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「書く」だけじゃ、ぜんぜん足りない(特にAI時代は)

ディレクションをするなかで、こう思うことがあります。

その記事が「何のために」あるのか理解していないライターさんが多い

文章力とか正しい日本語とか「ますますます」にならないようにするとか、よく議論にあがりますよね。実際に大事だと思います。

けれど、私はそれ以上に「記事が何のために存在するのか」を考えたいし、ディレクターとしても考えてくださるライターさんが相手だと仕事がしやすいなと感じています。

たまに「上流工程の施策なんて関係ない、読みやすい記事を書けばそれでいい」という方もいらっしゃるのですが、失礼ながら本当にそれでいいのかな、と。

シンプルに

クライアントの意図を汲んで、
売上に貢献し、
楽にしてくれるライター

は、ありがたいし、可愛がられる気がします。
コミュニケーションコストをかけずに欲しい成果を出してくれるなんて、一度捕まえたら手放したくない存在です。そんな人気者は仕事を選べるので、報酬も高くなります。

さて、先日編集者のまむしさんから
誰も教えてくれない 編集力の鍛え方
をご恵贈頂きました。

まむしさんとは旧Twitterで知り合い、当時ライター歴2か月だった私にもフランクに接してくださったのですが、

実際はネットニュース記者を経たのちメガベンチャー企業(※本当にでかい)の編集責任者として複数の媒体を立ち上げ、さらに編集者としては珍しくMBA(経営学修士)を保有されているなど、実はすごい人だった(失礼)ことが後々判明します。

アドバイスや相談にも乗ってくださり案件でもご一緒し、もし「ライターとしての恩人は誰ですか」という質問があったら、真っ先にまむしさんが思い浮かぶほどです。

いつもはゆるいツイートしかしていないまむしさんですが

実際はwebマーケにも詳しければタイトルワーク月間1000本ノックとかやっているし、マクロも組めるし、施策を考えながら量も質もこなし、頭の回転もキーのタイピングも早く、ご一緒した勉強会で二度見したほどでした。

かといって圧があるかと言ったらそうではなく、ライターと原稿に対してリスペクトを持って接してくださいますし、ペーペーに対してもとにかく壁がない。管理職として1on1を実施したり、面接官もされたりして、人材育成の文脈でも活動されています。

この本は、まむしさんの知見を公開したライターマガジンのセミナー「企画編」「取材編」「執筆編」「編集編」「キャリア編」が元になっているのですが、まむしさんはセミナーの開催が決まる前からコツコツと資料を作られており、いつだか「当時のネットニュースは新興ゆえに知見がなくて奔走したから、自分なりのノウハウを資料にまとめてるんです。他社とも知見交換したいなあ。」と話されていた記憶があります。

くわしくはこちら


さてさて。

この本はタイトル的にも編集者向けの本に見えるのですが、私はこれ、ライターが読むべきだと思います。

理由は、前述した通り「何のために記事を存在させるのか」という施策レイヤーから「どう動き、どう策を打つべきか」という実行レイヤーまで書かれているからです。

「ただ書く」なんてAIでもできる

記事は何のためにあるのでしょうか。いろいろな答えがあると思いますが、私は第一に「企業の売上に繋げるため」という解答が思い浮かびます。

記事はなんらかの収益を産むストック型資産になります。記事を持つことにより将来の収益が見込めるからこそ、記事をライターに発注しているわけですね。

つまり、もし私が1万円の原稿代をいただいたとしたら、私の書いた記事は1万円以上の価値を産まなければならない。私の記事により企業のファンが増える、知名度が上がる、売上に繋がるなどです。

ただ、その効果は実際には測定できないかもしれない。でもせめて「私の記事で企業の売上に繋げるんだ」という、その気持ちだけは持っていたい所存です。

では「価値を産む記事」とはどのようなものでしょうか。これは媒体の性質や目的によるでしょうが、SEO記事を例にあげてみましょう。SEOでの「価値を産む要素」は以下のようなものが考えられます。

実際はもっとあるとは思いますが、見て分かるように「読者に満足感を与えることだけが仕事じゃない(大事だけど!!)」し、文章力に至っては枝葉じゃない!?という。

もちろん、文章がくしゃぐしゃだと読みづらく、離脱の原因になります。でも「~たり〜たり」言わなくてもコンテンツが面白いなら離脱されないし、Googleも「このコンテンツ、『たり』が1つしかないから最下位な!!!」なんて言わないはず。ぐーぐる、私、信じてるからね。

