声が聞こえる
全日本新人王決定戦。今年はコロナウイルスの影響で無観客試合。かつ選手二人が前日のPCR検査で陽性反応の為二試合中止。
例年通りだと東と西の応援合戦がボクシングファンにとっては冬の風物詩。ガラガラの観客席が悲しい。
実際は取材があるので全部の試合を見れてはいないのだけど個人的ベストバウトはライトフライ級全日本新人王決定戦の狩俣対木村。
試合開始から強烈なワンツーで襲い掛かる狩俣。ロープに木村を詰めてガードの上からでもパンチを叩き込む。このまま終わるのかと思いきや狩俣の隙を狙って高速の連打で打ち返す木村。非常にハイレベル。狩俣はコンビネーションに必ずボディを織り交ぜる。一ラウンド終了間際にボディでガードを下げさせて顔面へ。右アッパーも入れる。パワーで押す分振りが大きく多少雑になるが体力は削っている。
二ラウンドにはクリンチからの離れ際に狩俣が右フックをテンプルに叩き込んで木村がグラつく、決めにかかる狩俣に強烈なカウンターを顎に命中させて今度は逆に狩俣がグラつく。今度は木村が決めにかかるも狩俣は応戦。お互いが全く引かない。グイグイロープに木村を押し込んで連打する狩俣。またもや必ずボディを忘れない。打ち終わりに高速の連打を返す木村。ボディは効いていないのか?いや効いてないはずはない魂が肉体を凌駕している。
僕は試合経過をいつもノートに殴り書きするのだがもしかしたら一瞬で試合が終わるかもしれないと思い試合から目が離せなくなっていた。正確に言うと終わらないで欲しい、この気持ちのぶつかり合いの打ち合いをずっと見続けたい。生で観戦出来ているこの瞬間に心が熱くなった。ロープに詰めてワイルディングに打ちまくる狩俣、ハイガードから打ち終わりの瞬間に高速連打で打ち返す木村。二人の熱戦に正しく手に汗を握った。もし満員の観客がいたら。。。その瞬間大歓声が聞こえた気がした。沢山の客が見えた気がした。二人の崇高な打ち合いが僕の記憶の中の新人王とフラッシュバックさせて重なった。きっと客がいたら応援合戦になっていた。想像が現実を超える。
手に持っていたペットボトルを握り潰している。どっちが勝つのだろうか。
判定にもつれ込んだ決着はドローが一人、一ポイント差で二人、マジョリティデシジョンで狩俣の手が上がった。
打ち合いは互角、いや、もしかしたら正確性では木村が勝っていたかもしれないけどロープに追い込まれていた分見栄えは狩俣だった。もしリング中央で打ち合っていたら木村だったかも。いやフィジカルで狩俣がゴリ押ししていたか。色々な想像が膨らむ。たらればを考えさせる試合は良い試合の基準だ。
狩俣はとにかくボディを必ず打つアッパーも打てる、素晴らしい。木村はガードの意識が高く打ち終わりの高速連打に才能を感じた。
コロナが終わった頃この二人はきっと次の試合で観客を魅了させているはずだ。負けて強くなる選手もいる。そう願いたい。
余談だがホールのスタッフ二人が木村にパンチ力あったら狩俣は倒されていたよと話しているのが聞こえてきた。木村はパンチ力と交換にハンドスピードを得ているんだ。じゃあ狩俣が回転力高めたらあんなに強くパンチを打てない。何も分かってないなと素人ながらに心の中で反抗した(笑)
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