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C08 辿りついた小さな村:フェーバーシェム

翌日の移動はイギリス鉄道で数駅だけ進むことでした。ゆっくり朝食をとり、準備を整えます。所持品が増えたわけではないのに、バックパックは出発時よりもぐっと重くなったように感じます。きっと自分の旅の経験や思い出を詰め込んでいるのでしょう。

農場があるフェーバーシェムというイングランドのいかにも田舎の駅といった風情の小さな駅に降り立ちました。イギリスのローカル線は、ハリーポッターの映画でも見たように、車両にたくさんの乗降用ドアがついています。「なぜこんなにドアが必要なんだろう?」と不思議に思いつつも、これが英国式なのだと理解しました。

下車後、労働許可証を発行してくれた事務所からもらった地図を頼りに、これから働くことになる農場の事務所を目指しました。初夏のイギリスはとても気候がよく、青い空が広がり、ヒバリや野鳥の声が響いています。車がやっとすれ違えるような狭い田舎道を歩くと、小さな店が見えてきました。まずは事務所へ行くのが優先なので、帰りに寄ろうと決めて先へ進みました。

しばらく歩くと、目的の農場の事務所が見えてきました。事務所というよりも大きな農場の母屋のような感じです。入り口周辺をうろうろしていると、中から背の高い、姿勢の良い農夫が出てきました。私は先に「ハロー」と声をかけると、「お前はナカムライキオか?」と聞かれました。すでに私が来ることは知られていたようです。「私はナカムライクオです。どうぞイクオと呼んでください」と答えると、「OK!イキオ。明日からこの農場で働いてもらうけれど、とりあえず今日は住むところに連れて行こう」とのことでした。

お、宿泊所があるのかと少し興奮しました。きっとそこでバイトの学生たちが住み込んでいるのでしょう。これから出会う連中とうまくやっていけるか少し心配でしたが、「東洋から来たイエローモンキーなんて言われたらやってやろうじゃないか」と覚悟を決めました。

ボスが運転するトラックタイプのオースチンミニの助手席に乗り込むと、車内は意外に広く、車高は低いものの居住性はなかなか良かったです。しばらくのんびりしていると、数分で目的地に到着しました。


【補足情報】
イングランドのローカル駅は、大都市の主要駅とは異なる独特の特徴があります。まず、その規模は小さく、多くの場合、駅舎自体が一つの建物で済まされています。駅舎の内部には、チケットカウンターや小さな売店があるだけで、エンターテインメント施設や多数のレストランが並ぶような都会の主要駅とは異なります。

さらに、プラットフォームにはしばしば乗降用のドアがたくさんある独特の列車が停車します。車両ごとに複数のドアがあるため、乗客はそれぞれの目的地に最も近いドアを利用しやすくなっているのが特徴です。各プラットフォームには、利用者が次の列車を待つためのベンチや屋根が備わっており、地域の雰囲気を感じさせます。

また、ローカル駅は周囲の風景や建築に溶け込み、自然や田園風景に囲まれたことが多いです。農村部では、駅から広がる田畑や草原を眺めることができ、歴史的な建物と調和しています。このような駅のデザインは、地域の住民や観光客に親しまれ、イングランドの素朴な魅力を感じさせます。

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