映画観賞記録 「ナラタージュ」
*「ナラタージュ」(2017)*
映画配給会社で働く工藤泉(有村架純)には、雨が降る度に思い出す記憶があった。
手にした懐中時計を見つめ思い返すのは、高校時代に孤独から救い出してくれた演劇部の顧問、葉山(松本潤)のこと。
高校卒業を機に疎遠となるが、葉山への想いを断ち切れぬまま大学生活を送っていた泉のもとに、突然葉山から電話がかかってくる。
部員不足の後輩達の卒業公演を手伝うことになり、葉山と再会する泉。
抑え続けてきた気持ちが再び動き始めるのだが・・・。
最初は、葉山先生の身勝手な想い、行動ひとつひとつの行方の分からなさがあり、泉の持つ過去や想いにフォーカスして見ることが出来なかった。
でも、だんだんと、2人の会話やその会話の間にある何かから、2人の関係が見えていった。
会話には”間”というものがあるらしい。
その”間”が、2人のものになっていて、完全にその場にいる2人しか分からない空気感が伝わってきた。
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泉には「小野くん」という彼氏ができた。
彼氏という言葉は、今は普通に使われている言葉だけど、いずれなくなる時が来るのかなと思った。
そのくらい、泉にとっての彼氏は、小野くん以外の誰でも無かった。
泉には、葉山先生という存在もいた。
葉山先生はもちろん彼氏でもないし、泉にとっては、高校時代の信頼していた先生でしかない。
そんな先生は、泉に何度か電話をかけてきた。
その電話によって、泉の想いはろうそくの火のように揺れ動くものとなる。
揺れ動く心は、決して小野くんの前では姿を見せようとしない。
葉山先生の前でのみ、その心は姿を出したのだから。
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泉にとって、葉山先生は存在でしかない。
でもその存在とは、”ただの存在”ではなかったということだけが、映画の最後に分かった。
言葉で表すことは、まずできない。泉は、それを悔しいと思うのだろう。
彼氏でもなければ、不倫相手でもない。
それは、映画の最後、泉が葉山先生の家に足を踏み入れた時、葉山先生の中に足を踏み入れた時に、分かってしまったことだ。
1つ言えるのは、悪いことでは無かったということ。
相手の幸せを願えるくらいに、その時間は色濃かったのだから。
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「こんな思いをすることになるならば、出会わなかった方が良かった」とよく聞くが、この映画に関しては、2人が出会うことは、泉にとっても葉山先生にとっても「良かった」ことになってしまうのが不思議なところである。
それは例え、雨の日の思い出が多かったとしても、雷が響く暗い部屋での思い出が多かったとしても。
私は、最近、雨が好きになってきた。
昔の自分には、雨を好きになる要素など無かったのにどうしていきなり、と思う。雨が好きになる予兆なんてものは無い。急なものだ。
そうやって、どこにあるかも分からない要素を拾い集めた結果が、今になる。
泉は、高校時代に葉山先生と出会ったことを経て、今も映画配当会社で毎日働き、毎日仲間と共に仕事に励んでいる。
もし出会わなければ、雨の日に窓の外を見つめて想うことなんてなかった。
誰にだって、雨を好きになる可能性はあるし、晴れの日を嫌う可能性だってある。
大事なのは、その雨の日が来た時に、何を感じ、誰を想うか、なのではないかと思った。
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