麦・米etc.)からお酒をつくる場合、糖化酵素はマストです。
糖化酵素がないとアルコールのもととなる「糖分」がつくられないので、いくら酵母をぶっ込んだとしてもアルコールはつくられません。
(果実からお酒をつくる場合は、果実にもともと糖分があるので、糖化は不要)
そして、「西洋は麦芽の糖化酵素、東洋は麹菌の糖化酵素」を使用する文化なのです。
話を戻して、「大麦麦芽」ではなく、「未発芽大麦」を使用して、単式蒸溜器で蒸溜したウイスキー。何かに似ていると思いませんか?
これがパッと答えられたら、相当なマニアかと。
未発芽大麦を使用して、単式蒸溜器で蒸溜するウイスキーとしては、アイリッシュ・ウイスキーの1つ『ポットスチル・ウイスキー』が有名です!
アイリッシュ・ウイスキーならではの『ポットスチル・ウイスキー』|チャーリー / ウイスキー日記|note
ポットスチル・ウイスキーは、その独特のオイリーな味わいで、最近人気が上昇しています。
『バスカー』『ジェムソン』etc. アイリッシュ・ウイスキー 爆進中!|チャーリー / ウイスキー日記|note
さて、その未発芽大麦グレーン原酒ですが、門司工場の原酒の味わいは
とのこと。
コーン&ライ・グレーン原酒も、未発芽大麦原酒も味わってみたいものですね!
■ニッカ・ザ・グレーンの正体
原材料の観点から考えると以下のことが言えると思います。
なんかワールドブレンディッド・ウイスキーみたいですね!
この「多様なグレーンウイスキーをブレンドした」というのが、このニッカ・ザ・グレーンという商品の面白いコンセプトなのだと思います。
■やっと
この10回目で、一旦、ニッカ・ザ・グレーンの解説を終了!
やっと、終わったー。
※タイトル写真はデントコーン畑です。
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