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読書記録41 『感じるオープンダイアローグ』

森川すいめい
『感じるオープンダイアローグ』
(講談社現代新書 2021年)


精神科医の森川さんが「オープンダイアローグ」との出会いや今まで体験してきた一部分をまとめた書籍。


私自身も人と関わる仕事をしているので参考というか、身に覚えがあることが沢山。
(過去にしてしまった失敗や痛さを振り返る機会になった。とても苦しいし恥ずかしい…笑)

若い時は、何も知らない。

人のために「間違い」を「正そう」としたり、自分自身が「正しい」ことを証明したりしていたように思う。

奢りだし、足りていないし、なんとも未熟だ。人も傷つけた。社会人経験もない、大学卒業したてに一体何ができるというのか。


今は個人が尊重され大事にされる世の中が進んだ。ダイバーシティ(多様性)の名の下にわがままを通すようなことはやはり違うのではないか?と思いつつ、

今ならあの人は「間違い」ではなく、考え方の「違い」であったということも理解できるようになったような気がする。


自分自身、人と関わる中で自分の中で気をつけていることが、

「きちんと話をきくこと」
「フラットに。上から押し付けないこと。」
「自分の考えを伝えること。」
「甘く見ないこと。」である。

そして座右の銘や格言がない私にとって「人にやさしくすればすべてうまくいくのではないか」が唯一座右の名といえばこれだ。


自身の気をつけていることが、オープンダイアローグにおいて気をつけることにもいくつか重なっていた。自身のいろんな経験からの気づきは糧になっていると感じる。


タイムパフォーマンスとコストパフォーマンスを考えると、お金も時間もかけることができなくなってきている社会情勢。(心を癒す、教育、医療などはお金も時間もかけるべきであろうと思う。少なくとも削る部分ではない。)

人と人とが「対話」することがなくなっている。家族間でさえ、いわんや職場をや。だ。


精神的に救いを求める人や身近にそういう人が増えて困っている人などが「即効性」を探しに
この本を取ると「答えが書いてないじゃん」と思うかもしれない。

しかし「対話」とはそういうもの(悪物を必ずサクッとやっつけてくれるヒーロー)ではなく、ずっと個々でやってきたことややっていくことであり、

ゴールでもなく手っ取り早い解決の手段ですらないのかもしれない。


自身の弱さや考えを時間をかけてさらけ出し、わかりあうことは、あたりまえだけど難しいことだ。

オープンダイアローグ実践のためには、お金と時間がかかり明日から一斉になんてできるはずもない。

「できない」「無理」といってしまうことはあまりにも救いがないけれど、この本の中に自分が感じられるヒントのようなもの(=自身が体験したもの)を今一度気をつけていくこと。
実践し続けていくこと。(←少し仰々しいな。)
それが身の回りに「対話」が広がっていくのだと思う。

最近疲れて、話を聞く機会が少なくなった。(それでも他の人よりは多いと思っていることも、慢心ですね。)


もっと余裕をもって人に関わっていこう。そう背中を「推して」くれる本でした。


最後の章である部分は、森川さんの関わった人からの「Q&R」
AnswerでないResponse。
決して答えではなくあくまでも応答であり参考にしてほしいとのこと。


以下は備忘録
1,オープンダイアログの目的地とは自然と対話が起こることなのだ。(p173)

2,傾聴と対話の違い…傾聴とは話し手に耳を傾けること。対話は相手の言葉に耳を傾け、その上で自分の思いや考えも話す。その相互のやりとり。対話には傾聴が必要。(p184)

3,こどもに聞かせたくない話をどうすれば?→話の中心がこどものことではなく。母親がなぜ苦悩や困難を感じているのかを話題にする(p190-191)

4,オープンダイアローグが日本で広がるためには?→医師が保険で話す時間は15分程度。60分話すと経営がいかなくなる。医師がいない中で対話が進められている場合もある。訪問看護の場は使えるかも。運営の工夫(時間の確保。対話的な理解が深いケアマネ、職員さんの存在、予算だて…)ができればどこでもできる。(p200-201)

5,ケロプダス病院「7つの原則」=困難に直面する人たちに接するときの指針→①すぐに助ける②本人に関わりのある人を招く③柔軟かつ機動的に④責務/責任⑤心理的な連続性/積み重ね⑥不確実な状況の中に留まる/寄り添う/すぐ答えに飛びつかない⑦対話主義(p78-79)

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