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C20 スリリングなイギリスでの初運転

早速、作業の道具を荷台に積み込み、今日が最後となるリンゴの畑に向かいました。右ハンドルで左側通行のイギリスでは、日本と同じように運転できるのが助かります。というのも、ヨーロッパに来た当初、日本とは逆の交通ルールに慣れるのが大変で、道路を横断する際の左右の確認や、バス停でバスを待つときに、つい日本の車の流れを思い出して右往左往してしまいました。左方向に行くバスに乗るには、道路の向こう側のバス停で待たなければならないのですが、日本の感覚で手前のバス停に立ってしまうのです。ヨーロッパでは通行ルールが逆なので、バス停を間違えると大変です。

街中では車が頻繁に通るので、視覚的に右方向か左方向かを確認できるため問題は少ないのですが、田舎のほとんど車が通らないバス停でぼんやり待っていると、いざバスがやってきたときに慌ててしまいます。イギリスではその心配がないので安心です。不思議なことに、日本とイギリスは島国同士で通行方向が同じ左側という共通点があります。

ミニトラックに乗り込み、エンジンをかけて農場から出発しました。道幅が非常に狭いことは以前にも書きましたが、オースティン・ミニにとっては問題ありません。快適に運転していたら、前方にトラクターが現れました。離合する場所が少し先にありそうだったので、そこでやり過ごそうとハンドルを切りましたが、どちら側に寄せれば良いのか一瞬迷ってしまいました。こちらでしばらく暮らしたせいで、いつの間にか左側通行の頭が右側通行の頭に切り替わっていたのです。

正面から大きなトラクターが近づいてくる中、冷や汗がどっと出ました。すんでのところで、イギリス式の交通法規に則った左側の離合スペースに停めることができました。正面から来たトラクターの運転手がにこやかに手を上げ、「グッ、ダイ」と声をかけて通り過ぎました。危ないところでした。一つ間違えば正面衝突になっていたかもしれません。世界中どこでも安全運転を心がけることを私の標語にしようと心に刻みました。

慎重に、まるで初心者のように前方と後方の確認を指差し呼称で行い、しっかりとギアをローに入れて静かに再出発しました。安全運転を心がけることの大切さを改めて実感し、注意深くリンゴの畑に向かいました。

補足情報: イングランドが左側通行である理由
アメリカやヨーロッパのほとんどの国が右側通行なのに対し、イングランドが左側通行であるのには歴史的な背景があります。左側通行の起源は中世に遡ります。当時、人々は馬に乗り、右手で剣を扱うために左側を通行するのが自然でした。これにより、すれ違う人々はお互いの右手が見える位置にあり、突然の攻撃を避けることができました。特に武士や騎士が多い時代には、左側通行が安全とされていました。

イングランドが左側通行を正式に採用したのは、18世紀のことです。1835年には道路交通法が制定され、左側通行が法律で義務付けられました。一方、ナポレオン時代のフランスでは、ナポレオンが右手で剣を持って戦うために、彼の支配下にある国々に右側通行を採用させました。この影響で、ヨーロッパ大陸の多くの国々が右側通行となりました。

アメリカでも、右側通行が広まりました。これは馬車の運転手が左に座り、右手で鞭を扱うため、右側通行が便利だったためです。また、アメリカはヨーロッパの影響を受けて右側通行を採用しました。

このように、イングランドが左側通行を採用したのは歴史的な経緯によるものであり、現代でもその伝統が続いています。他の国々とは異なる通行ルールを持つことは、イングランドの独自性の一つとも言えます。

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