アンリ・ミュルジェール『ボヘミアン生活の情景』第6章:ミュゼット嬢
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ミュゼット嬢は容姿に恵まれた20歳の娘で、パリに来て間もないうちから、すらっとしていて愛想よく多少の野心はあるが綴字のあやしい美人のたどる道をなぞっていた。しばらくはカルチェ・ラタンの夕食に華を添えてくれた、いつも実に瑞々しい声で、音程は正確でないが、たくさんの民謡を歌ってくれたから、韻律を磨き上げる職人藝を称えて、以来ミュゼット嬢と呼ばれるようになったのだ〔ミュゼットはバグパイプの一種で、フランスの田舎舞曲に使われる〕、ところが突