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「ろくでなし子」という生き様

アーティスト「ろくでなし子」さんの存在を初めて知ったのは、私がまだアメリカから帰国したばかりの頃だった。アメリカで知り合った友人がアートに明るく日本のアート事情に詳しい人で、女性器をテーマにした作品を専門にしているアーティストが日本にもいるということを私に教えてくれたのがきっかけだった。私が学生時代を過ごしたニューヨークとサンフランシスコはアメリカでも特にリベラル色が強い町で、物議をかもすようなアート作品や政治性の強い作品、性をテーマにした作品などを画家や作家やミュージシャンが発表することは日常茶飯事のことだった。だから「ろくでなし子」さんが女性器をテーマにしていると聞いても、私はそれをいたって普通のテーマだと思っていた。

逮捕の報道を聞いて

それから数年ほど経ったある日、警察車両に乗せられる「ろくでなし子」さんの姿がテレビに映っているのを見た。彼女が逮捕されたニュースに目を疑った。報道された罪状を聞いた時はさらに驚かされた。アメリカならアーティストたちが当たり前のように表現していることが、同じ先進国であるはずの日本では罪に問われるレベルのことになるのか?

彼女の逮捕は私にとってひとつのカルチャーショックだった。

それから私は「ろくでなし子」さんに一方的な親近感を抱くようになり、彼女の講演会やギャラリーに足繫く通うようになった。アーティストとして彼女が奮闘する姿に、同じ女性として共感したこともあったし、また、彼女の裁判が勝訴に終われば、そこから日本が変わっていくきっかけになるのではないかと、彼女の奮闘に日本の未来を託すような思いもあった。

私は自由な表現を求める日本のアーティストたちを応援する意味も込めて、「ろくでなし子」さんのアート作品について書くことにした。彼女を巡ってはいつも、猥褻だとか裁判だとかの報道が大半を占めていて、彼女の作品を見たことがある人はじつは少ないのではないかと思ったからだ。逮捕と裁判のニュースばかりが先だって、アーティスト本人の作品が紹介されたり評価されたりする機会がほとんどないのが残念でならないと思う。

なのでここからは、彼女の作品について語ってみようと思う。じつは彼女の作品は一見、ポップで軽く見えるけれど、そこにグローバルな政治性が垣間見えるからだ。その強いメッセージ性を知れば、なぜ彼女が女性器というテーマを表現手段として選ぶ必要があったかも分かるはずだ。女性器、つまり「マンコ」でなければ、彼女の伝えたいテーマは完成できない。

私は彼女から許可をもらい、いくつかの作品をカメラに収めた。これから解説を交えて彼女の作品を鑑賞しながらメッセージを探っていこう。

まずは、「ろくでなし子」作品をとくとご覧あれ!

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