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読書感想37冊目:あやかし姫の良縁/宮野美嘉著(小学館文庫 キャラブン!)

注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。

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「私に触ると怪我するよ」

陰陽師家最高の姫の婿取りは前途多難で!?

帯より

 江戸時台が始まる前の京の都で、夜な夜な巫女姿で見回りをしている娘がひとり。
 夜というのは通常、若い娘が一人歩きするには向いてないどころか恐ろしいばかりだというのに、彼女は気にしない。それどころか現れた妖怪を素手ではっ倒す。
 そして、その力のおかげかあやかしたちに好かれまくるという。
 そんな彼女は、由緒ある陰陽師家に生まれた陰陽師。
 血をたどれば安倍家と加茂家につながる、幸徳井家の跡取り娘という立場の幸徳井桜子(こうとくい・さくらこ)ちゃん。とはいっても現在陰陽師は朝廷での権力はないに等しく貴族の一員といってもはしっこにしがみついているようないないような、しがない存在。
 だからこそ、お家のためにも頑張らねば!と張り切っているところ。
 しかしながら、生まれつきの剛力と神通力のおかげで(せいで?)、触れるものはすべて壊してしまう。それこそ人でも。
 そんなわけで、彼女の理想は『自分が本気だしても壊れないタイプ』となり、伴侶として探し求めていたりする。
 意地悪な師匠の指導のもと、今夜も試練をこなすのでした。
 そうしてある日の夜歩きから帰ると、当主でありたった一人の大切な身内(叔父はすでに出家済で母はすでに他界、父は不明なため)、祖父の友忠から「婿を見つけてきた」と突然告げられ会った相手はなんとも頼りなさそうな青年、柳生友景(やぎゅう・ともかげ)。
 けれど、祖父が言うには桜子ちゃんが触れても絶対に壊れない男だとのことで……
 理想の相手(!?)に出会えた桜子ちゃん、信じられないままに今度は謎の百鬼夜行と傷ついた妖怪に出会い、長年知らなかった父のことを知る機会にもつながりと、人生転がり始めまくっちゃいます。
 タイトルの『良縁』はあやかし姫であるところの桜子ちゃんにどんなことをもたらすのか。
 表紙の黒猫さんとの会話もほのぼのしく初々しくていい感じです(読めばわかる……はず?)

 と、ざっくりなあらすじですが、まぁ最初から桜子ちゃんの勢いというかキャラが濃ゆいので、まずその把握からですね。
 人類最強!みたいな様子でありながらとてもとても平和ボケな考え方に、作者さんの個性の光りっぷりをいつも通り感じられます。
 個人的にはなんとなく、ちょっぴり口調のずれも感じましたが対する登場人物によって変わると思えばそれは通常の生活でも一緒よね、と納得。
 途中の展開、おやまぁと思いつつもジェットコースターのように流れていくのでついていく間にそれも当然の流れなのよね、そんで二人はそうなのね、と桜子ちゃんの戸惑いと共に受け入れてしまっている不思議。
 いやまぁ、ほんとに桜子ちゃんはまわりに愛されて大事にされてきたのだろうなという印象です。ずれまくってますが。
 本編においては桜子ちゃんの理想の相手のこと、桜子ちゃんの秘密、桜子ちゃんの父親の話が大きなかたまりごとのお話になっています。
 友景くんとの絆の深まり方が独特だなぁと思いながら、やっぱり頭がおかしいキャラ(誉めてます。全力で誉めてます)のお話は天下一品、というべき宮野先生。
 友景くんも独特なので、彼の考え方もしっかりついていく必要があります。
 立場の違い、時台の流れ、その中でトンデモな力を持ちながら普通に生きている、生きようとしている違和感が絶妙に調和していて気づいたら読み終わっていました。
 謎があるのだけど、どちらかというとそれぞれの紹介、のような?お見合いの様子を見せられているような?そんな感覚です。
 友景くんは割りとおかしいよ、と記したところですが、彼なりにいろんな葛藤を乗り越えてのその落ちつきっぷりでもあるので、その味わいを噛み締めてもほしいところです。
 ほんとに飄々としすぎててそれぞれがそれぞれに強い弱いという相性が作れる感じで、みんな強いのにおもしろいな!とも思いました。
 平安時代のとんでもな姫と、とんでもな若者の、すっとんきょうな婚姻譚、よろしければ一緒に楽しんでみませんか?
 そんな一冊です。

公式紹介ページはこちら

 ここまでお読みいただきありがとうございました!


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