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富士山は一つの山ではない?均整のとれた美しい山体が生まれた5つの理由

古来より日本人にとって特別な存在である富士山、
その美しい佇まいから、芸術家たちにもインスピレーションを与えてきました。
海外の人々からも、富士山は日本の象徴として知られ、
2013年には、世界文化遺産にも登録されました。

ですが、なぜ富士山がこのように大きく美しい山になったのかは、あまり知られていません。
今日はそれについて、お伝えしようと思います。


①複数の火山の集合体である事

まず第1の理由は、
先小御岳、小御岳、古富士という3つの古い火山が今の富士山の下に隠れていることです。
実は富士山は1つの火山ではありません。
(厳密な意味での1つの火山の定義は定まっていないのですが、
1つの空間的なまとまりをもった火山体に対して、1つの火山としてある名称を与えるケースが多いようです。)

それに加えて、富士山の土台の標高が元々高かったことや、伊豆半島の衝突に関係した古い地層の隆起によって
比較的短い間に標高4000m近い火山に成長することができたのです。

②頻繁に発生する噴火

第2に、富士山が頻繁に噴火してきた事もその理由の1つです。

頻繁に噴火する活動的な火山の表面は、火口から流れ出す溶岩や土石によって、地表の凹凸を埋めて平坦な面をつくる為、滑らかになりやすいのです。
ところが久しく噴火しないと、噴出物はもろいので風雨によって削られ、谷が刻まれていきます。

また、実は富士山は過去何度も噴火や地震で大崩壊を起こし、その度に崩壊してきたのですが、
その後も噴火が何度も続いた事によって、徐々に美しい形が再生されてきたのです。


③複数のプレートの境界に位置している事

第3に、富士山の位置する場所です。
富士山は、まず伊豆半島が乗ったフィリピン海プレート、大陸側のユーラシアプレート、太平洋側の北米(オホーツク)プレートの、3つのプレートの境界の真上に位置しています。
そして、フィリピン海プレートは駿河トラフを境界としてユーラシアプレートの下に、相模トラフを境界として北米プレートの下に、北西と西方向にそれぞれ引き裂かれるように沈み込んでいます。
その為、地殻下部やマントルからその隙間を埋めるように、大量のマグマが供給されている可能性があるそうです。

元々富士山は山腹にも多くの火口を持つため、形が崩れる恐れもあったのですが、山頂火口から大量の溶岩を流したことにより、幸いにも山頂を頂点とした円錐形が保たれたのです。

また、マグマの粘り気が適度に小さくサラサラしていたために、溶岩流が遠くまで達して裾を引いたことも大きいです。


④火口の位置があまり変わっていない

第4に、山頂火口の位置が安定していたこと。
先ほど、富士山には複数の火口があると言いましたが、
山頂の火口は1万年以上前に今の場所に落ち着き、
以後ほとんど位置を変えていません。
宝永山の北東隣にあった古い山頂火口をもつ峰(古富士)は2900年前に崩れ、富士山は今の単一の峰に落ち着いたわけです。


⑤我々が生まれたタイミングが良かった

そして第5に、我々の文明が絶妙のタイミングで生まれ、発展した事。

先ほども申しあげた通りに、
富士山はこれまで噴火と崩壊を繰り返してきました。
今はちょうど噴火によって山体の修復作業が終わった時代を、
均整のとれた美しい山体を見る事ができる時代を、
私たちは生きているのです。


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