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高校社会科が変わった!「歴史総合」は近代~現代&地理の視点も

高校で実際に使用されている教科書「歴史総合 近代から現代へ」(山川出版社)をめくってみたら、30年前の歴史の教科書とは全然違っていてびっくりしましたのでご紹介します。

2022年度より高校の社会科で学習する内容が変わり、「歴史総合」「地理総合」「公共」が必修科目となりました。そして、この学習指導要領の改定は、従来の社会科のカリキュラムを大きく変更するものらしいのです。

私は、教育関係の仕事をしているわけでも、高校生の子どもがいるわけでもありません。私は、世の中のカラクリがよく分からない、ニュースがよく分からないまま大人になってしまった40代の元理系女子高生です。今、少しづつ学び直しをしています。

今回の学習指導要領の改定前に高校生が社会科でどのように学んでいたかは全く知りません。だから、今回の改定がどのくらいインパクトのあるものか、ピンと来ません。ただ、私が高校生だった約30年前と比べると学習内容が大きく違っているようなので、興味津々。ついに「歴史総合」「地理総合」「公共」の教科書を買っちゃいました。

この記事では、山川出版社「歴史総合 近代から現代へ」(以下、単に"教科書"と記載することがあります)を通じて歴史の学び方を考え直しました。

30年前に高校生だった私の社会科事情

約30年前、私が通っていたのは地方の公立高校普通科で、中堅進学校です。社会科は、1年生は全員「現代社会」。2年生になるときにクラスが理系と文系に別れ、理系クラスに進むと「世界史」「日本史」「地理」のうち1科目選択するようになっていて、私は「世界史」を選択しました。つまり、私は「現代社会」→「世界史」しか履修していません。

しかも、「世界史」の授業が緩かった~。理系クラスだったので、学校側も文系科目には力が入っていなくて、「世界史」の先生は定年間際のおじいちゃん。毎授業、はじめは先生が通勤途中に見つけた花や鳥など自然の話をひとしきりした後、「ここで一句」と自作の俳句を黒板に書き、ようやく授業が始まるのです。「世界史」の授業は、穏やかなお昼寝タイムでしたね~、懐かしい。ただ、「世界史」で出てくる用語は、カタカナが多くて、〇〇何世とか似たようなのが沢山あって、センター試験の受験勉強は苦労しました。当時はひたすら暗記・暗記・暗記・・・。

新科目「歴史総合」の特徴

教科書のまえがきに相当する"歴史総合を学ぶにあたって"によると、新科目「歴史総合」には、以下の3つの特徴があります。

  1. 世界史の中で日本史をとらえる。

  2. おもに近代・現代を扱う。

  3. 現代に生きる私たちの社会のありかたや直面する課題について考えるという観点から、歴史をみる。

「歴史総合」は歴史教育の革命?!

実は、ネットでこの教科書を見つけたとき、"近代から現代へ"というサブタイトルを見て、"古代~中世"という別冊があるのではないかと思い検索してしまったのですが、無いんです。それもそのはず。そもそも「歴史総合」の授業の学習範囲は近代から現代なのですね。これには大いにおどろきました。

届いた教科書を見てみると、タイトルの通り、第I部はいきなり「近代化と私たち」と題して、16世紀=織田信長の時代あたりから始まっています。

歴史の授業と言えば、古代から始まり、中世、近代の順に習い、現代に近づくにつれスピードが上がり、最終的には「自分でよく読んでおくように」ってイメージでした。子どもなりに、自分が生きている"今"に直接つながる近代から現代の方が大事そうなのに、大昔のことばかり時間をかけて勉強して意味あるのかなぁ?と疑問に思っていました。

必修科目での学習範囲が近代から現代に絞られていることは、30年前の高校生の常識からすると、革命的とまで思ってしまいますが、大袈裟でしょうか。

それから、わたしが高校生のときは、歴史を履修するにしても「日本史」か「世界史」を選択しなければならず、それぞれ全く別個にとらえられていました。しかし、そもそも日本は世界の一部であり、今では外国との関わりなしには存続できないわけですから、"世界史から日本史をとらえる"「歴史総合」の方が圧倒的にしっくりきます。

新課程で学ぶ高校生がうらやましい・・・。

歴史の教科書に地形図や雨温図

この教科書、実際に手に取って私が最も驚いたのは、表紙をめくった見開きページ。なんと、「世界の自然」と題して地形図が大きく描かれています。地形図という呼び方が正確かどうか不安ですが(なにせ、高校で地理を習っていないので・・・)、平地は緑、山は茶色で、海は深いほど濃い水色になっているあの地図です。

そして、この地図の左下には、「世界の気候区分」と題して、熱帯雨林気候は赤、温暖湿潤気候は黄緑、ツンドラ気候は青、というふうに14の気候区分に色分けされた世界地図が載っています。さらにその右側には各気候区分に該当する代表的な都市の雨温図とその地域の森林の高さのイメージ図。

えーー!これって地理で習うことじゃないの???

"空間的"に歴史を捉えてみる

教科書のまえがきから抜粋します。

様々な歴史上のできごとを関連づけて、現在の問題はなぜ生まれてきたのか、その道筋をたどることができるような地図を頭の中につくることが大切である。時間的・空間的広がりをもつそのような地図がいったんできてくると、新聞やテレビなどから日々入ってくる情報が自然にその地図上に位置づけられ、生き生きとした知識として根付くようになる。

「歴史総合 近代から現代へ」(山川出版社)

"時間的・空間的" 。私は歴史の勉強で"空間"を意識したことがあっただろうか。例えば、シルクロードが描かれた地図を見るとき、単なる紙の上の線として捉えていました。道中の地形、気候、生えている植物、生息している生き物、人々の暮らし・・・そういうことを立体的な空間として自発的に想像したことはほとんどなかったように思います。だけど、日本が島国という地形であるからこそ鎖国という政策が可能だったということは習って理解できています。

これからは、歴史上のできごとを単に時系列に覚えるのではなく、地図を傍らに"空間的"に捉しながら、どうしてこのできごとがあったのだろうか、と自ら想像しみる。そうすることで歴史の理解が深まり、現代とのつながりをより的確に認識できるようになるように思います。

年表は歴史を"時間"として認識するのに役立ち、地図は歴史を"空間"として認識しするのに役立つ。だから歴史の教科書に地図なのか。なるほどな。私にとっては目から鱗の考え方でした。歴史×地理(地図)で歴史の勉強が面白くなりそうです。

新課程では「歴史総合」も「地理総合」も必修。両方学べるなんて、やっぱり高校生が心底うらやましい・・・

参考コンテンツ

山川出版社HP 

教育図書NEWS 
「新学習指導要領で高校社会科は大きく変わる」鼎談・鈴木寛×倉石寛×大野新【前編】
 ※このコンテンツでは新必修科目「公共」「歴史総合」「地理総合」それぞれについて専門家の見解を知ることができます。

voicy  「宮路秀作のやっぱり地理が好き」
 ※この放送では、予備校の地理の先生が、"地理と歴史は自動車の両輪のようなもの"と語っています。


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