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花結文庫

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2023年5月の記事一覧

四大陸物語~西~

四大陸物語
『お茶会』

 うららかな気候の中。ガラガラと音をたてて馬車は走っていた。
 御者は危うげなく手綱を操り、馬を走らせる。
 有能な御者が操る馬車の中には、修道服を着た女が一人、物憂げな表情で窓の外を見つめていた。
 否、物憂げな表情は彼女のいつも通りの様子で、半分近く伏せられたまつげがその印象を強めている。
 窓の外を流れる風景に目をやるともなしに眺めながら、修道服を着た女は小さくため

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「当たり障りなく、それでも」

 彼は、人当たりが良くて人望があり、人の間に入っては仲を取り持つこともありながら、さりとて押し付けがましくなくただたたずんでいる。
 ものすごくできるひと、と評価されるほどではないけれど、なんとなく皆が良いイメージを持っていて話題にのぼる。
 彼は、私にとってある種憧れの人間だった。世の中をうまく渡っていけるひと。
 けれど、彼にとっては違ったらしい。
 終業後にたまたま会議室で片づけをしながら二

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旅立ちの前夜に

旅立ちの前夜に

 これは、ある女の手記。その一節。

 その日のために、特別な何かを探しておりました。
 遠くへと旅立つ可愛いあの子に、何かをしてあげたいと、何かせねばなるまいと探しておりました。
 何日も前から考えていたというのになにも思いつくことができず、いよいよその日は目の前に迫るものの、夜更けになっても思いつきません。
 あの子の旅立ちの餞となるような、ありきたりなものではない素晴らしいものをあげたいと思

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