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東欧医学部に留学した話

私が東欧医学部に単身乗り込んだのは10代の終わり。もう10年も前の話である。

空港から大学のある街までバンで揺られること3時間。2月の始めで吹雪いていた。耳がちぎれるほど痛い。首都のソフィアから離れていくと、吹雪の中から辛うじて廃墟群を見えた。『なんて灰色な街なんだろう。』そう思ったことを覚えている。

都会に住んでいた私にとって、全てが田舎染みた選択肢のない国で10代を終え20代の初めを生きることは、夢と私の持つはずだった楽しい時間を全て引き換えにしたのではないかという感覚を常に感じさせた。

あれから10年。

私が働く事で人に感謝されて、ありがたい事に平均以上のお金を稼いで人生の選択肢が一気に増えた。あの頃は何かを得ることは何かを失う事ではないかと思っていたけれど、
私は何も失っていなかったよと今なら過去の私に教えてあげることができる。

今の私にはあの廃墟群が何色に映るのだろうか?


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