こう思うと、ライターに求められるスキルは多岐に渡ります。

  • 読まれないと意味がないので、ターゲットに求められている企画を作る

  • ターゲットを満足させる内容を取材で引き出す

  • 人の目に触れないと読まれないので、ターゲットが集まる場所に露出させる

  • 露出できても読まれないと意味がないので、タイトルで惹き付けクリックさせる

  • クリックしても読まれないと意味がないので、内容で惹きつける

  • 内容を読ませてもCVできなきゃ売上にならないので、CVに繋げる

このように並べてみると、ライターってものすごく高度な仕事なんじゃないか……と思います。正直、私も自信がない。

ただ綺麗な文章を書くだけなら、もう既にAIが充分に担ってくれています。

みなさん最近ChatGPT触りました???少し前まで不自然な文章を書く赤ちゃんだったのに、今本当にきれいな文章を書くんだよ。この間、読みづらい文章を推敲させたら私よりずっと読みやすいものを出してきて半泣きだったよ。

綺麗な文章を書くだけで満足するようなライターはもう、逃げ切れないと思います。

後発ライターの悩みは、文字通り「誰も教えてくれない」こと

以前「赤字は買う時代」と語っていたライターさんがいました。昔のライターさんは編集プロダクションや出版社、新聞社などに入って先輩たちに教わりながらスキルを身につけていましたが、後発ライターは未経験でフリーになる方も多く、教えてくれる先輩をなかなか見つけることができません。

だから、私たちのような後発ライターは企画〜取材〜執筆のフローを「見よう見まねでやっている」方も多く、自分のやり方が正しいのか間違っているのかも分からない。FBもなく、何となく自己流で取材や執筆を続けている……そんな状態かと思います。

誰も教えてくれないからこそ、情報を買うしかありません。
なので、文章術の本を読みました。
取材の本も読みました。
アイデアの出し方とか、マーケの本も。

だけど、いまいち知識を持て余しているのは、結局これらの知識は「企業目的から見たコンテンツの作り方」ではなかったからじゃないかと思います。
点では役に立つけれど、全体のバランスを考えたときに効果の薄いところに注力してしまい、効果に繋がる部分にリソースを割けていない。そんな状態になりがちです。

#まむし本 には企画の出し方や取材方法などが体系的に書かれていますが、
さらにニッチな

「断られにくい取材依頼書の出し方」とか
「評価が高くなる原稿の質と納品の速さのバランス」とか
「大衆に耳を傾けさせる訴えかけ方」とか、

本来であれば先輩の姿を見て学ぶようなことが網羅的に書かれています。本質的でありながら、実行レベルにも落としやすい。
もはや「家に置いておけるメンター」と言っても差し支えない。

世にあるライター向けの本は、後発ライターの成功ノウハウか、先発ライターの自叙伝がほとんど。
たとえ商材を売るような後発ライターでも先発ライターからは「スキルが低い」と言われがちで、既に一枚の壁があり、なんだか別世界の人間のようです。私自身、出版社や新聞社出身の方のスキルが羨ましいというか、引け目を感じることもあります。

まむしさんはネットニュースの記者だったこともあり「新聞社のノウハウを知りつつ」「Webの視点を持つ」という、先発ライターと後発ライターの橋渡し的な存在です。

両方のノウハウと課題点を知ったうえで書籍に落とし込んでおり、両者のいいとこどりをしているので、ずるい本だなあと思っているし、いざ企画、取材、文章、納品……となったときに、先輩に助けを乞う気持ちで本を開きたいです。

今回はPDF献本いただいたけれど、普通に2200円で購入しているし辞書代わりにしたいから早く紙で届いてくれ。

さいごに

最初に言った通り「その記事が何のためにあるのか」を理解していないライターさんはめちゃくちゃ多いので、何のために記事を書くのか、理解して動いてくれるライターさんってだけで、ものすごい差別化できるんですよね。

Webの発達により参入障壁が低くなったライター業界ですが、次はAIによって参入障壁があがるのではないか……と思っています。優秀な人にはまったく打撃はありませんが、ただ書くだけのライターには任せる意味もない。

適切な危機感を持ちながら「書く」以外のスキルをのばせるライターが、生き残るのではないかなと思います。

質問箱もやっています。

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