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やってほしくない緑とオレンジの使い方(カラーUDの話)

少数色覚者にとって黄緑とオレンジは見分けづらい組み合わせの一つです。この記事のタイトル画像とかなかなか最悪です

WEB、アプリや印刷物などのメディアではだいぶカラーユニバーサルデザインの考え方が浸透してきており、デザイナーも多様な色覚でも読み違えないように配慮してデザインすることが当たり前になってきていると思います。

Photoshopなどのグラフィックツールには簡単に少数色覚の見え方を確認できるプレビューモードがありますし、AdobeColorを使えば無料で少数色覚の人が混同しやすい色かどうかをすぐに確かめられます。https://color.adobe.com/ja/create/color-accessibility

少数色覚が見分けづらい色の組み合わせだと「-」が表示される

しかし、工業製品の世界では少数色覚にとって見分けづらい緑とオレンジの組み合わせのLEDインジケータ(表示)を採用されることがまだまだ多いです

なぜ工業製品で緑/オレンジLEDが使われるのか?

なぜグラフィックの分野ではカラーユニバーサルデザインが進んで、工業製品では進まないのでしょうか?

※以後「緑とオレンジ」という表現を用いますが、厳密に色を言葉で表現しようとすると長ったらしくなるため、
オレンジ:黄色〜オレンジ〜赤の間
緑:黄緑〜緑の間
として捉えてください。

この問題をメーカー側が認識していないかというと、そうではありません。なぜ緑とオレンジの組み合わせをなかなかやめられないのかというと、いくつかの原因があると思っています。

その中でも一番大きい原因はコストではないでしょうか。

製品に仕込むLEDの色はメーカーが自由に色が作れることはほぼ無く、特定の色に光る部品を外部から買ってくる必要があります。そのLEDの部品は緑、赤、オレンジの値段が最も安く、青、黄や白は高い、ということが多いのです。

これに対して、画面に表示するWEB、アプリや印刷物はどんな色を使おうが大抵コストは変わりません。どうせ同じコストなのであれば「できるだけ多くの人に伝わる表現にしておこう」となりやすいのではないでしょうか。

これが工業製品のLEDインジケータではカラーユニバーサルデザインへの配慮が進みづらい大きな要因だと思います。

上記の理由にプラスして、個人的な予想としては電気設計者には少数色覚の人が少ないのでは?と考えています。

実際に緑/オレンジのインジケータで困ること

私自身が2型色覚(緑が弱い)ですが、LEDの色で困ることは多いです。ただ、大抵は致命的な困りごとにはなりません。

「このモニタのLED、待機状態(緑)と使用中(オレンジ)が分かりづらいなぁ」と思うことはありますが、スイッチをON/OFFしてみればわかりますし、そこまで大きな問題ではありません。

そういう機器に出会ったときは、どうせ見ても分かりづらいので私はあんまりLEDの色情報に頼らなくなっていきます。Wi-Fiルーターとか何色に光っていても何色かはほぼ気にしていません。

ただ、めちゃくちゃ困ったこともあります。それは自動車のETCのインジケータです。

大抵のETCは、ETCカードを挿入するとLEDの色が変わります。丁寧なシステムだと「カードが挿入されました」と音声が流れることが多いですが、ブザーで「ピー」と鳴るだけの製品もあります。

私はカーシェアをよく使うのですが、取り付いているETCの機器は案外バラバラで、カード読み取りOKのLEDの光が緑のものと青のものがあったりします

下図は青(準備OK)と黄色(準備できていない)の組み合わせですが、これはとてもわかりやすいです。

左:待機状態 右:準備OK

困ったのは下図のような緑が準備OKで、黄色が準備NGのタイプです。赤緑系の少数色覚者にとっては、とっさには結構見分けづらいです。

左:待機中 右:準備OK
(※ただし上図のLEDは、写真の写り具合で現物よりも見分けやすいです)

ある日借りた自動車は、ETCが音声無しで、しかも緑とオレンジの組み合わせの製品でした。ETCカードを入れて発進し高速道路に乗ろうとしたのですが、「ピーーーー!」とブザーが鳴りゲートが開かなかったことがあり、あのときはかなりヒヤッとしました。

それからはもちろんETCカードの読み込み状態をかなり気にするようになり、クルマを借りるときに「あの車種は確かカード読み取りOKが青表示だったからあっちにしよう」と意識するようになりました。

どうすればわかりやすくなる?

製品の部材選定をされている方にお願いなのですが、事故に繋がりかねない商品の場合はコストをかけてでも少数色覚者が見分けやすいインジケータの組み合わせにしていただきたいです。男性の5〜10%の人にとっては商品選択の理由になりますので、安全に対する費用対効果としては十分だと思います

逆に商品を買う少数色覚のユーザーにお願いしたいのは、「青LEDで見分けやすかったから」というレビューを書くか、店員に伝えるなどしてフィードバックをしてもらえると「費用対効果がある」とメーカー側が判断しやすくなるのではないでしょうか。

一番期待したいのは、規格を定めているところ(ISO、JISもしくはULとか)でインジケータに使うLEDの色の基準を示してもらうことです。

緑/オレンジが全部駄目なわけではない

細かく書くと読みづらくなるので、「緑とオレンジが見分けづらい」という論調で書いてきましたが、実は見分けやすい緑/オレンジもあります。

わかりやすいところでは、信号機の青緑とオレンジを間違えることはありません。信号機の色は多くの人が見分けやすいように色相、明度、配置を良く調整されていると思います。

もう一つ取り上げたいのは、最近のPanasonicの電灯のスイッチに使われているLEDです。

昔の電灯のスイッチに使われていたインジケータに比べると、緑の色相が若干青寄りにズラされているのではないでしょうか?少なくとも私はこの緑であればオレンジ(赤)と見分けることができます。

現物は写真よりももう少し緑が青寄りです。

これは素晴らしいデザインだと思います。

少数色覚に配慮してただ見分けることだけに特化するのであれば、上記のETCのように青を使うのが最も手軽な解決方法です。しかし、少なくとも現在の感覚では、住宅の中で青い電灯が常に光っているのは違和感があります。

またそんなに大きな変更を加えると、既存のユーザーにとってはこれまでとの乖離が大きすぎて混乱するのではないでしょうか?

多数色覚者にとっては「緑が待機状態、オレンジが使用中」というのはすでに浸透している感覚だと思います。それに沿ってデザインするほうが自然です。
特にこういう汎用的な商品の場合ユーザーの9割は多数色覚の人ですから、少数色覚への配慮が商品の軸になってしまうのはアンバランスだと思います。

短絡的な解決策を選ばず、様々な人に考慮したこの電灯のスイッチは本当に良いユニバーサルデザインの例だな、と感動しました。競争力との兼ね合いですが、できればこの緑LEDの部品を広く世の中に浸透させていただきたいです。


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ほうじ | 少数色覚デザイナー

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