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中小企業金融円滑化法の枠組みが事実上復活するという衝撃!

金融円滑化法(モラトリアム法)について

金融円滑化法とはリーマン・ショックを契機に中小企業の資金繰り支援を目的に2009年12月、当時の亀井静香金融大臣が主導した時限立法の法律です(正式名称は、中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律)。
この法律は、金融機関が融資先に対する返済猶予や金利減免などのリスケジュール(返済条件の緩和)を通して、中小企業の借入金の返済負担を軽減するものであり、実行率は約95%、金融機関はほぼ無条件で企業の要請に応じてきました。
金融円滑化法は二度の期限延長を経て2013年3月末で終了しましたが、その後も実質的に実務面では継続されてきました。

私は、当時も今も、リスケジュールをしているクライエントをご支援していますが、現場での言い方や呼び方は「リスケ」「リスケ先」と言います。他にも、「債務者区分」や「ヨウカン」「ジッパ」など業界用語が多くあるため興味のある方はググってみて下さい。

金融円滑化法は劇薬だった

金融円滑化法は世界的な金融危機から多くの中小企業を救った一方で、企業経営力の脆弱な企業を延命させ、健全な市場の競争メカニズムを阻害しました。その結果、企業の新陳代謝が損なわれ日本経済の停滞を招いた側面があったと考えます。
私は、このように新陳代謝が損なわれた原因は大きく2点挙げられると思います。
①企業経営の怠慢
多くの経営者が必死に本気で再生に取り組んだ事実がありますが、一方で法的にリスケジュールに応じてもらえることがわかった経営者が金融機関に甘え、返済原資を必死に稼ぐ努力を怠ったことです。すなわち、モラル・ハザードを引き起こし、キャッシュフローを十分に確保できないゾンビ企業が増加してしまったことです。
②金融機関の怠慢
リレーションシップ・バンキングとは大義名分であり、実務上は事務的にリスケ支援がこなされていたケースも目の当たりにしてきました。メインバンク(主要行)が果たすべき役割は事務的な金融支援ではなく、本質的な経営改善の支援だったと思います。もちろん本気で経営改善支援に取り組まれた金融機関やバンカーの方が多くいたことも事実です。

金融円滑化法の枠組みが事実上復活

現在、中国武漢を発端とした新型コロナウイルスの感染拡大に加えてサウジアラビアとロシアの交渉決裂による原油ショックが原因で世界経済への負の影響が懸念されています。
2020年3月9日、ニューヨーク証券取引所では株価下落により1日で200兆円が失われ過去にない下げ幅を記録しました。また日経平均株価もこの数週間で軒並み急激に下落しています。2020年2月時点では23,000円代を推移していましたが、3月16日時点では一時17,000円を切り16,000円代までの下落となっています。
株式市場は景気の先行指標として知られており下落した後には実体経済が減速すると言われています。
時系列が一部前後していますが、この緊急事態を重く見た金融庁が2020年3月6日に中小企業の資金繰り支援についてプレスリリースを発表しました。その内容は、中小企業金融円滑化法の枠組みが事実上の復活することを示唆する内容でした。

以下、金融庁ホームページより一部抜粋です。
既往債務について、事業者の状況を丁寧にフォローアップしつつ、元本・金利を含めた返済猶予などの条件変更について、迅速かつ柔軟に対応すること
・新規融資について、各金融機関の緊急融資制度の積極的な実施(担保・保証徴求の弾力化含む)に加え、政策金融機関や信用保証協会によるセーフティネット貸付やセーフティネット保証等の活用も含め、事業者のニーズに迅速かつ適切に対応すること
・こうした事業者に対する支援を迅速かつ適切に実施できる態勢を構築すること
を現場の営業担当者等を含めた金融機関全体に徹底頂きたいと存じます。また、事業者から不必要に多大な書類等を徴求することがないよう配慮願います。
詳細は下記URLを参照して下さい。

同時に、金融円滑化法の終了後も金融機関から任意報告を求め、2019年3月期で休止した「貸付条件の変更実施状況の報告」(リスケ報告)を復活させることとしています。金融庁はリスケの申込や実行、謝絶件数を金融機関に報告させ、取りまとめ結果を公表し、各金融機関の取り組み状況を確認していきます。これは金融機関にとってリスケへ取り組むインセンティブになります。

まとめ

過去の経験を反省し今回の中小企業支援に役立てるものとしなければなりません。
①企業が出来ること②金融機関が出来ること③コンサルタントが出来ること、それぞれあると思います。三位一体となってアクションを起こしていきたいと思います。

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