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【後編】「ドラゴンクエスト」の作曲家すぎやまこういちと同世代の日本の作曲家はこんな人!

「ドラゴンクエスト」の音楽を作曲した、すぎやまこういち。
惜しくも昨年(2021年)の9月に亡くなりました。
前回から、すぎやまこういちと同世代の日本の作曲家を取り上げておりますね。
前回は、すぎやまこういち・武満・林について扱いました。今回は、冨田・一柳・三善について扱います!



冨田 勲 (とみた いさお)

Wikipedia「冨田勲」

冨田勲は、1932年(昭和7年)に生まれ、2016年(平成28年)に亡くなりました(享年84)。

彼は日本で初めてシンセサイザーを個人輸入し、作曲に用いました。まさに、シンセサイザー音楽の第一人者です。
電子機器の音と古典的楽器の音を融合させた新しい音楽を模索しました。

彼のアルバム「月の光」はアメリカのRCAよりリリースされ、1974年にアメリカのビルボード・クラシカル・チャートで第1位となりました。

アルバム「月の光」について

これは、冨田のアルバムのうち、シンセサイザーを用いた初めてのアルバムです。アメリカ初版のタイトルは"Snowflakes Are Dancing"でした。
このCDがアメリカでリリースされたことは、"TOMITA"の名がアメリカから世界に拡がっていくきっかけとなりました。

さらに日本人として初めてグラミー賞4部門にノミネートされ、彼の名前は全世界的に知られていきました。


また、日本でも、テレビ番組や映画の音楽を数多く手掛けました。
例えば、手塚治虫原作のTVアニメ『ジャングル大帝』『リボンの騎士』などの音楽も冨田勲が作ったものです。


余談ですが、高校は慶應義塾高等学校に通っており、林光が隣のクラスにいたようですよ~!


代表作:
・アルバム「月の光」(1974年)

・アルバム「展覧会の絵」(1975年)

・アルバム「バッハ・ファンタジー」(1996年)


交響曲《イーハートーヴ交響曲》
(VOCALOIDの初音ミクをソリストとして起用し、宮沢賢治の文学作品を題材にした曲)



一柳 彗 (いちやなぎ とし)

Wikipedia「一柳彗」

一柳彗は、1933年(昭和8年)に生まれました。今もご存命で御年89歳です(2022年現在)。

音楽一家に生まれ、幼少期から音楽を学んでいました。
戦後の1952年・19歳の時にアメリカに渡りニューヨークのジュリアード音楽院に通い、卒業しました。

1959年・26歳の時には、アメリカでジョン・ケージの講座に参加して彼の思想と音楽に感銘を受け、前衛芸術を世に広めるための活動を行うようになります。
その後、アメリカの実験音楽にも影響され、《ピアノ・メディア》を作ったそうです。


1980年代から90年代には、国立劇場からの委嘱を受け、日本の伝統芸能(雅楽、伶楽、声明、舞など)のための大規模な作品を作曲しました。
例えば、《往還楽》、《雲の岸、風の根》、伶楽交響曲《闇を熔かして訪れる影》などだそうです。

残念ながら上記の楽曲はyoutubeにはなかったので、日本の伝統楽器を用いた楽曲というつながりで以下の楽曲を紹介します。

箏と室内オーケストラのための協奏曲《始原》


一柳はアメリカに留学していたころから多くの音楽賞を受賞しており、日本でも尾高賞を4度受賞しています。
その他にも、紫綬褒章(1999年)、サントリー音楽賞(2002年)、旭日小綬章(2005年)など、名高い章を数多く受賞しました。さらに、文化功労者に選出され(2008年)、文化勲章(2018年)も受章しております。


一柳のクラシックの形式の代表的作品としては以下が挙げられるかと思います。

《ピアノ協奏曲第1番「空間の記憶」》


《交響曲「ベルリン連詩」》


さらに、一柳はオペラも書いており、特徴的な作品として以下が挙げられます。
オペラ《モモ》(題材はミヒャエル・エンデ
・愛の白夜 (題材は杉原千畝

これらもyoutubeにはなかったので、オペラ《モモ》のモチーフを用いた楽曲である以下の楽曲を載せておきます。

《交響曲第5番「熟成する時間」―オペラ「モモ」の主題による―》



三善 晃 (みよし あきら)

パナムジカ出版HPより

三善晃は1933年(昭和8年)に生まれ、2013年(平成25年)に亡くなりました(享年80)。

幼少期から音楽を習い、東京大学に在学中にパリ国立音楽院に留学したそうです。
彼の作品は生前から評価されており、6度も尾高賞を受賞し、また第31回サントリー音楽賞も受賞しました。また、2001年には文化功労者にも選ばれました。
1974年~95年まで桐朋学園大学学長を勤め、1996年~2004年まで東京文化会館の館長を勤めました。

合唱曲を多く作曲しており、その日本語の美しさにほれぼれします。
(カワイ出版から多くの合唱曲の楽譜が出版されているようですねぇ…。)

例えば、以下の曲などがあります。

・《生きる》詞:谷川俊太郎


・混声合唱とピアノのための《動物詩集》


さらに、20を超える学校の校歌も作っております。
本当に美しいのだけど、小学校や中学校の校歌としては音楽的になかなかに難しい楽曲が多い。

でも、それが一部の生徒にとっては音楽の道につながるとのこと、素敵ですね。
(指揮者・山田和樹さんも母校の神奈川県立希望ケ丘高等学校の校歌が三善さんの曲で衝撃を受けたとインタヴューで述べておりますね。
興味のある方はこちらから)

三善が作った校歌は、例えば以下ですね。
youtubeにある一般向けの動画から取り上げました。

・千葉県立幕張西高等学校校歌 《透明に》

(この高校は別の2つの高校と統合されてしまい、今はもうないようです。
ついでに、wikipediaによると、歌手の石丸 幹二さんもここの出身だそうですね。三善パワーを受けたのかな?)


一方で、三善は政治的あるいは思想的な楽曲も作っております。
そのうちの有名なものは「反戦三部作」と呼ばれる3つの楽曲です。

一つ目が、混声合唱とオーケストラのための《レクイエム》で、1971年に作曲されました。


二つ目が、オーケストラと童声合唱のための《響紋》です。
1984年に作曲された、詩の作者が宗左近の楽曲です。


最後が、混声合唱とオーケストラのための《詩篇》です。
これは1979年(指揮者・山田和樹さんの生まれた年)に作曲されました。
こちらも詩の作者が宗左近さんです。

残念ながら、youtubeで見つからなかったので、興味がある方はその他の媒体で探してみてください!


最後に

前編に引き続き、すぎやまこういちさんと同世代の作曲家を紹介しました。

彼らの生涯や音楽を並べてみると、当時の空気感といいますか、戦中・戦後を生き抜いた彼らの音楽観・生きざまがほんのり伝わってくる気がします。
(それが読者のみなさまに伝わるなら何よりです。)


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