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詩集

79
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#宇宙

彗星ロケット

彗星ロケット

星になる

ぼくはここから

0になる

ぽうっと光った魂は

やさしい強さで昇ってく

せらせら

せらせら

美しく歌う野原には

幾千の蛍たちが

集まって

ぼくへ光を託してゆく

響きわたる

循環の音

眠たくなるような

高い音

呼ばれた少女は

呼ばれた方へ

だれも触れない

星のもとへ

美しいまま

夜の谷間へ

茶埜子尋子

銀河のかげろう

銀河のかげろう

きみのなみだが

言霊のように

降り注いで

どうすれば生きれるかなんて

分からなくなってしまった

見たこともない

宇宙の意味を考えて

裸足のまま飛び降りる

蜃気楼はただ

美しいだけ

遠くを見つめて

傷になる

夜の星は

ぼくのものではない

そして

だれのものでも

なにも知らないのは

穢れた少女が抱えた

深い傷のような

凄惨なこと

美しさのなかで

化石になった

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夜窓の詩

夜窓の詩

元いた場所に

帰ろう

虚宿行きの列車に乗ろう

窓を開けて

ぼくに身を任せて

瞳をとじれば

満天の星々が迎えにきているよ

ようやく君に見せることができる

銀河へつづく夜を

車掌さんも

お客さんも

いないんだ

ぼくときみだけ

風と星だけ

それだけで宇宙はできる

ポッペンを割ったような

弾ける音がぼくらを包みながら

遠い遠い夜へ

元いた場所に帰ろう

あたりまえだった

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泡沫の詩

泡沫の詩

きみの背中をひらいて

そうすれば空は見えるだろうか

繋がれてしまえばよかった

きみの小指に

ささやかに佇む残響が

首すじを切り裂いてゆく

泡のような

霧よりも薄い

ぼくときみ

僕らを囲むものも

何もないんだよ

さわやかな音とともに弾けても

宇宙よりも細やかな何かへ

空よりもひろい何かへ

飛び交いながら

変わってゆくよ

茶埜子尋子

星クジラ

星クジラ

夜を導く

無数の星たちが

水平線に消えてゆく

クジラの背中のような

世界地図にぎりしめて

夜明けの歌を

歌ってる

私の髪も

あげるね

ネックレスも

ブレスレットも

身もこころも

波のおとを

指でなぞってさ

いい気持ちがしたら

星クジラ

海の心臓を

月にかざして

透けて見えたら

星クジラ

月明かりの夜

クジラの夢

茶埜子尋子

星空珈琲店

星空珈琲店

夜にたなびく空のように

わたしの心揺らめいて

悲しみが星になるの

さらさら

望遠鏡

一億光年先の未来を

映しだして

このままわたし

消えてゆくの

こだまする

宇宙の淵へ

なにものにもなれなかった

星の子たち

光よ わたしもいくね

満天の星空

熱い珈琲を淹れるかな

茶埜子尋子

宇宙数学的交通安全運動

宇宙数学的交通安全運動

人はみな

理不尽に傷つけられたり

自分勝手に悲しくなったり

嬉しくなったり

楽しくなったりする

それはみんな

みんな

人間の傲慢な感情

この世界は

一方通行の綺麗な

道でできている

閑静な街並みと騒騒しい妄想で

美しく栄えている

要するに

私とあなたは

交わることはなければ

遭遇することもない

そんな数学的な世界にいるのに

わざわざ念力を使ってまで

交わろう

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