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【散文】新しい(性)〜シロクマ文芸部〜

新しい性について、みんなが声を上げて久しいけれど、かつて私はそれを超えた先であれこれ考えてみる機会を与えられた。

もう時効だからいいだろう。実は、二つ上の先輩(もっと言えば彼女のスポンサーである叔父上)に気に入られ、未成年だったにも関わらずもてなされる側で、夜の蝶の飛び交う界隈に出入りしていた時期がある。朝が怖いわ、だってヒゲが生えてくるんですもの。そう言って笑う綺麗なお姉様に囲まれて過ごしていた私は、ある夜こう言われた。

いい、クララ、よく覚えておきなさい。
女なんて信用してはダメ。
あんたが似合わない服を着てたって、
あいつらは褒めるのよ。
ちっとも見てやしないから。
だから服を買うときは必ずあたしたちと行くこと。
あたしだったら絶対、
あんたがどんなに好きだと言っても
似合わないものは似合わないって言うから。
あんたには興味がなくても
似合うものは似合うって教えるから。

でも昼はきついわね、汚いおじさんだって嫌わないでよ。そう言ってさらに笑ったお姉様方と実際に出かけることはなかったけれど、その忠告はありがたく受け取っておいた。

大事なことを学んだと思う。女とか男とかそんな言葉に当てはまらない誰かとか、そう言う区分ではなくて、要は私にちゃんとものを言ってくれる人と友達になること。言いにくいことだって、嘘偽りなく教えてくれる人と。結果、友達が少なくなろうと構わない。何が自分にとって大切か、あの頃、うすーいアルコール(その世界においての基準で)を舐めながら、私は人生におけるとても有意義な講義を受けたのだと思っている。

世界は日々変化する。でも、手に入れた画期的な試みは時として諸刃の剣で、私たちは馴染むまでいくつもの傷を負う。馴染んだとしても、それがベストとは言い切れない。それでも変化は何かをもたらすわけで、虚しさを数えるより喜びを数えた方がきっといい。理想と希望だけでは成り立っていかない混沌の上に私たちは生きている。だからこそ理想と希望を掲げているのだと、そう思ってこの先も生きていきたい。

なあんて偉そうなことを書きつつ、華やかなネオンの下で、「なんならみんな『雌雄同体』だったらよかったのよ!」と明後日方向へのユートピア妄想を爆発させていたことはここだけのお話。




新しい年の1本目、思い出投入!
なんとも楽しく書けました!
小牧さん、今週もありがとうございます!

20字も考えてはいるんですが……
やっぱりなかなか難しいものですね。
1つくらいは作りたい……。

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