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花結文庫

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#ジャンププラス原作大賞

秋桜

 コスモスの香る季節。
 また、あの手紙がやってくる……

 それは、数年前から届くものだった。
 郵便受けに、一通の手紙。封筒の中には一枚のポストカード。様々な美しい景色の描かれた。中には必ずコスモスの花が写っている。
 そして、毎年のこと、コスモスの花が一輪添えられている。届くのはもちろん、コスモスの季節。
 今年もふと郵便受けをのぞくと一通の手紙が花と共に現れた。

「母さん~今年もまた来た

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金木犀

「むせ返るような、匂いが嫌い」

 その言葉に、何も返すことができなかった。
 祈りの言葉は今も届かず、空に彷徨っている。
 きっと。―――

 今年も秋は巡ってきて、金木犀の華はチラチラと舞う花びらよりも その薫りを誇るように強く振りまいている。
 いつのまにか人の背丈ほどの大きさになって、枝葉を広げたその木を見上げて、
「どうして、こんなに匂いが強いんだろう」
 文句のように言葉がこぼれ落ちた

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曼珠沙華

 真っ暗な、上も下もない世界。もちろん左右も、ない。
 感覚に頼ることもできない、ただ茫漠とした闇が広がっている。
 そんな中、『目を開いた』という感覚がしたのは奇跡に等しい。
 『自分』を認識することができたのも。
 そんな空間の中で。

「……は?」

 確かに喉を震わせたはずの言葉だったが、響き渡り、耳に響き広がるはずの音は、なかった。おかしい。本来であれば、己が声くらい聞こえても良いものを

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