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「メイドインアビス 深き魂の黎明」


世界は探索し尽くされ、残る謎はオースに深く深く空いた大穴アビス。

アビスを探検する者を探窟家といい、探窟家たちは色分けされた笛を持ち、その色ごとにアビスに潜れる深度が決められています。

その笛の中で最も深くまで潜れるのは白笛。
その白笛を目指す少女リコと、謎の機械人形レグ、そしてアビスで出会ったナナチの物語。

アニメ放送(第一期)の続きのお話であり、
コミックの4巻、5巻のお話です。

容赦のない描写と綿密な世界観が特徴で、私の大好きな漫画/アニメのひとつです。

アビスは上から深界一層、二層と層を重ね、先がわからなぬ程に深く空いた大穴。

危険な生物や地上の常識が通らない現象の数々が、探検の行手を阻みますが、なんといっても探窟家にとって危険なのは上昇負荷。

深く潜れば潜るほど、上に戻ろうとすると上昇負荷という呪いがかかります。

例えば、二層の上昇負荷は吐き気や痺れですが、さらに深い四層では穴という穴からの流血。深さが増すにつれ上へ戻ろうとすると人の形を保っていられなくなってゆきます。

ゆえに、最深部を目指すことは上の層へのお別れと同義であり、ラストダイブといわれています。

今作はそのアビス五層での物語。

ナナチという”成れはて”を作り上げた、白笛の探窟家との対決が描かれています。

この白笛、黎明卿 新しきボンドルド。作中では主人公たちの敵なのですが私は好きで。

どんなに戦闘が激しくなっても冷静沈着、穏やかな口調を崩さず、相手を讃える余裕すらある、そして強い。子どもたちに愛情をそそぐ一方で、非人道的な実験をしている男。

ボンドルドです。(フィギュアが欲しい。)



彼の恐ろしさは二面性のなさです。
優しく愛情に溢れている時と、酷い実験をしている時と、キャラが切り替わるわけではなく、地続きで一つの人格なのです。

そのぞっとする恐ろしさと、アビスの遺物で武装した強さと、やわらかい物腰の組み合わせが、もう堪らないのです。

肘を曲げて枢機へ還す光を撃つ姿、かっこいい。


アビスの魅力をもう少し。

アビスはその層によって特徴が大きく変わります。その見たこともない常識の埒外の風景、どういうこと?って頭がなる生物たち。そしてそこから恵まれる食事。出会いと別れ。

食わず嫌いもあまりなく、好奇心強めの私がこの世界に居たなら、探窟家になっていただろうなと思います。ただ運動神経が絶望的なので、原生生物にさくっと食べられ、すぐにその探窟家人生が終わりそうですが。

人間の哀しさ、愚かさ、恐ろしさ、そして尊さを感じ入ることのできる深みのある作品です。

監督 小島正幸 
制作国 日本
日本公開年 2020
原作者 つくしあきひと

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