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ネイティブ東京人(日記)

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「東京の人は冷たい」と言いますが、東京生まれ育ちの人はそれを言わない。これは外からやってきた人間から見た日記です。筆者は千葉県出身です。 過去から現在入り混じった日記のようなも…
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記事一覧

ハイジは都会で鬱になり、クララは山村で歩き出す、私は都市で暮らし歩き出す

ふと見かけて手にした本が、私の思う、時間や自己の捉え方に示唆を与えてくれた。

その本は内山節・著『子どもたちの時間-山村から教育をみる』岩波書店,1996.
前半部では、フランスの山村の子どもたちを観察して、こどもと社会との関わりを記していた。
山村のこどもたちは、暮らしの中に小さな仕事を持ち、その仕事の責任範囲は年齢が上がるとともに大人たちから委譲される。最終的に、大人たちの姿から、将来の自分

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エンパイアステイトビルも、エッフェル塔もいらない。〜目的のない人生と都市を彷徨うおとぎ話〜

「お金を使い切る前に死ぬはずだった」

Netflixを契約している。
が、このところ忙しく、ほとんど見ていなかった。
マイリストには、マッチ度97%と表示される私好みで、まだ見ていない作品が溜まっていく。
見たら絶対好きと分かっている作品を見るのは面倒くさい気持ちが勝る性分で、でも何か見たいなあ、というぽっかり時間の空いた一人の夜、ふと「フランス」と検索に入れた。

すると出てきたのが、
「フレ

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「エラ呼吸」を思い出した私は「備えよ、生き延びよ、風よ吹け」と歌う2023年を過ごしている

「エラ呼吸」を思い出した私は「備えよ、生き延びよ、風よ吹け」と歌う2023年を過ごしている

ミュージカル映画が好きである。
ここ十数年だと「La La Land」「In the Hights」「ticktick…Boom」はベスト3で、不動の第一位はフレッド・アステア「バンドワゴン」。
もっというと、劇的なストーリーというより、日常的ななんてことないストーリーで、え?ここで?踊って歌い出す?あれ、この作品ってミュージカルっていってなかったよね?みたいな1曲だけ唐突に入ってくるような作品も

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”予期せぬ自分”への着地を続けよう〜Goodbye,my empty life〜

2011年6月、生まれて初めて、ニューヨークのブロードウェイでミュージカル鑑賞をした。

その時、ブロードウェイミュージカルマニアの友人が追っかけていた俳優の主演作”Catch me if you can”(2002年制作された映画があり、映画ではレオナルド・ディカプリオが主演)が上映中で、友人の手ほどきでお得チケットを入手し、ほぼ最前列の席で、夢中になって見たのだった。

ストーリーは、両親の離

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2022年の「もう一つの椅子」

2022年の「もう一つの椅子」

いろいろな人と、話をしていく中で、

もう一つの椅子は「社会化されない、居場所の創出」が、一貫したテーマだと定まった。

「社会化されない」の定義は、
経済的に価値がある・ないとか、
正しい・正しくない、
を外から与えられた一つの物差しで自分を測らず、
自分の”ありのまま”を真ん中に、自分の内なる世界を捉えること。

それを軸に研究や表現を模索していく。

一度気がついてしまった自分の本質の道を行

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あかるい正月

あかるい正月

8年前の年末のこと、私は地元のハローワークにいた。
その年の春の終わりに軽いうつ病と書かれた診断書を片手に仕事をやめた。
心も体も弱っていた私は、1ヶ月の間は食べる時とお風呂に入る時と心療内科に通院する時以外は布団の中にいた。

心療内科では、毎日家事でできたことに丸をつける表をもらって帰った。
そして「ただ生活する」ということをまず取り戻した。
病院に通い始める前日までも当たり前のようにやってい

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祖母からの贈り物

祖母からの贈り物

2021年1月おわり、祖母99歳危篤からの、その後持ち直したとの連絡が千葉実家からあった。2ヶ月ほど意識が薄れたり戻ったりを繰り返す入院状態が続いていたが、3月のお彼岸の時期に亡くなったとの連絡があった。

1月の終わりの連絡が来る数日前、ちょうど「今年、誕生日が来たら100歳になるのかあ」と感慨深く祖母のことを思い出しながら、私というものを作り上げるにあたって、祖母の存在は大きかったなあと改めて

