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世紀末に訪れた『就職氷河期』~彼らは被害者なのか?

『就職氷河期』世代とは、生まれ年が1970~80年頃に当たる世代で、
ロスジェネ(ロストジェネレーション)とも呼ばれています。
元々はリクルート社の雑誌に登場した造語で、1994年の流行語大賞にも選ばれたことで、社会にも広く知られるようになりました。

この世代はバブル経済崩壊後の景気低迷の影響から、新卒でも就職が難しく、他の世代と比較すると、非正規雇用の割合が高く、生涯年収も低い傾向にあると言われています。

実は僕もこの世代に該当しますが、たまたま運よく様々な波に乗ることができ、就職難を回避することができました。
(いわゆる大学進学⇒就職、という一般的なものとは別のルートを進んだおかげです)

今回はこの、『就職氷河期』世代の悲劇と、彼らの現状について書いていきたいと思います。

◆『就職氷河期』はなぜ起きた?

まず就職氷河期が起きた一番の要因は、なんと言っても『バブル崩壊』です。

『バブル崩壊』により過剰投資した資金が不良債権化し、
その処理を国民が嫌がり先送りにした結果、
金融機関も業績が悪化し、その額なんと100兆円。
ついには銀行破綻まで起こしその救済に税金が60兆円投入してもなおどん底状態でした。

今回のコ〇ナ禍での世界的な損失が320兆円と言われてますから、
その1/3の損失を日本だけ、団塊とバブル世代でやらかしてしまったわけです。

◆バブル崩壊、でもリストラができなかった

しかし日本には解雇規制がある為、リストラが出来ず、企業には新規雇用できる余力がまったくない状況になり、
結果、有効求人倍率は0.5倍を切り、2人に1人は「どんなに努力しようが」仕事がない状態、
文部科学省『文部科学統計要覧・文部統計要覧』によると、この世代が就職活動をしていた1996~2006年には、
大学卒業者のうち、1万人以上が「一時的な仕事」、つまりパートやアルバイトに就くしかない状況でした。

このどん底状態を打開するために政府は、非正規雇用拡大などの規制緩和を行いました。
ところが、正規雇用の解雇規制については放置したままだったので、
非正規雇用だけが拡大したわけです。
その結果、現在の氷河期世代全体の非正規社員は約600万人に上ると言われて、特に40代においては3人に1人とまで言われています。

つまり、氷河期世代が置かれている今の状況は、必ずしも自己責任とは言えない事を、政府も国民も百も承知のはずですが、
なぜか、大不況の原因を作った団塊とバブルの世代が、氷河期世代の現状を自己責任と罵るおかしな構図ができて今日に至ります。
恐らくこれは、同じ境遇を肌で感じた人しか理解できない理不尽さです。

被害者と言うには大げさかもしれませんが、負うべき以上の責めを受けていることは事実です。

◆ネットで叩かれる、『就職氷河期』世代

特に昨今、ネット上などで氷河期世代が、
「社会のせいにして努力が足りない」
というような批判をされることが多くなったと聞きます。

個々の人についていえばその通りの部分もあるかもしれませんが、
世代で括って、すべて個人の努力の問題で片付けるのはかなり乱暴ではないでしょうか?
世代によって怠け者が多い少ないがあるというのは、確率論的にあり得ませんし、非科学的です。
『ゆとり世代』批判と同様に、個人で出会った数をサンプルにしても、全体を把握したことにはなりません。
また、マクロの経済問題までをミクロの個人の問題にすり替えるのは良くないと思います。

◆報われない努力

個人的な見解を言えば、氷河期世代が全体が努力していないとは思いません。
但し、同時期に時代が大きく変化した事で、その努力が結果的に報われなかった人が多い、ということだと思います。

今のように会社というものが信じられない時代が来るとはだれも思っていなかったですし、今のようにネットが発達していませんでした。
よって、どういう人材が希少で、どのように付加価値を付けるか、
といった事もわからないままだった人が多いんじゃないかなと思います。

当時、運よく正社員になれた人たちも、当時はパワハラ、セクハラ問題が表面化する前の時代でしたので、誰にも相談できないまま、さらに転職する度に良くない転職になり、お金も稼げなくなっていった、という話も聞きます。

◆企業の夢すら・・・

だったら起業したらよかったじゃないか、と言う人もいますが、
そもそもがどん底の不景気だったので、個人が事業を起こして成功するにもあまりに地盤がボロボロでした。

金融機関が瀕死の状態で、大企業ですら資金調達が容易にできない時代でしたし、今のようにクラウドファンディングのような仕組みもなく、個人での資金調達は難しかったでしょう。
当時、なんとか自己資金を貯めて事業を起こした人たちも、食えるようになったのはつい最近だと聞きます。

ただ、当時の日本は、まだ経済成長率2%の世界第二位の経済大国でした。
円高で輸入品が安くなり、高級時計がバンバン売れていました。
今や世界第二位の座を中国に奪われ、大部分が生涯未婚、生産世代が子育てや教育にカネを使わない、
さらにコロナ禍と円安が追い打ちをかけた現在と比べたら、マシと思われるかもしれません。

◆新型コ〇ナショックによる『ネオ就職氷河期』が到来すると思いきや・・・

ところが今月に入って、23卒の入社式のニュースが流れる中で、
「職場がホワイトすぎる」「仕事がゆるすぎる」という理由で退職する若手社員が増えている、という話をよく聞きます。

会社が長時間労働の是正やパワハラ対策を急ぐあまり、仕事の負荷が低下し成長の機会が減っていることも一因と言われ、
さらに、今後の日本経済の見通しが非常に厳しいという事もあって、
厳しい環境でスキルを磨き存在価値を高めて行かなければ将来は安泰ではない、苦労は買ってでもしなければならない、
ということに若者が気付き始めているのかもしれません。

その為、企業側が下の記事にあるような『配属確約』を取り付けたり、入社イベントを盛大に行い、
また優秀な人材を確保すべく、全国で賃上げの波が広がり、初任給の引き上げが増えています。

◆世代格差が軋轢を生む?

とはいえ、人手不足の時と、不況で人余りの時とで、学生や新入社員に対する企業の態度のあまりの違いに、節操のなさを感じるほどです。

大学生活の大半をコ〇ナ禍で過ごして来た不遇の世代という事で、それくらいの恩恵を受けても良いのかもしれませんが、
氷河期と言われた厳しい時代に就職活動を余儀なくされた世代と、このような待遇で入社してくる世代が、
意識を合わせて仕事を進めていくのは、結構大変かもしれません。

もちろん、新社会人の彼らは何も悪くありません。

◆救いの手は差し伸べられるのか

ちょうど会社のトップにいるバブル世代が、
これから新社会人になる若者を厚遇しているこの状況。
そして、バブル崩壊時に新規雇用を減らしてリストラを防ぎ、
退職金と年金をたっぷり貰えている団塊世代。

時代背景として仕方ないとはいえ、社会に切り捨てられた、
中間管理職の氷河期世代と、中間管理職にもなれていない非正規の氷河期世代は、いったいどのように感じているのでしょうか?

この温度差に、何かしらの支援の手は必要になると思います。

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