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家計調査の中の「ぎょうざ」

2022年2月8日に、2021年の家計調査が総務省統計局から発表されます。2021年の家計調査では「ぎょうざ」について大きな変動が起こっていて、発表と同時に大きな波紋を生み出すことになると思いますが、その前に家計調査の中で「ぎょうざ」がどのように計算されているのかを整理しておきますので、ご参考ください。

なお、ここでは家計調査の対象や方法については統計局のホームページに掲載されていますので、そちらをご参考いただくこととして、ここでは深く取り上げません。県庁所在地以外にどの市町村が調査されているのか、何人が調査対象になっているのか、対象の方がどんな家計簿を記入しているのか、など公開されています。

家計調査では「ぎょうざ」をどのように分類しているか

一言で伝えるのが難しいので、図にしてみました。

上記の中で、赤・緑・青で塗ったものが、餃子の種類です。赤が常温以上の調理済みの餃子、緑色が冷蔵餃子、青色が冷凍餃子です。
餃子は、調理食品項目に中の「ぎょうざ」「冷凍調理食品」と、外食の「中華食」のいずれかにカウントされています。それぞれに含まれる内容を、餃子都市である宇都宮市・浜松市・宮崎市・京都市の推移グラフとともに整理しました。

「ぎょうざ」に含まれる餃子

これまで浜松市と宇都宮市が「ぎょうざ」の支出金額で競い合ってきたものがこの項目です。

重要な要件としては
「冷凍餃子は含まれない」
「飲食店で購入したものは含まれない」
ということです。

スーパーで販売されている調理済みの餃子や冷蔵餃子、「餃子お持ち帰り専門店」で購入した冷蔵餃子が、この項目に入ります。例えば、宮崎県を中心に展開している「ぎょうざの丸岡」で購入したものは、この分類に入ります。
もし無人販売店で販売されているものが「冷蔵」餃子であればこの項目にカウントされますが、「冷凍」餃子であればカウントされません。

2000年以降、宇都宮市が圧倒的に強いのですが、2007年に政令指定都市となって2008年から登場した浜松市とデッドヒートが始まった頃から、段々と減少傾向となってきています。一方で、宮崎市が昨年すごいライジングをしてきており、2021年に1位が期待されております。

「ぎょうざ」支出金額 年次推移
縦軸:円
※「家計調査結果」(総務省統計局)が公表している 「二人以上の世帯 都道府県庁所在地別」を元に、焼き餃子協会にて作成

「冷凍調理食品」に含まれる餃子

スーパーで販売されている冷凍餃子は、この「冷凍調理食品」に入ります。この数年で急激に増えている餃子の無人販売や自販機で購入した冷凍餃子も、「冷凍調理食品」です。
例外は、餃子を外食提供しているお店で購入した冷凍餃子は、外食の「中華食」に入るとのことで、この「冷凍調理食品」ではカウントされていないそうです。
なお、餃子以外の冷凍食品も多いはずですが、「冷凍調理食品」の中で冷凍餃子が占める割合は不明です(統計局にも問い合わせましたが、冷凍餃子だけを取り出すことは不可能であるとのことでした)。

2000年以降を見ると、全国的に2倍近くなっています。浜松市はもとより冷凍食品の支出金額が多く、この数年は踊り場にあるような感じですが、宇都宮市や宮崎市は2020年に急激に伸びています。ここから、宇都宮市と宮崎市は冷凍餃子の需要がなんらかの事情で増え、浜松市は元から冷凍餃子の購入が多かったのでは、と推測しています。

「冷凍調理食品」支出金額 年次推移
縦軸:円
※「家計調査結果」(総務省統計局)が公表している 「二人以上の世帯 都道府県庁所在地別」を元に、焼き餃子協会にて作成

ちなみに、冷凍調理食品の支出金額上位には新潟市や北陸3都市、鳥取市や高知市、佐賀市などが出てきます。これらの都市の餃子文化も、調べてみると面白いかもしれません。特に、富山や福井はぎょうざ購入頻度に上位に入ってくることが多いので。

「中華食」に含まれる餃子

基本的に飲食店で購入された餃子は全て「中華食」としてカウントされています。例えば餃子の王将で生餃子をお持ち帰りした場合や、餃子の満洲で冷凍餃子を購入した場合は、「ぎょうざ」ではなく「中華食」としてカウントされることになります。
ここもやはり餃子以外の料理が多く含まれているので、このうち餃子が占める割合は不明です。

餃子の王将発祥の地である京都市は2004年以降は支出金額減少傾向で、その他の地域はおおよそ横ばい。ただし、2020年は全体的に減少しているのですが、浜松市は2020年で増加しています。浜松市は2020年に「ぎょうざ」の支出金額も増えているので、餃子をはじめとする中華食が食べたくなる何かがあったのかもしれません。

「中華食」支出金額 年次推移
縦軸:円
※「家計調査結果」(総務省統計局)が公表している 「二人以上の世帯 都道府県庁所在地別」を元に、焼き餃子協会にて作成

あと、宮崎市は全国平均よりもかなり中華食支出が低いのが面白いですね。宮崎市は外食支出も全国平均より低いレベルですが、中華食はさらに低い。宮崎市内では餃子を食べられるお店が少ないというのも、その理由かもしれません。

