山田菊『八景』第四部「山々」
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日光わが恋は
知らぬ山路に
あらなくに
迷ふ心ぞ
わびしかりける
貫之
杉の長い闇、この植物の列は柱や桁まで続く、緑を脱がされ、枝葉を落とされ、金に飾られ、漆を塗られた、精気のない動かぬ植物だ。
美しき森の柱廊は、長く緩やかに、彫刻を施された山、日光へと至る。
震える柱、華厳の滝は、透明な二段目の高台、中禅寺とその湖を支えている。
流れる早瀬をさらに少しずつ遡ると、最後の高原、湯元に出る、そこから虹が伸び、卵の臭いのする温泉