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【対談#1】高校×チャレンジフィールド北海道 「次世代のチャレンジを支えるものとは?」

「将来世代のために、希望あふれる地域社会を共につくりたい」
「人と組織と地域が『自分ごと』として関わり、共に成長したい」

チャレンジフィールド北海道では、この2つをめざす姿としています。
そのために、大人である私たちができることとはどんなことでしょうか?

記念すべき第1回のnote対談相手である旭川工業高校の岩岡勝人先生は、教師としての枠に収まらず、NPO法人の理事長として子どものいじめ問題に立ち向かい、また体の中から子どもの健康と成長を支える食の普及も推進しています。
岩岡先生が日々向き合っている高校生は、未来そのもの。そんな彼ら・彼女らが、この先の見通せない時代においてチャレンジを続け、しなやかに生き抜くためには何が必要なのか?大人たちはどう支えていくのか?チャレンジフィールド北海道の山田総括と縦横に語り合っていただきました。

―――――日本は物質的に豊かになり、あえてチャレンジをしなくてもそれなりに生きられる社会を手に入れたようにも感じます。そんな社会において「チャレンジ」とはどういうものでしょうか?

山田総括(以下山田):それなりに生きられるというのは良い社会ということですよね。ではチャレンジの必要がないかというと、そもそもチャレンジは我々の生きがいに直結するものです。北海道でも道外でも課題ばかりが声高に語られますが、課題の裏返しはチャンスです。チャンスが沢山あるということです。これまでの使命感に燃えたチャレンジだけでなく、自分を試したり自分の可能性を広げようとするチャレンジにも積極的に飛び込んだらどうでしょう。

岩岡先生(以下岩岡):確かに。失敗を許さない、減点方式の風土はチャレンジをしないことに拍車をかけていると思います。失敗しても良いんだという雰囲気がないと、そもそもチャレンジできないですね。

山田:私自身はよくもまあここまで、というくらい失敗しているんですが、振り返ってみても最低限のセーフティネットがあったからチャレンジできたんだと感じています。例えば企業の場合ですが、多くの大企業は閉塞感にさいなまれています。これを打破するために、副業や兼業がシンプルで効果的な一つのチャンスになると期待しています。本業で生計をたて、副業・兼業で別のやりたいことにチャレンジをしてみるといった選択肢が、制度を含めて早く整うと良いと思います。

岩岡:「自信の無さ」がチャレンジを阻む本当の理由ではないかと、高校生を見ていて思うことがあります。

山田:自信の無さは、成熟社会ゆえのことかもしれませんね。僕はケニアに何度か出かけたことがあるんですが、ケニアでは部族間闘争などで大人が早く死んでしまうので、20代くらいの若者が社会を支えているんですね。そういった彼ら若者には有能感・有用感が漂っており堂々としています。北海道でも、若者の小さなチャレンジを周りが支援をして小さな自信を積み重ねることで、大きな自信につながると良いと思います。

岩岡:若者だけでなく、大人もそうかもしれません。やらされ感が出るとダメですね。でも生徒が目を輝かせる姿は教員にとっての一番の喜びでもありますから、普段自分たちが教えられないようなことを地域やチャレンジフィールド北海道に関わる沢山の方に協力してもらえるとうれしいですね。例えば企業の研究者に生徒が進路相談できたりとか。

――――課題起点のチャレンジではなく、チャンスととらえること。そのためには安心して失敗できるセーフティネットがあること。そして小さな自信の積み重ねを支えられるようなことを、様々な人が垣根を越えて支援できるといいですね。

岩岡:ただ北海道はもともと開拓使が土地を切り開いてきた場所ですが、ゼロから何かをつくり出すというマインドが乏しいように感じることがあります。

山田:イノベーションは天才しか起こせないとなぜか思い込まされていますし、敷居を上げられちゃってますよね(笑)。丹保先生(北大元総長)のご著書に書かれていたことを自分なりに解釈すると、北海道では各自が2つ3つの専門性を持ってリアルな課題に取り組んで局面を変えてゆかないならないのだと思います。活用できる技術は世の中に沢山ありますし、また「文殊の知恵」のように仲間と力を合わせればとてつもない知恵と力と勇気が出ます。開拓使のマインドは持っているはずですので、みんなで盛り上げてゆきましょう。

――――岩岡先生が理事長を務められるNPO法人「学校の底力」と食の活動について教えてください。

岩岡:NPO法人「学校の底力」では、子どもたちがいじめやDV等によって自殺に追い込まれることのないよう、問題の認知・発見と解決支援を行っています。今年7期目を迎えました。もともとは、いじめを受けた生徒からのSOSを学校がすぐに察知できるように始めた校内ネットワークの仕組み「絆ネット」がきっかけとなっています。
食の活動は、また別のつながりから置戸町の伝説の給食調理員、佐々木十美さんをお呼びし講演をしてもらうなどしたところから広がりました。

――――いじめと食、一見関係が無いようですが?

岩岡:実は大いにあるんです。ある時自分のクラスの生徒のひとりが学校に来なくなってしまった。数日様子を見たのち保護者に事情を聴くと、小5の時からずっと下痢をしていると言うんです。それですぐに知り合いの栄養療法の専門家に診せ、栄養指導を受けて適切な食事を取るようになったところ、1週間くらいで効果が出て学校にも来られるようになった、ということがありました。
体が元気でないということは心にも元気が無く、その子自身に問題を跳ね返す力が無いということです。その子は放っておいたらいじめのターゲットになったかもしれない。

山田:それはすごいですね。腸と脳と精神がつながっているのは自然と納得しやすい仮説でもありますね。子どものアトピーやアレルギーも改善して欲しいです。

岩岡:だからこそ、旭川の学校給食をもっと良くしていきたいと考えています。食材にこだわり手間ひまをかけて作る置戸町の学校給食はミネラル類が豊富で、子どもに必要とされる推奨量を大きく上回るという結果が出ました。それが、子どもの学力向上や気持ちの安定にもつながるのです。

山田:学校給食に使われる食材が近所の農家が作った安心安全の農産物で、そこで子ども達と生産者との関わりがあれば地域内循環が生まれ、地域の産業を消費の面でもやりがいの面でも支えることができますね。

岩岡:佐々木十美さんは、「家でごはんを作って一緒に食べれば、たいていのことは大丈夫」と言います。人は食べたものでできています。心と体の基本のところをしっかりもつことは、チャレンジを重ねていくうえではとても重要なことだと考えています。

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高校生を含めた未来を担う若者が、可能性を信じてチャレンジをするために大人たちが何ができるのか。お二人の白熱した対話を聞いていると、“大人たちの肝の据わり方”が問われているのだと感じました。「失敗するかもしれない、任せて大丈夫か」という大人側の不安が、減点法の評価や過干渉につながるのかもしれません。そして、がんばりきれる力を蓄えるための食事を整えること。それを個人の問題とせずに社会全体でしくみをつくること。そうした土台をつくり支えていくことも、大人たちがやるべきことだと身が引き締まりました。

次回は、美瑛でがんばる期待のZ世代との対談を予定しています。お楽しみに!(和田)

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