教育学の新スタイルとは
新しい教育学
教育探究科学群は、コンセプトの中で「教育学の新スタイル」とか「新しい教育学」みたいな表現を用いています。新しさのポイントは、教育学を主たる学問領域としているにも関わらず、教職課程をそもそも持っていないことが挙げられます。似たような位置付けとして、教育学部で教員免許の取得を卒業要件としないゼロ免課程とか新課程と呼ばれるものもありますが、最近は縮小傾向にあるように見えます。
「教育学=教員養成」という考え方は、日本では一般的であり、受験生向けサイトでも学校の先生になりたいなら教育学部に行きましょうと書かれています。実際は教育学部に限らず、色々な学部で教員免許をとれますが、教育学は学校の先生になるためのものというのが普遍的な理解だと思います。実際に、これまでの教育探究科学群のオープンキャンパス等のイベントでも、「教員免許取れないんですか?」「教員免許が取れると思って来ました。」というご意見も結構頂いています(やはり免許取れるようにした方がいいんだろうか…とか悩んだこともありました。)
教育学の位置付け
教育探究科学群における教育学は、日本学術会議(2020)『大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 教育学分野』(以下、分野別参照基準)に多くを依拠しています。
これは、教育探究科学群の構想段階において、大学の学部名称やその内容が年々複雑化する現状に対し、「学位プログラム」としてちゃんと作りたいと考えたことによります。教育学の新スタイルや探究科学といった新しいことを試みる一方で、現行の設置認可の趣旨や分野別参照基準の意義をしっかり踏まえ、あるべき大学改革の在り方を自分達なりに模索したつもりです。そのため、特に教育学の理解においては分野別参照基準にとてもお世話になっており、例えば以下の定義もほとんどそのまま使っています。
教育探究科学群では、この中でも特に「教育は人間の生涯にわたって、また、学校、家庭、地域、職場などおよそ人間が生活するあらゆる場所で行われる。」という部分に焦点をあて、教育は学校だけで行われるものではなく、人の生活のあらゆるところでなされるものであると考えています。
また、分野別参照基準では、日本における学問としての教育学の役割は、教職課程(教員養成)に偏って特化していることへの危惧が呈されていたり( p.18)、イギリスにおける教育学の分野別参照基準においては、教育研究に関する教育課程と教員養成に関する教育課程が分かれていること(p.24)も指摘されています。
さらに、アメリカのカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(UCLA)の教育学部は、教育と社会変革に関する専攻(Education and Social Transformation Major)を設けており、ここでは教育学の知見を教育業務に携わる者だけでなく、すべての人々に必要なものであるとしています。
こうしたところから、教育探究科学群における教育学は、生きていく上で全ての人々に必要なものと捉えています。
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