見出し画像

教育探究科学群の教育(学問分野)

教育探究科学群で学ぶ学問領域

教育探究科学群は、教育学を主たる学問領域としていますが、教員養成課程を持っていないため教職教育学や教育実習といった教員免許の取得に関わる科目は持っていません。しかし、その代わりに、探究力を高めるための科目に加え、学問分野としては心理学と社会学の科目を充実させています。

教育探究科学群で学ぶ領域

教育については、すでに以前別のところで取り上げたので、今回は教育探究科学群の中で対象とする残りの2つの学問分野「心理学」と「社会学」のことを紹介します。

心理学の定義

いつも通りというわけではないですが、教育探究科学群の設置に関する学問的なことについては、なるべく日本学術会議の分野別参照基準を参考にしています。なお、太字は筆者によります。

心理学は、心とは何かを問い、心のはたらきを明らかにする学問領域である。そのために、人間が外界からの情報を取り入れ、理解し、最終的に適切な行動を取るにいたる 過程を現象的に、機能的に、また、それを支える脳の機能にまで遡って明らかにするこ とを目的とする。こうした意味で、心理学は、人文学的な「心とは何か」という疑問から出発し、心理学独自の方法論のみならず、他の自然科学諸領域、とりわけ、医学、生物学、脳科学で開発された様々な手法をも駆使して、実証的、検証可能な形で心の実態に迫る。また、人間の心のはたらき、行動は、多くの場合、他者との関係性によって規定され、様々な社会的・文化的な枠組みの中で機能するものであることから、心理学は 社会科学諸領域とも深い関係を持つ。また、心理学は、こうした基礎的な学問領域であると同時に、基本的な問いへの探求から生じてきた様々な知見を、教育、福祉、臨床、 産業、情報技術などの多様な場面へ適用することを目指す実践的な学問としての側面を持っている。

日本学術会議,2014,「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準ー心理学分野」,pp.1

この説明は中々難しい…ですが、ポイントとしては、心理学は人の心の働きと行動に関するもので、教育をはじめとする色々な場面での実践を目指す側面も持っているという部分だと思います。
ちなみに、英語の辞書の定義でも、心と行動の科学と説明されています。

Definition of psychology
1: the science of mind and behavior
2a: the mental or behavioral characteristics of an individual or group
b: the study of mind and behavior in relation to a particular field of knowledge or activity

https://www.merriam-webster.com/dictionary/psychology

社会学の定義

社会学の説明は、心理学よりも長く、そして複雑です…太字は先ほどと同様に筆者です。

社会学は、「社会についての学問」であり、「社会とは何か」という問いに答えるかたちで展開してきた。社会学は、経験科学であり実証的な学問である。複数の人々が行為し、生活を織りなすときに生じる現象や問題を、単に想像・思念するのではなく、経験的に調査して得られたデータに基づいて解明していく。社会学の研究対象は、自我とアイデンティティ、相互行為、家族と親密性、ジェンダーとセクシュアリティ、集団と組織、文化と表象、地域社会、階層・階級と不平等、世代・年齢層による差異、メディアとコミュニケーション、権力と公共性、社会運動、エスニシティ、国際社会・世界社会といった、ミクロからマクロなレベルにまで及ぶ。社会学はこうした多様な研究対象について、調査により収集した事実を根拠に、その要因や構造を経験的・実証的にあきらかにする学問である。
社会学は、他方で、理論的な学問である。そこでは社会と個人の関係に焦点をあてながら、社会的行為、社会関係、社会集団や組織、社会構造や制度、社会変動などの鍵概念を用いて、社会現象を普遍的・一般的に説明しようとする。実証的にとらえた事実をもとに、ある社会現象を生み出す関係性や過程をとらえる理論枠組みもしくはモデルを構築することで、その現象への理解は格段に深まる。その際、これまで社会学者がいかなる理論枠組みやモデルを構築してきたかという研究史をふまえ、理論枠組みやモデルの前提となる社会観や人間観を理解することが必要である。また構築された理論枠組みやモデルは、社会現象を的確に説明しうるかどうかを検証することで修正され、より豊かなものになる。社会学は実証的研究と理論的研究を両輪とし、相互に検証し合うことで社会への認識を深めていく。
このように社会学は社会的現実を記述・解明する分析的科学であるが、同時に社会的現実を評価し、それに働きかけようとする規範的科学でもある。つまり社会学は、ある社会現象が私たちにとって望ましいかどうかを判断し、望ましくないと判断した場合には、それを改善・改良あるいは変革する方法を構想する実践的・政策的な学問である。いいかえれば、社会学は社会現象のなかに問題を発見し、その問題の解決策を提示する。たとえば、家族におけるドメスティック・バイオレンス、過疎化の進行する限界集落、犯罪・非行などのテーマについての研究は、その社会現象の正確な記述と理解にとどまるのではなく、それをふまえてこれらの問題を解決する処方箋や制度設計にまで到達しなければならない。
社会学が研究の対象とする社会は絶えず変化している。社会学は社会の変化に応じて、調査方法、理論枠組み、政策的な評価基準などを柔軟に組み替えなければならない。社会学は、ただ社会を認識するだけでなく、社会に働きかけ、社会から働きかけられながら、社会学という学問自体が社会の中に存在し、社会の一構成要素である、という自覚にもとづいて、社会との関係のなかで自らを更新する自己反省的な学問である。

日本学術会議,2014,「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準ー社会学分野」,pp.3

雑に要約すると、社会学は、複数の人々(集団)を対象に、多様なテーマを扱い、調査等を用いて実証的に研究を行えるようにするための学問といったところでしょうか…
心理学と同様に英語で見るとこんな感じ。

Definition of sociology
1: the science of society, social institutions, and social relationships
specifically : the systematic study of the development, structure, interaction, and collective behavior of organized groups of human beings

2: the scientific analysis of a social institution as a functioning whole and as it relates to the rest of society

https://www.merriam-webster.com/dictionary/sociology

「組織化された人間のグループの発達、構造、相互関係、集団行動の体系的な研究」となっています。

教育探究科学群は、教育と探究と科学的アプローチを以て、教育的なアクション(学校の先生ではなく)を通じたSocial Transformationに資することを目指しています。そのために、教育学を軸としつつ、個人としての人の心と行動を考えられるようになるための心理学と、集団としての相互関係や行動について考えられるようになるための社会学を学んでいきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?