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C19 車持ちのアルバイト生

木曜日、出勤すると農場の事務所のほうから賑やかな声が聞こえてきました。何事かと思いながら農場の門をくぐると、そこには英語の洪水が広がっていました。近くの職員に尋ねると、この日から学校が夏休みになり、新たに農場でアルバイトをする学生たちがやって来たのだと教えてくれました。私と同じ身分の彼らが、まるで祭りのようにどやどやと入村してきたのです。

一瞬、彼らが私の住んでいる家に来るのかと思いゾッとしましたが、どうやら専用の宿泊施設が用意されているらしく、少し安心しました。しかし、ボスが私を呼び出し、新しい住人がスペインからやってくることを告げました。「Yes, boss」と答えるしかありませんでした。こうして、のんきな一軒家でのハッピーシングルライフは終わりを告げました。

新しい住人について詳しく聞くと、スペインのイギリス大使館の職員の息子だということで、少しは安心しました。大使館関係者の子息なら、それなりに行動や相手に対する敬意の払い方は知っているだろうと思ったからです。しかし、続けてボスは「実は、その男の子は英語があまり話せないんだ」と言いました。えっ?イギリス人なのに英語があまり話せない?驚きましたが、聞けばスペインでの生活が長く、スペイン語が生活のほとんどであり、英語はスペインの高校で習った程度だとのことです。ふむふむ、ということは、もしかして私のほうが英語が上手かも?そんな余裕も出てきました。しかも、私は先に住んでいるということで、先住民の立場です。何かと優位に事が運ぶかもしれないと少しホッとしました。

ボスは「まあ、仲良くやってくれ」と言い、「Yes, Boss」で話は終わりました。翌日から地元のバイト生がtieing treeの作業を担当することになり、「では、今日から私は?」と尋ねると、ボスは「イキオ、お前は車の運転免許を持っているのか?」と聞きました。「持ってます」と答えると、「では、今日からこの車を仕事のときに使いなさい」と言って、車のキーを渡されました。どの車かと尋ねると、指差された先にはなんとオースティン・ミニトラックがありました。やったぁ!なんということでしょう。これでとりあえず車持ちの装備まで整いました。これなら世界中を行けるぞと、ほくそえんでいる自分がいました。

ミニクーパーのトラック仕様について

ミニクーパーは、1959年にイギリスのBMC(British Motor Corporation)によって初めて生産されました。ミニクーパーのトラック仕様、正式には「ミニ ピックアップ」は、その多用途性と独特のデザインで知られています。1961年から1983年にかけて生産されたミニ ピックアップは、全長約3.4メートルとコンパクトながら、荷台部分には意外と多くの荷物を積むことができました。

ミニ ピックアップのデザインは、基本的なミニクーパーのデザインを踏襲しつつ、後部に荷台を追加する形になっています。エンジンは当初848ccのAシリーズエンジンが搭載されており、その後1,000ccエンジンや1,275ccエンジンも搭載されました。トラックとしての耐久性も備え、農場や工場、配達業務など、さまざまなシーンで活躍しました。

ミニ ピックアップは、そのコンパクトなサイズと優れた機動性により、狭い道や都市部でも容易に扱うことができました。また、そのレトロなデザインと愛らしい外観から、多くのファンに愛され、クラシックカーとしても人気があります。今日でも、レストアされたミニ ピックアップはクラシックカーショーやコレクターズアイテムとして高い評価を受けています。

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