支出金額と購入頻度

家計調査には、支出金額だけでなく「購入頻度」という項目があるのは、以前にもご紹介したことがあります。

以下は、2020年の家計調査から、横軸=支出金額、縦軸=購入頻度でマッピングしたものですが、宮崎市は頭ひとつ抜けて購入頻度が高い。浜松市や宇都宮市と同じぐらいの金額を使っているのに購入頻度が多いということは、「一度に購入する金額が少ない」ということが言えます。その背景は、宮崎市の餃子は安いからという説と、新鮮な餃子が美味しいから買ってすぐに食べてしまうからという説があります。

※「家計調査結果」(総務省統計局)が公表している 2020年の「二人以上の世帯 都道府県庁所在地別」を元に、焼き餃子協会にて作成

これも2000年以降の推移をグラフにしました。ぎょうざ購入頻度は、宮崎市が上位にいることが多いのですが、前橋市や大津市、福井市が上位に入ることが多いです。

「ぎょうざ」購入頻度 年次推移
縦軸:購入頻度(100世帯あたり)
※「家計調査結果」(総務省統計局)が公表している 「二人以上の世帯 都道府県庁所在地別」を元に、焼き餃子協会にて作成

ちなみに2008年の購入頻度が大きく落ち込んでいるのは、毒ギョーザ事件の影響です。購入頻度だけでなく、前述のぎょうざ支出金額、冷凍調理食品の支出金額も、2008年に落ち込んでいるのが分かります。そこから長い時間をかけて、消費者の信頼回復に努めてこられた関係者の皆様に、感謝を申し上げます。

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本当の餃子市場規模とは

毎年2月に家計調査が発表されると、「宇都宮市と浜松市のぎょうざ購入量争い」という表現が多いのですが、実際のところ家計調査では市全体の「購入量」やまでは分かりません。あくまで分かるのは、市民世帯あたりの支出金額ないし購入頻度までとなります。
もし本当に市内の餃子産業規模を計測するのであれば、

二人以上世帯あたりの支出金額 × 二人以上世帯数 × 平均世帯人員
+ 単身世帯あたりの支出金額 × 単身世帯数
+ 観光客の平均支出金額 × 観光客数

を算出しないといけないと思います。現状は便宜上、家計調査から「支出金額」だけを見て、宇都宮市民と浜松市民は「ぎょうざ」にめっちゃお金を使っていて、餃子愛が強そうということを断片的に見てきたということです。

こうした断片的な情報から、地域活性化の手段として餃子を観光資源としてきた宇都宮市や浜松市は、きっと本当の意味で餃子の市場規模がかなり大きいだろうと思います。

一方で宮崎市は、この数年でかなりライジングして、昨年は宮崎市ぎょうざ協議会も設立してイベントなどを通してぎょうざ消費量を拡大してきました。宮崎市の課題は、宇都宮市や浜松市のように、ぎょうざを観光資源としていくことができるかどうかであり、これからが重要な時期となってきます。

また、都市によって経済規模は違うので、単純に「支出金額」だけを見るのは「餃子愛」を測るには不適当という気持ちがずっとありました。金持ちの餃子代が高くても、別に驚かないですよね。逆に、家計の中で食費が安いのに餃子代が高い人は、餃子愛強そう。ということで、食費と餃子費を比較するグラフを作ってみました。

縦軸:ぎょうざ支出金額/横軸:食料支出金額
※「家計調査結果」(総務省統計局)が公表している 2020年の「二人以上の世帯 都道府県庁所在地別」を元に、焼き餃子協会にて作成

横軸が「食料」支出で、右にあるほど世帯の食費が多い都市です。
縦軸が「ぎょうざ」支出で、上にあるほどぎょうざ費が多い都市となっています。つまり、

【食費の中で、ぎょうざ代が多い】
ぎょうざ係数 = ぎょうざ支出金額 / 食料支出金額 100 (%)

という計算で、左上の方にある都市は、ぎょうざ係数が高い=餃子愛が高い市民性であると言えるのではと考えました。
2020年の「ぎょうざ係数」を見てみると

全国平均 0.222%
宮崎市   0.410%
浜松市   0.399%
宇都宮市  0.387%

となり、宮崎市は全国平均より約2倍のぎょうざ係数で、ぎょうざ係数で見れば宮崎市は2018年と2020年に日本一でした。

また、実は宮崎市より周辺の市町村に餃子の名店が多く、宮崎市以外も調べてみるとぎょうざ係数がもっと高い地域があるかもしれません。家計調査で公開されているのは県庁所在地と政令指定都市のみで、実は県庁所在地以外の家計調査も取られているのですが、公開されていません。これは学術的な理由で申請すれば取得することもできそうなので、いずれ取り寄せて調査してみたいと思います。その際も、市場規模で見れば県庁所在地が圧倒的に強いのでしょうが、市民のぎょうざ係数で見たら、きっと想像と違う結果が見えてくるのではないかと思います。

ということで、明日は2021年の家計調査の発表日です。家計調査は断片的な情報ではありますが、これをきっかけに宇都宮市や浜松市のように餃子産業が成長した都市があるのも事実。さて、2021年はどのような結果になるのでしょうか。結果次第では、世間の餃子の常識も変わるかもしれません。楽しみですね。

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