ねこののお昼
猫のごはんの話ではない。
わたしのお昼ごはんの話である。
わたしは家から昼食を持参している。
何故ならば、わたしの職場の周りには食事処が極端に少ないのだ。
なんならコンビニすらもちょっと距離があったりする。歩いて行けないわけでは全然無いのだが、徒歩で往復すると少なくとも10分掛かる。買い物で5分、戻ってからお弁当を温めるのに更に5分…と考えると、昼食にありつける頃には休憩時間の1/3が消化されてしまう。
以前はコンビニまで行ってお弁当を買ったりしていたが、やはり休憩時間はみっちり休みたい。出来るだけ昼休みは職場のデスクに引き篭ることにしている。
わたしが持参しているのは耐熱性のタッパーとオートミールとその他の食材である。
オートミールは楽だ。コスパも良い。味付けも自在だ。
朝は耐熱性のプラカップにオートミールを計り入れれば準備は終わり。
休憩時間になれば、そこに好みの調味料や具材と水を加えてレンジで2分ほどチンすれば良い。
温め時間も含め、わずか5分で完成である。
わたしはこの混ぜ込みオートミールを毎日お昼ごはんとして食べている。
「飽きないです?」
会社で鼻歌混じりに昼食を作っていると、部下や後輩によく聞かれる。
「飽きないよ?」
わたしはニコニコと答え、手に持った袋を振って見せる。袋はシャカシャカと音を立てた。
「最近ってバリエーションも豊富だし、便利なのよ。」
わたしの手には混ぜ込むタイプのワカメ。
かつてのCMで「ただ混ぜ込んでるだけなのに…」と白おにぎりのキャラクターが呟いていたあの商品である。
「おかかチーズ」「梅しそ」「若菜」「野沢菜」etc.
そのバリエーションの豊富さは凄い。
しかも店舗によって品揃えが違う。気に入ったフレーバーはどの店で買ったのか覚えておかないと、その後なかなか巡り会えない。
また、どのフレーバーも美味しい。「だってなんだかモテてるんだもん。」と色白おむすびさんが混ぜ込みおむすびさんに憧れたのも納得の味だ。お陰で毎日同じ味でも全く飽きない。
だいたい一袋を2週間くらいで消費するので、飽きる前に一袋を使い切り、別の味の袋を開封している。
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ある日わたしはスーパーである商品に出会った。
─鶏節、だと…?
鰹節ならぬ、鶏節。透明のパッケージの中には鰹節に似たものが入っている。パッケージ裏の説明によると味付きの鶏むね肉の加工品とのことだ。
ふむ、とわたしは考える。混ぜ込むワカメと組み合わせるのも良いし、場合によってはこれ単体をオートミールに混ぜても良いかも知れない。
─絶対美味しい。
試したくなってしまった。
わたしは鶏節を一袋籠に入れ、レジに向かった。
………
………………
職場の昼休み。
わたしは自分の昼食を作り始めた。
持ってきたタッパーを開け、中のオートミールにいりこ味噌の混ぜ込むワカメ (※珍しくいつもとは違うメーカーのワカメを使用している。白おにぎりのキャラクターのブランドを探しても無いので注意!) を投入し、シャカシャカと混ぜる。
更にその上に生姜のチューブを絞った。
ワカメも生姜も量は適当だ。足りなければ後でまた足せば良い。
そこに水を加え、生姜が溶けるまで混ぜる。
「何か作ってるー!」
そこに部下Cが通り掛かった。彼女は外勤が多い為、実はわたしが昼食を作る場面に出会すのは初めてだった。
「わたしいつもオートミールなのよー。」
「ええー! オートミールって美味しいんですか? わたし、まだ試したことなくて」
「意外といけるのよー。」
Cと会話しながら、わたしはオートミールの上に鶏節を掛ける。もう少しだけ水を足した後、レンジで加熱を始めた。
生姜と味噌と鶏。
もうこれだけで絶対美味しい。
期待が膨らみ、フンフンと鼻歌を歌い出す。わたしはワクワクとレンジが完成を告げるのを待った。
数分後。レンジが高らかにわたしを呼ぶ。
扉を開ければ生姜の香りが漂った。
鶏節が蒸気でフヨフヨと踊っている。
その様子に食欲がそそられる。
いそいそと自分のデスクに戻り、わたしは完成したオートミールを口に運んだ。
─最高か。
期待通りの味に満足する。鶏節はリピート確定だ。
わたしはたぶんニマニマしているし、側からは凄くご機嫌に見えるだろう。
「ねこのがまたひとりで笑って嬉しそうにしてる」とか言われるかも知れないが、そんなこと知った事ではない。
食事が美味しいのは幸せなことだ。
わたしは今日もオートミールの美味しい食べ方について考える。
最近めっきり寒くなってきたから、水分を増やしてスープ仕立てにするのも良いかも知れない。
他にも何か思い付いたら実行してみたいと思っている。
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