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インド人に「あなたよく知ってるね」と感心された(かもしれない)話

インド人に「あなたよく知ってるね」と感心された(かもしれない)話

東京都江戸川区にある東京メトロ東西線・西葛西は、リトル・インディアと呼ばれている。

東西線の通勤時間帯に電車にのると、西葛西から行徳にかけて、確かにインドの方と思しき人がけっこう乗降している印象はある。

だが、西葛西駅を降り立っても、明白に「インド人街」といった感じではない。

マンションが多く、コンビニや銀行、食事処、塾やクリニックが入居した雑居ビルが並ぶ、典型的な東京都内のベットタウンの駅

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ここではないどこかで、ここにいること〜荻上直子監督『めがね』(2007)感想(ネタバレあり)

荻上直子監督の映画『めがね』に出てくるもたいまさこ演じる「サクラさん」は、福の神かもしれない、とふと思った。

「めがね」あらすじ
『めがね』は、小林聡美演じるタエコという一人の女性が、何もない小さな島の民宿ハマダに滞在しながら、ただそこで過ごすお話。

この島でやることはたった一つ。「たそがれる」こと。

民宿のオーナーのユージ(光石研)、島の高校教師ハルナ(市川美日子)、春になると島にやってき

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団地の入り口には、喫茶店がありました

団地の入り口には、喫茶店がありました

実家のある団地の入り口には、喫茶店がありました(今は無い)。

場末な感じの。年季入ったマンガが並んでるかんじの。

ちょっと奥にある漫画には埃かぶってた。

新聞広げるてタバコもくもくの常連さんと、草野球チームのガタイのいい青年たちがガヤガヤやってくる。

そこは、「珈琲とカレーの店」でした。

中学の頃は、土曜の昼とか母と一緒にたまにいってたんですが、高校のとき、期末テストの帰り、制服来たまん

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さよなら、東京生活:引越しへのリアクションで大事な価値観を知る

さよなら、東京生活:引越しへのリアクションで大事な価値観を知る

関西方面に引越して4ヶ月たちましたが、まだ東京生活を振り返る記事。

2019年10月に引越し先が決まり、12月に引越しした。

引っ越しを伝えた際の友人たちの最初の反応は「驚く」、「寂しがる」、「前々からいつか引っ越すって知ってたから、淡々と受け止める」の3つに分かれた。

そのあとに、「なぜ?」「仕事は?」と聞いてくる人が大半。

仕事はリモートワークで、そのまま東京の仕事を続けると伝えると、

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浮遊する東京タワーと地べたの東京タワー

最近よく聞くラジオから『東京タワー』というタイトルの曲がなんども流れている。nakamura emiさんというシンガーソングライターの曲だ。

最初は、おしゃれな曲だなあと聞き流していたが、独特なラップ混じりの歌い方などに耳をこらすと、歌詞がなかなかしんどそうであった。

成長が成熟した大都市としての東京は、地縁が強く周囲に監視されがちな地方出身者にとって、群衆の中で、軽やかな記号になれる街だった

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『東京ラブストーリー』(1991年ドラマ)のミカン考〜故郷をつかみ損ねる物語と「新しい女」の未来

柴門ふみ原作で人気となった1991年のテレビドラマ『東京ラブストーリー』が、フジテレビの配信FODで、2020年春に現代版として、「29 年ぶりに再ドラマ化!」というニュースで、当時、胸を焦がしてみていた世代がざわついていた。

かくいう私も、当時小学六年生、少し大人の世界を覗ける月9の恋愛ドラマ、毎週楽しみにていた。

【以下、ネタバレあり】

ドラマでは、帰国子女で、物怖じしない性格でキャリア

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始まりの日:知らないまちで親しみのある記号を見つけるとホッとする

始まりの日:知らないまちで親しみのある記号を見つけるとホッとする

引っ越し初日、手荷物のスーツケースをガラガラと引きながら、引っ越し先の最寄駅に降り立った。

スーツケースのバランスをとるのに、下を向いて歩いていたら、目に入った「片手袋」。

*「片手袋」とは、道端に片方だけ落ちてしまった手袋のことで、石井公二さんという方が、2004年より写真に収め、集め、その種類の分類をしている。その集大成は『片手袋研究入門:小さな落としものから読み解く都市と人』(2019年

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